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特務魔術師をクビになったので故郷に帰ります~王都を守る伝説の血統の実力に気づいてももう遅い~  作者: 山吹弓美


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74.裏事情

「そりゃ、アシュディさんは王都守護魔術師団のトップですし、シノーペは期待の魔術師って呼ばれてましたけど」


 だけど、俺がその二人に並ぶレベルの魔術師だとは、どうしても思えなかった。そう言いたかったけれど、言葉にはできない。

 サファード様の表情が、真剣なものだったからかな。とても冗談を言うようなお顔ではない、と分かる程度には。


「ですから君は、比較対象を間違えているんですよ。最高レベルと自分を比較して劣るからだめだ、というのはおかしいでしょう?」


 でも次の瞬間、サファード様は表情を崩された。にっこり微笑んで、それから出立の準備のために立ち上がる。


「王都守護魔術師団。君も特務魔術師としてその一角にいたのですから分かると思うんですが、『神なる水』と王都を護るために国中から集められた魔術師の集団ですよね。当然、その能力は高いものでなくてはなりません」


「……はい」


「その中でも団長を務めるとなれば、魔術以外にも高い統率能力や本人の性格の良さも求められますよね。ランダート団長は宰相から白い目で見られている君に良くしてくれたようですし、団員たちからの信頼も高いのは見て分かっています」


 ああうん、アシュディさんたちは前にブラッド公爵領に来てくれたことがあったもんな。その時のことを思い出して、おっしゃってるんだろう。

 少なくとも、あの人たちやマイガスさん始め大多数の近衛騎士たちとは仲良くしてもらえたな。うん。


「シノーペ嬢も、能力の高さは度々見ています。……王都に取られる前に公爵家(こちら)で確保できなかったのが、ちょっと惜しいくらいですね」


「ははは……」


 あー、シノーペは同郷だもんなあ。才能を見極める前に王都に出ちゃったから悔しいな、ってことか。戻ってきてるからいいけど……あ、一応休職中なんだっけ。ファンランも。

 いや、本人たちが別……というか外で警護してくれててよかったよ。何か多分、話がややこしくなる気がするから。


「キャスバート君は神獣様に魔力をお渡しし、結界の維持をお手伝いするのが任務だったようですから、ほかの魔術師との交流は……まあ、休憩時間とかならともかく、訓練や実戦はさほどなかったのではありませんか?」


「そういえばそうだな」


 ここまでじっと黙っていた、というかのんびりしていたテムが不意に口を開いた。あー、俺だと主観的な意見になっちゃうしな。外から見ていたテムの証言を聞かせてもらったほうがいいのかな、ここは。


「マスターは、食事はサンドラ亭で皆と摂っていたようだが……訓練相手はアシュディやシノーペが主ではなかったか?」


「あ、うん。それは確かに」


 言われて気づいた。というか……あーうん、主というかさ。


『キャスくーん、気分転換に遊びましょー!』


『ランディスさん、ちょっと訓練に付き合っていただいていいですか?』


 ……こんな感じで、俺を引っ張り出すのが大概この二人だったというだけなんだけども。ちなみにアシュディさんの『遊び』って、王都の街に出て遊ぶのと訓練場で魔術の訓練するのとが半々くらいだったな。

 まあ、それはともかく。


「多分それは、君の技量に他の魔術師たちがついていけなかったからだと思いますよ? 少なくとも、以前ランダート団長に同行して来た魔術師たちはそう言ってましたし」


「そうなんですか?」


「まあ、我も人の魔術師の基本的な能力がどのくらいか、までは知らぬからな。魔術師団の長と代々の特務魔術師ならよく知っておるが、マスターの能力は問題なく彼らのレベルに達しておるぞ」


「え、マジか」


 公爵配偶者であるサファード様と、神獣であるテムがはっきりきっぱり言ってしまってるってことは事実、なんだろうか?

 いや全く実感ないんですけど! ああもう、せめてもっと魔術師団のみんなと一緒に訓練してたら自分のレベル分かったのかな!

 というか、やたら褒められてこっ恥ずかしいんですが!


「といいますか……神獣様の場合、特務魔術師については能力より、魔力の味と本人の性格のほうが重要ではありませんか?」


「無論だ。人の命としては、長い時間を付き合う相手なのだからな」


「ですよね。その点で、キャスバート君は合格なんですよね」


「そうでなくば、王都を放逐されたからと言うて追いかけて来ぬわ」


 いやお二方、話の方向性が微妙にずれてきてるから。それからサファード様、会話の最中も手が全く止まらないのがすごいと思います。もういつでも出立できるように準備終わってるし。


「全く宰相め、馬鹿王子め、どこまでだまくらかしたのであろうな」


「一部の大臣は巻き込んだと思いますが、おそらくお二人の罪を追求する中で彼らは寝返ったでしょうね。司法取引、という方法もありますし」


「ふむ。まあ、落とし所はその辺りか。隙を見て首をすげ替えるのかもしれぬな、あの人の王は」


「こちらからは、既に良い人材の推薦リストを提出しておりますよ。まあ、妻や僕自身は入れていませんが」


 ……何かものすごく話がずれてるー! 大臣の首の挿げ替えとか、もうちょっとこっそり話してくれよいや俺とかテムで結界張ってるけどさ!

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