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特務魔術師をクビになったので故郷に帰ります~王都を守る伝説の血統の実力に気づいてももう遅い~  作者: 山吹弓美


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73.王国トップスリー

 ブラッド公爵領を出て、二日。結構急いだので、もう途中の街の手前まで来ている。

 部隊全体に気配遮断魔術をかけておいたので、ベンドル軍に気取られる心配は低い、と思う。いや、完全に遮断すると『気配がなさすぎておかしい』と逆に怪しまれることがあるんで、薄めにかけたんだよね。

 で、街には入らずに、馬や歩兵たちのために近くの草原で休憩している。そこへ、先行で派遣していたという斥候の人がやってきた。ひとまず、壁代わりに馬車で周りを軽く囲んでいるサファード様の元に呼び込まれる。


「敵軍は、旧王都まであと半日ほどの距離で野営をしております。おそらく明朝には攻撃を開始するかと」


「夜襲の危険性は?」


「一部部隊を使ってであれば可能性は。ただ、ほとんどの部隊はしっかりとした野営の準備をしております」


「なるほど」


 サファード様と俺、獅子テムや猫エーク、それにサファード様の護衛の人たちの前で、斥候の人はそう報告してくれた。ここからだと、急げば半日弱で行ける距離かな。テムとエークならもっと早くつけるか……空も飛べるし。


「ありがとう……ああ、ちょっと待機していてください」


「はっ」


 そのまま返しても良かった斥候を、サファード様はこの場に留め置いた。多分、お返しに情報を持っていってもらうためだな。

 そういった考えを汲んだようで、テムが「よし。さすがにここは、我の出番であるな」と口を開いた。


「お力添えいただき、感謝いたします。神獣様」


「任せよ。我がマスターの友が多く残っておる地だ、守らねばな」


 獅子がのそりと起き上がるのは、さすがに慣れていないと怖いらしい。斥候が固まっている前でテムはうーんと伸びをして、それから背中の翼を震わせた。きらきらと光の粒が舞い、夕暮れ近い空に登っていく。向かう先は……うん、旧王都だね、あの方向は。


「各種攻撃に対する防御結界を、軽く展開しておいた。伝えるか」


「ええ、もちろん」


 テムの言葉に笑顔で頷いて、サファード様は斥候に視線を戻した。途端、一瞬だけど目が鋭く光るのは見逃さなかったぞ。


「君は今のことを、王都の……そうですね、近衛騎士団に伝えてください。急いで」


「は! では、失礼いたします!」


 すぐに頭を下げて、足早に去っていく斥候を見送って……今度は、エークに視線を移す。


「エーク。念のため、今の彼を尾行していただけますか。何かありましたら、臨機応変に対応を」


「にゃーん」


 はーいわかりましたー、とばかりに一声上げて、黒い猫がとっとこ歩いていく。……あれ、どう見ても魔獣が人を尾行しますよ、って感じには見えないよな。ま、いいんだけど。エークだし。

 にしても、エークの自己判断に全力で任せてるなあ、サファード様。テムの下僕みたいなものだから、いいのかな。


「何かあったら、とは途中であれを襲撃されるとか、そういうことか?」


「他には、彼自身がベンドルの間諜だった場合なども考えております」


「ないとは言えぬな。まあ、エークリールに任せおこう」


 というか、テム自身もエークのことをすっかり信用してるよな。俺もだけど……この前はシノーペの護衛に置いていったわけだし。もちろん、こちら側に来てからのエークの働きを見て信じてるわけだけどさ。


「では、こちらはもう少し近づいておきましょう。いつでも動いて、敵の背中をしばき倒せるようにしなくてはいけませんからね」


「どのくらい接近しますか?」


 サファード様の部下が、長の指示について詳細を尋ねる。

 ここから急いで、ベンドル軍の背中を殴れるまで半日弱。できればその半分くらいには縮めておきたい、というのがサファード様の思惑だろう。ただし、あまり近づきすぎたら相手がこちらに気づいて振り返る。

 でもまあ、多分大丈夫だと思うけれど。サファード様が俺に視線を向けているから、意見を言わせてもらおうか。


「気配を薄れさせる魔術は展開してますから、多少なら近づきすぎても大丈夫ですよ」


「さらっと言うんですねえ、キャスバート君は」


「いや、だってアシュディさんならこのくらいできますし」


「君の考える、基準が高いんですよ」


 あれ?

 何か今、俺の考え方がおかしいっぽいことを言われた気がする。いやだって、曲がりなりにももと特務魔術師なんだから、王都守護魔術師団団長のアシュディさんレベルの能力は期待されていてもおかしくない……と、当時は思ってたんだけどなあ。

 今でも、あのレベルにたどり着けないと俺はまだまだじゃないか、と考えてしまう。テムに見放されないためにも、バート村を護るためにも、頑張らなくっちゃって。


「アシュディ・ランダート殿やシノーペ・ティアレット、それに君。僕の個人的な考えですが、この三人はゴルドーリア王国に所属するの魔術師の上から三人だと思いますよ」


「はい?」


 なのに、サファード様はなんだかすごいことをおっしゃってきた。ああいや、アシュディさんとシノーペは分かるけどさ。

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