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特務魔術師をクビになったので故郷に帰ります~王都を守る伝説の血統の実力に気づいてももう遅い~  作者: 山吹弓美


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37.止めてしびれて降りかかる

 びたん、ばちん、がこん。


「ぎゃっ!」


「な、何だ!?」


「何だ、この結界は!」


 俺の展開した結界の壁にぶつかって、取り巻き部隊が倒れたり転んだり混乱したりしている。王太子殿下は……馬に乗りっぱなしだったんだけど、馬が偉いらしくひっくり返らずにはすんだようだ。……セオドラ様、ちって舌打ち、聞こえましたよ。

 ま、それはともかく。

 俺はテムのように結界を長時間展開することはできないけれど、短時間……まあ三十分程度であれば、このくらい強力なやつは構築できる。一応魔術師だし、できることはやらなくちゃと思って修行はしてたんだけど……意外と効果あったな。


「我がマスター・キャスバートの能力を知らぬとはな。『ランディスブランド』の魔術師としての力を甘く見すぎている、と言わせてもらおう」


 テムがしっぽをゆらゆら揺らしながら、何故かドヤ顔でそんなことを高らかにのたまう。いや、テムの神獣としての能力は高いんだからいいけれど俺だよ?


「いや、俺大したことないし。アシュディさんやシノーペに、ちょっと使い方見てもらったくらいだよ」


「キャスくんに大したことないなんて言われちゃあ、この世界に大したことある魔術師はほとんどいないことになるわよお? だいたい、アタシの弟子はすごいやつばかりなんだから!」


「そうです! 普段はあんまり魔術使ってなかったから、ランディスさんの力を知らない人が多いだけですよ!」


 思わず否定したら、アシュディさんとシノーペに思い切り首を振られた。横に。いや、それほどでもないはず、なんだけどなあ。

 アシュディさんは王都守護魔術師団の団長に取り立てられるくらい強力な魔術師で、シノーペは宰相閣下とかに睨まれてなければ今頃副団長になっていてもおかしくない。

 それに比べれば、俺は『ランディスブランド』であることから特務魔術師に取り立てられただけで……ああでも、アシュディさんの弟子と言えば弟子か。修行見てもらってたもんな。


「そ、そんなことはないぞ! 宰相の甥なら、ヨーシャなら!」


 あ、王太子殿下が立ち直った。こちらに向けて叫んでくるのは……確か、俺の後任として宰相閣下が特務魔術師に押し込んだ人だっけ。テムが嫌がって逃げてきた後、話は聞いている。

 それと。


「あれよりは、シノーペのほうが強い」


「わ、本当ですかテムさん?」


「我の見立てだ。不満か?」


「いいえまったく!」


 当のテムがきっぱり宣告した上に、シノーペと楽しそうに会話している。あのなー、俺ごときの結界じゃ、二百人を三十分抑えられるのは結構ギリギリだぞ。今張ったところだから、余裕はあるけれど。


「誰か! 結界の解除を!」


「無理です! それこそ、せめてヨーシャ様クラスでないと!」


 王太子殿下は結界の解除を指示してるけれど……近衛騎士や今見える正規軍の中に、そのレベルの魔術師いなくないか?

 そう言えば当のヨーシャ様とやらもいないみたいだし……ああ、もしかして王都の守りに忙しいのかな。だったら、いいんだけど。


「義兄上、キャスバート、あれうるさいんですが」


「そうですね。少し黙ってもらいましょうか、物理的に」


 なんて考えているうちに、セオドラ様とサファード様が物騒なことを言い出してきた。

 いや、ここでうっかり物理的に黙ってもらったら特に宰相閣下辺り、本気で正規軍全動員してきかねないぞ。あの人たち、ベンドルのこととかちゃんと考えてるかどうかわからないし。

 というか、サファード様ならお一人でできそうな気がするので怖いです。だから止めよう、うん。


「お二人のお手を汚すまでもありません。発雷、タイプ広域麻痺」


『ぐぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ!』


 要はあちらを無効化できればいいので、力の弱い雷魔術を広範囲に叩き込んだ。

 見た目は電光がバチバチ言って派手な魔術なんだけど、効果としては命中した相手をしばらく麻痺させるだけのもの。馬や使役獣にも当たるんだけど、どういう理屈かそれぞれに適した力で当たるらしい。ま、上に乗ってる人は落ちてもしらんけど。


「ぎゃっふ!」


「で、殿下あ!」


 あ、落ちた。……太めの正規兵さんの上に落ちたから、まあ何とかなるかな。

 それにしても、防いだはいいけれどこの人たち、どうしよう……とか考えている間に、サファード様がつかつかと王太子殿下の方に進んでいった。結界があるから、お互い殴れないけれど大丈夫かな?


「王太子殿下におかれましては、国王陛下の親書を偽書と断じる程度の眼力しかお持ちでないようですね」


「き、きしゃま……」


「はい、ではもう一度ご覧くださいませ。封筒と、蝋印と、このサインを。何でしたら、そちらにおられる魔術師の方に真贋確認の魔術をかけていただいても結構ですよ?」


 真贋確認の魔術。あれ、偽造の書類にかけたら燃えるんだよね。

 だから、国同士で親書のやり取りとかする時は確認がてらかけるのが恒例になっている。軍相手の命令書に使うこともあるので、軍部隊には大体一人はそう言った魔術が使える魔術師が同行してるものだ。


「ば、かな……」


「王太子殿下。俺とアシュディは、国王陛下の勅命でこちらに伺っております。特使の印を頂いておりますが、これにもかけていただいて構いませんよ?」


 にやにや笑いながらマイガスさんが見せてきた、特使の印。国王陛下の命令で来たので、当然印も国王陛下のもので。


「……な、な」


 顔を歪めていた王太子陛下の表情が……あれ、何か笑った。

 あ、やばいと思った一瞬。


「マスター!」


「ランディス殿!」


 上から降ってきた剣をテムの極小結界が弾き、その持ち主をファンランが素早く抜いた剣で受け止めた。

 うわ、別働隊かこの野郎。

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