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特務魔術師をクビになったので故郷に帰ります~王都を守る伝説の血統の実力に気づいてももう遅い~  作者: 山吹弓美


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171/175

171.意見を聞いてみた

 サファード様から資料を本隊に持っていくように言われた俺は、ちょうどいいのでアシュディさんに顔を見せることにした。一緒にマイガスさんもいたので……ええいままよ、とばかりにファンランが言っていたことを相談してみた。そしたら。


「あらヤダ、今更ガチでそんなこと言ってるのお? キャスくんたら」


「はい?」


 アシュディさんに、思いっきり呆れられたっぽい。マイガスさんなんて、なんか遠い目してるし。


「あのねえ。特務魔術師クビになっちゃったキャスくんに、なんでファンランちゃんとシノーペちゃんが率先してついて行ったと思うのよ」


「え、あれ?」


 あれってそもそも、俺に同情してくれたからじゃないのか? というか、何だかんだでうちの村に派遣ってことになってめちゃくちゃ助かってるけどさ。

 思わず首をひねりまくっていたら、マイガスさんが自分の額を手で抑えた。


「……あー。本気で気づいてなかったか、こいつは」


「みたいねえ。一緒にお仕事するようになって、ちょっとは進展したかしらって思ってたんだけど」


 アシュディさんと二人、顔を見合わせてため息をつくのは……あーうん俺のせいですねごめんなさい。

 いや、それにしても俺っすか。ファンランは近衛騎士、シノーペは王都守護魔術師なんだから同僚にいい相手いただろうに。……あー、ファンランについてはその、趣味がうん。


「まあ、ファンランはああいう性格だしな。どうせ好意を持ってるとか何とか、微塵も口にしなかったんだろ」


 ただ、マイガスさんが指摘したのは俺が考えるところとは違うところだろう。地味にあいつ、人様への好意とか何とかって口にしたのを聞いた記憶ほとんどないもんな。そういうやつじゃない、と俺が思い込んでいたのかも知れないが。


「シノーペちゃんもそっか。ま、それ以前にキャスくん、王都ではひたすらお仕事頑張ってたものねえ。それどころじゃなかったんじゃない?」


「そうかもしれません……」


 そして、アシュディさんのご指摘にはさっくり刺さるところもあったのでちらっと頷いてみる。

 旧王都では基本、テムとのんびり話ししてるのが楽しかったし、それ以外の時間はアシュディさんやマイガスさんたちと修行したり食事したりで、色恋沙汰の方にまで意識を振り向けることはなかった。

 というか、今はそれなりに忙しいんですが。これでも村長だぞ、俺は……ああ、バート村うまくやってくれてるかなあ。


「まあ、まだ村長さんになってそんなに間がないでしょ? しばらくはそっちのお仕事頑張る、でもいいんじゃないかしら」


「それならそう、とはっきり表明しておいたほうがいいぞ。ブラッド公爵ご夫妻にでも」


 俺の気持ちを汲んでくれたのか、アシュディさんがそう提案してくれた。マイガスさんも、そっちに話を持っていってくれる。

 ま、要は先送りってことなんだけどさ。だいたい俺、今さっきそういうことだと理解したばかりなんで。


「だが……ファンランとシノーペはともかく、セオドラ嬢とリコリス嬢が放っておくかな」


「セオドラ様ならブラッドご夫妻が抑えてくださると思うけど、リコリス嬢はねえ」


「いや、不安材料増やさないでくださいお願いします」


 一緒に来てないお二人の名前を出されても困る。セオドラ様はサファード様に頼んでみるとして、リコリス様は…………確か本隊の司令官がドヴェン家の令嬢の夫だったっけ。話させてもらえるかなーうーん。


「まあ、本気でサファード様あたりに談判したほうがいいわよ。多分、これじゃすまなくなるから」


「はいぃ!?」


 え、まだ増えるんですか面倒事。アシュディさん、どういうことなのか説明してくれよ頼むよ。


「首が飛んじゃった馬鹿王子はともかく、大概の貴族は『ランディスブランド』の価値を思い知ったでしょうね。ほら、神獣様がおおっぴらに出てきたわけだから、キャスくんのやってた特務魔術師のお仕事の成果ってのが周知されたわけじゃない?」


「国王陛下が、遷都の勅の中でキャスバートのこと言ってたぞ。後で確認してみろ」


「俺のこと、ですか?」


「元王太子と元宰相の馬鹿っぷりのせいで旧王都の守りがなくなった、てのは事実だからな。そこら辺の説明で」


 うわ、マジですか。……確かに事実だけど、事実を素直に書くのもどうかと思うんだ、国王陛下。

 まあ、それで一応俺の名誉回復、ということになったのか。俺と言うか『ランディスブランド』全体において。それなら良かった、と思うんだけど。


「だからね、キャスくん。早めに周囲を牽制しておかないと、今後あちこちから打診があるわよ多分」


「はい?」


「うちの婿に入ってくれとか、うちの娘をもらってくれとか。ブラッド公爵家に適齢期の方がセオドラ様しかいらっしゃらないんだから、親戚のキャスくんは狙い目だと思うのよねー」


 ……アシュディさんの指摘、さすがにそりゃないぜとは言えなかった。

 『ランディスブランド』について国王陛下がしっかり名誉回復してくれたのなら、要は魔術系のちゃんとした血筋だってことが周知されたわけだから。

 それで、俺が狙い目って……あーうん貴族ってそういうもんだよね、特に俺だとそこそこ離れてるけどブラッド公爵家の縁戚だしさ。


「お前も一応親戚だろ、アシュディ」


「そうだけど、『ランディスブランド』名乗れないレベルだし。そういうの除いても、アタシとくっつきたい奇特な方がいらっしゃるかしらねえ」


「口調はともかく、一緒にいて悪くない相手だとは思うぞ。俺の認識だから、女性から見てどうかはわからんが」


「あら。マイちゃんに悪くないって言ってもらえるとアタシ、嬉しいわねえ」


 ……なんか、マイガスさんとアシュディさんがいちゃついてるように見えるのは気のせいだな、うん。この二人、がっつり信頼しあった戦友みたいなところがあるし。

 でも、アシュディさんって本当に口調はともかく優しいし、強いし、伴侶としては申し分なくね?

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[気になる点] 主人公が鈍感な時点で読む価値無
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