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特務魔術師をクビになったので故郷に帰ります~王都を守る伝説の血統の実力に気づいてももう遅い~  作者: 山吹弓美


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129.警戒……警戒?

 ブラッド公爵軍の精鋭部隊を先頭に、俺たちはベンドルへの道を踏み出した。森が一部途切れ、道のようになって延々と続いている。

 まあ、完全に南との交流を絶っていたら生活はほとんどできない環境だから、こういう道はできていてもおかしくないからな。

 俺たちの馬車は、精鋭部隊のすぐ後ろについている。馬車の形状の関係で、多分サファード様の影武者的立場も兼ねてるだろう。攻撃がきたら返り討ちにする自信はまあ、あるけれど。


「うにゅ」


 森の道に入るくらいから、エークが上半身を持ち上げた。馬車の中からでも、気配感じることはできるだろうな。


「警戒頼むよ、エーク」


「にゃう」


 なのでお願いすると、大きく頷いてくれた。よし、晩ご飯に持ってきたサンドラ弁当の肉多めにしてやるからな。

 いや、うちの部隊の分詰め込んできたけどさ。一応、料理できるように肉とか野菜とかも収納魔術でしまってあるけど、弁当やら保存食のほうが多い。料理する余裕があるうちはいいけど、そのうちそんな時間なくなる気がするからな。

 他の部隊については、それぞれに所属している魔術師が収納してたり荷馬車で運んだりしてるそうだ。飯が食えなきゃ、戦えないからな。

 ……食事はともかくとして、目下の問題はとにかくがたごと揺れること、かな。公爵家が使ってる馬車でこれなのだから、荷馬車とか大丈夫なんだろうか?


「揺れますねー。私は平気ですけど、皆さん大丈夫ですか?」


 へらっと笑うシノーペの膝の上、エークがぼくもへいきですー、という顔で警戒を緩めていない。よしあとで撫でる。


「俺も平気。テムの背中に乗ったりして、すごい動きは慣れてるから」


「我は微妙であるなー」


 おや、テムが難しい顔をしている。しょうがない、膝の上に載せてやるよ。ほれごろごろごろ。


「うにゅー……うむ、苦しゅうない」


「うん。テムの出番が来ないといいな」


「そうだな。まあ、大宰相とやらは殴るつもりであるが」


「それは同感」


 猫テムが目を細めて、すっかり猫である。中身は神獣だけど……大きくなっても獅子だからなあ、猫系には変わりないか。

 それにしても、揺れるなあ。


「きちんと整備されていない道でござるからなあ。もっとも、その余裕もないのでござろうが」


「あんまり使ってないだろうしね。ドヴェン辺境伯領からだと、もうちょっと均された道があるんじゃないかな」


「そのかわり、あちらも思い切り狙ってくるでござるね」


「そうだね」


 ファンランの意見はもっともだ。

 俺たちはブラッド公爵領から出てきたから、この道はもとを正せばベンドルの人たちがブラッド公爵領へ向かうための道ってことになる。……あんまり、攻め込んできたことないからね、ベンドル。

 一方、正面からぶつかってたドヴェン辺境伯領とか、この前の旧王都侵攻のときに通ったはずのムッチェ伯爵領へ向かう道は多分しっかり整備されてると思う。かなりの数の部隊が入ってきてたからな、まあ見たことないから推定だけど。


「にゃっ」


 不意に、エークが鳴き声を上げた。それまでののんびりした感じとは打って変わって、ぴしりと鋭い一声だけ。


「見つけたか」


 同時にテムも、むくりと身体を起こす。ああまあ、ここで神獣に出てもらうのは駄目だろう。


「テムはまだ出番じゃないだろ」


「しかし、マスターに危害が加わるなら我は遠慮せんぞ?」


「その前に、自分が縛るでござるよ?」


 いやテムありがとう、と考える前にファンランが目をきらきらさせている。……いや、俺の収納魔術の一部に何か縄大量に詰め込んでおいたけどさ。どれだけ縛る気なんだろうな、彼女。

 ……大宰相シオンに踊らされているだけの兵士たちなら、助けられる方がいいに決まってるけど……助けられ方が問題な気がする。うん。


「右前方、魔獣の群れでござるね。使役者はおそらく、その奥でござる」


「うん。前の部隊に伝えて、出られるなら片付けて」


「了解でござる」


 何か、ファンランもサラッと気配感じていたようだけどさ……こういうところは彼女、ものすごく強いんだよな……趣味がおかしいけど。

 で、馬車を止めるかと思ったんだけど、何で扉開けてひょいと飛び出してちゃんと閉めていくかなファンラン? 実は身体能力、冗談じゃないレベル?


「者共ー右前方に魔獣の群れが潜んでいるでござるよー」


「本当ですか!」


「神獣殿の配下の魔獣が検知したでござる。数分で出てこられる距離故、遠距離戦の準備をするでござる」


「承知しました。魔術師、弓部隊、準備を!」


 いやすぐそこでさくさく話してるし……あ、馬車が止まった。ふと外を見ると、なるほど。道幅が少し広がっていて、こちらの部隊が展開しやすい場所だ。

 当然向こうからも狙いやすいだろうけれど、俺の防御魔術がちょっとは役に立っているんだろうか。……やっぱり薄いと思うんだけどなあ。

 防御魔術は、前にアシュディさんが見せてくれたことがあるけれど、大体俺の展開したやつよりも強かった。そりゃあ、対象の人数は違うけど……まあ、アシュディさんは王都守護魔術師団長だから、当然強いに決まってるし。


「ファンラン、防御の方大丈夫か?」


「ご心配めさるな。ランディス殿の防御魔術に、こちらの部隊の方が上乗せしてくれているでござる」


「ランディス殿、ご安心ください! そのお力は、帝都で存分に振るわれよ!」


 一応ファンランに尋ねてみたらすごく安心感のある答えが帰ってきた上に、部隊の司令官さんからもそんな言葉をもらえた。

 そうだな、帝都で大宰相シオンをぶん殴らないといけないもんな。

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