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114.報告

 ともかく。

 王帝陛下とメティーオから聞き出した話を、俺たちはメルランディア様とサファード様に直接報告した。

 セオドラ様、メティーオをもふるのはいつでもできると思うぞ。残念そうな顔をしない。


「つまり、ベンドルがこちらへの進出を狙っているのはそのシオンとやらの思惑、で間違いないと」


「そういうことのようですわ、姉上」


 で、とっとともふりに戻りたいのか何なのかはよくわからないけれど、内容報告についてはセオドラ様ががんがん進めておられる。いや、助かるけどね。


「王帝陛下は、シオン・タキードの言葉に従って軍の派遣を決定していたようです。そもそも、外部からの報告も基本的にはシオンから直接、もしくはその手の者から受けていたようですから」


 その報告内容に、サファード様が何というかすごい目になった。具体的には……あれだ、お前何してんだしばくぞこら、という感じ。ものすごく殺る気に満ちておられる。もうすぐお父さんなんだから、その前にカタ付けたいのかね。


「ゼロドラス殿下もそうですが、周囲の環境で人は如何様にも育つものですね」


「特にベンドルの王帝であれば、帝都の奥でそれこそ『大事に』育てられただろうからな」


 ふーむ、と夫妻揃って考え込む姿は、顎に手を当てるポーズとタイミングが一寸の狂いもなく同じ。さすがラブラブ夫妻。

 まあ、このお二人がラブラブなのは今更なので置いといて。王帝陛下も歪んでるっちゃ歪んでるけど、ゼロドラス殿下と一緒にしたら陛下がかわいそうだと思う。口には出さないけれど。

 と、メルランディア様が顎から手を放す。視線を向けた先は、俺の膝でのんびりしている猫テム。いやまあ、ソファを勧められて座った瞬間ここに乗りましたけどね、神獣様。


「神獣様。シオン・タキードが神魔獣を覚醒させたとして、ベンドル側にどのような利益があるかな」


「少なくとも、我に太刀打ちできる戦力が手に入るな」


 質問への答えは、正直に言えば俺たち全員の顔色を失わせるものである。いやだって、テムとガチで戦える相手が出てくるってことだよな。今まではテムの結界や魔術に助けられる場面が多かったから……あ、これって旧王都の守りと同じことか。

 神獣様に頼ってばかりじゃ駄目だってことか、ゴルドーリア王国。そりゃそうだよな、うん。


「とは言え、少なくとも守りに関しては問題はない。我がマスター・キャスバートの結界展開能力は、そなたらもよく知るところであろ?」


「え、俺?」


 こらテム、いきなり俺に話を振るんじゃない。まあ、結界展開はできるけれどテムみたいに詠唱なしじゃできないし、数もそう多くない……いや、神獣の能力と比較しちゃ駄目だけどさ。

 第一。


「俺だけじゃ、テムにはかなわないよ。シノーペやアシュディさんの協力も得ないと」


「アシュディ・ランダート団長を呼んだ時点で、ゴルドーリアにおける高位の魔術師の協力は確実に得られると考えて間違いないんですが」


 一応言ってみたところに、サファード様が恐ろしいことをおっしゃってきた。あーまー確かに、アシュディさんは王都守護魔術師団団長だから、ゴルドーリア王国内の魔術師の中でもトップレベルの能力持ちだけどね。


「キャスバートの名前を出したら、王都よりもここの守りのほうが固くなると思うのだけど?」


「近衛騎士団長がいそいそと子飼いの騎士たちを連れて援軍に来る、というのが目に見えるからなあ」


 セオドラ様とメルランディア様が、更に恐ろしいことをおっしゃる。近衛騎士団長ってマイガスさんじゃねえか、メルランディア様のお言葉通りの光景が目に見えるよ、いやほんと。

 というか……仲良くしてくれてありがたいんですけど、マジで王都の護りが薄くなりそうで怖いって。


「ですが、対ベンドル最前線はこことドヴェン辺境伯領ですからね。そのつもりで、王都に要請を出します」


 しかし、俺が何を言うよりも早くサファード様がきっぱり断言なさった。あーうん、言い出しちゃったら止められないわ、俺には。

 確かに、またベンドルとの戦が始まるとなるとここと、隣のドヴェン辺境伯領が主戦場になると思う。というか突破されたくない。

 ……テムの力を借りなくてもちゃんと守れるように、頑張ろうと思い直した。テムさえいれば安心なんて、本気でゼロドラス殿下や元宰相閣下と同じになってしまうもんな。

 あれ、そういえば。


「ドヴェン辺境伯といえば、リコリス様は?」


「あ。今、メティーオもふってます。監視兵もいますし、護衛のメイドも一緒ですから大丈夫かと」


 マジか、セオドラ様。もしかしてとっとと報告済ませたいの、リコリス様に先を越されたからか。


「……なんとなくですが、仲良くなりそうな気がしますわ。リコリス様と王帝陛下」


「そうか。環境を考えれば、同年代の友がいないのかもしれんな。王帝陛下にも、良い機会であろう」


 そのセオドラ様とメルランディア様の会話に、ああと気がつく。

 ベンドルの帝都で、もしかしたらほとんど一人ぼっちで、周りには大人ばっかりの環境で育てられた王帝陛下。

 小さくなったメティーオにかまったりしてるのって、親しい人がいなかったからなのかもしれない。


 ……そこにいそいそとメティーオもふらせて、と突っ込んでいくリコリス様すごいなあ。いやほんと、どうせならそのまま仲良くなっちまえ。そうしたら少しは、シオンの鼻を明かすことができるかもしれないからな。

 会ったことないけれど、こいつがシオン・タキードだって目の前に出されたら一発殴るつもりはある。一発だけだぞ、他にも殴りたい人はいるみたいだし。人だけじゃなく、神獣や魔獣も。


「………………一応、辺境伯領にも報告書出しておきますね」


 ははは、とサファード様がお顔を引きつらせた理由は、まあ色々あるんだろうなあ。

 王帝陛下とか神魔獣とか、大宰相シオンとか、魔獣モフってるリコリス様とか。

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