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幼なじみ

「はい。今日のクエスト報酬です!」


「ありがとうございます」


「またのご利用お待ちしてますね!」

  

 受付嬢の元気な声を聞いて、今日もクエストが終わった。

 使えないスキルばかりを持ってしまったジルだが、それを悲観して何もしないだけでは時間を無駄にするだけなので、レフィとの特訓を毎日欠かさず続けていた。

 そのお陰で体力も少しずつ上がってきていて、筋肉痛には悩まされているが、筋力も上がっていていた。

 あとは、スキルだけだ。

 肝心な武器はというと、ジルの場合はオーダーメイドになってしまうので時間がかかると言われ、次のクエストまでには間に合わなかった。

 せっかく発想を出来たとしても、ものを作ることが出来る為の技術はまた別物らしい。

 作成と言うスキルは、1度作ったものが作れるようになるだけで、今まで作ったことの無いものはどう足掻いても作れないらしい。


「結局、ジルは何の武器を作ろうとしたの?」

 

「俺が作ろうとしてるのはブーメランだ」


 武器としてだと狩りに使ったりすることが多いブーメランだが、この町では主に子供の遊びでよく使われている。

 それだけに、ジルも子供の頃に使っていたことがあった。

 そのお陰なのかは分からないが、ブーメランを武器で使えばいいのではないかという考えが浮かんだのだった。

 ただ、普通の木製のブーメランでは致命傷を与えるのはほとんど不可能だろう。

 なので、金属を主に使って作り軽量化。刃物のように鋭く、先を尖らせて作っている。

 次いでにブーメランを掴むための手袋も準備。本格的に武器として使う準備は十分出来ていた。


「これで、少しくらいマシになれば良いんだけどな……」


「ハッ。ブーメランとか笑わせるなよ。そんなおもちゃを作って魔物が倒せるわけないだろ」


「ボルドー……」


 やはりと言うべきか。ボルドーはジルに突っかかってきた。


「やっぱ馬鹿だよな。もっとまともな考え方出来ないのか? 武器ならその剣を使えばいいだろ? てか、剣も使えないんだったか。それなら、ブーメランを武器になんてもっと無理なんじゃねぇのか?」


「……やって見なきゃわからねぇだろ」


「はぁ? 分かってる。分かりきってるんだよ。ま、それでもそのおもちゃが使いたいってんなら使えばいい。それで無様に死んでこいよ。骨なら、もし拾ったら適当に川にでも捨てといてやる」


「こいつ……!」


 いちいちムカつく言葉を発してきたが、それに言い返すほどの力はジルにはなかった。

 これが自分なりに考えた結果生まれたもので、考え無しに作っただけではないだとか、今は心を入れ替えて努力を初めて剣術も上達しているだとか。

 しかし、そんなことを言ったところでその事実を認めてくれることは無いし、嘘つきだと蔑まれる。

 だから何も言えなかった。


「ねぇ、さっきから聞いてればその言い方はないんじゃないの? 同じ冒険者としておかしいでしょ」


 ボルドーの物言いに、レフィも違和感を覚えたのか反論をしてくれた。しかし、ボルドーがそれを聞き入れるはずはない。


「知らねー知らねー。てか、お前もおもちゃを良しとしてるならこいつと同類だよな。お前も残念だな。あと数日の命だ」


 わざとらしい泣き真似に、ますますイライラが募る。だが、言い返すのとは出来ない。


「さて、これくらいにするか。俺も暇じゃないんでな」


 ボルドーはパーティメンバーを引連れてギルドを後にした。


「むーっ! なんなのあいつ! 偉そうにペラペラと! ジルもそう思うよね」


「当たり前だろ」


 そもそもジルに言われているのだから、怒らないはずがない。

 初めて、ジルとレフィは結束力を高められた気がした。


 ――突然、ギルドの人達がザワザワと話し始めた。

 何事かと話に耳を傾けていると、どうやらギルドに有名人が入ってきたようだった。

 

「……シエラ?」


 ジルは、その人の姿に良く見覚えがあった。

 小さい頃に良く共に遊んでいた、幼なじみのシエラだった。

 最後に出会った時とは背丈も見た目も変わっているので、誰なのか判断するのに少し時間がかかったが、その姿を見間違えることは無かった。


「ジル?」


「え? え? 何この感の突然の再会」


 レフィは全くついていけてなかった。

 金色の髪を真っ直ぐに伸ばし、顔はギルドの誰よりも整っていて、凛々しくクールな姿は圧倒的な存在感だ。

 そして、何より目立つのが腰に下げている剣だ。鞘も柄も何もかも余さずクリスタルのような輝きを放っていて、今まで見たどんな剣よりも綺麗だった。

 

「シエラ。久しぶりに会ってみれば、見た目も雰囲気も大分変わったな」


 ジルは懐かしい気持ちに浸っていた。仲良く公園で遊んでいた思い出も、ご飯を食べた思い出も、全てが手に取るように思い出せた。

 しかし、シエラは表情を帰ることはなかった。もちろん、懐かしむなんてこともなかった。


「そういうあなたは、随分みすぼらしくなったわね」


「……そうだな」


 ジルはボルドーには言い返す気力があったものの、シエラにはあまり言い返す気にはなれなかった。


「まさか、冒険者をしているとは思わなかったわ。てっきり、真っ当に働いているのかと思っていれば、こんな薄汚い仕事に……。見損なったわ」


「でも、それはシエラもだろ」


「私は結果も出している。稼げてる。貢献をしてる。だから構わない。でも、あなたはどうなの? ここ数年冒険者としてあなたの名前は聞いたことがない。何年もやって名前すら出てこないなんて、それはもう向いてないとしか言いようがないわ。もう冒険者なんてやめた方がいいわよ」


 次々に出てくる言葉の数々は、ジルの心を抉った。楽しかった思い出も、何もかも幻想だったのではと思いそうになるほどだ。

 もう、昔とは何もかも違うのだ。

 あの時の何も考えず無邪気に遊んでいるだけの日々はとにかく楽しかった。シエラと一緒に遊んでいればもっと楽しかった。

 しかし、今ではそのシエラは変わってしまった。

 もう、友達とさえも思っていないのかもしれない。知り合いでもない可能性もある。考えたらキリがない。

 

「でも、これでやってくって決めてるんだよ。今は簡単には辞められない」


「命が惜しければ、すぐに辞めることをおすすめするわ。そんな覚悟を決めるだとかそういう問題じゃないもの。いくら努力しても報われないのは目に見えてる。ジルがやるはずのものはきっと別にあるはずよ」


「さあな。よく分かんねぇけど、そういうのを買って押し付けられるのは嫌いなんだよ」


「……そうだよ! それに、冒険者を汚い職業なんて酷いよ! 私たちがどれだけ憧れを持って、夢を持ってやってると思ってるの? それを簡単に踏みにじって、馬鹿にして、許されると思ってるの?」


 レフィも参戦してくれた。今まではあまり得意でなかった人だが、今日ばかりは頼りになった。


「……ふん」


 シエラは、追い込まれたのかジルから離れていった。そして、関係者口から何処か別の場所に移動して行った。


「シエラ……」


 ジルのそのつぶやきは、ぽつりとギルド内に響き渡り喧騒にかき消されていった。

見ていただきありがとうございます!



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