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俺の考えた魔法理論が異世界で使われていた件  作者: キューマン・エノビクト
第1章: 新しい生活、始まる
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97. 翻訳スキル

「…ってことが昨日あってさ」

「あー、そりゃ大変だよねぇ。なにせ世界自体違うんだもんね」


 プラシュテーク家による亜紀の引き取り、そして昨日の襲撃作戦の結果を聞くため、俺たち魔科研1年生組は今日も今日とて面談室にやってきていた。

 プラシュテーク家の面々や作戦結果を報告する人が来るのを待つ傍ら、俺と亜紀はのんびりと談笑していた。

 時代は違っても同じ日本人同士、通じるものがある。


「そういえば、引き取られるって話はもう伝わってるんだよな?」

「伝わってるよ。あのアリスちゃんって子の家でしょ?それがどうかしたの?」

「いや、ほら、最初会ったときめちゃくちゃ啖呵切ってたじゃん。貴族は敵だとかなんとか」

「そういえばそんなことも言ったねぇ」


 亜紀は他人事のように言って笑った。


「まあアレは洗脳のせいだし、それに自分が貴族になれるなら文句はない!って感じかな」

「おー、現金な考え。そういうの嫌いじゃない」

「実際、この世界で生きていくならそういう方向が一番ラクそうだしね。知識が公共財じゃない時代に知識持てるのはでっかいアドバンテージでしょ」

「言うてエルディラットにはデカい図書館あるし、割と知識が公共財になってるような感じするけどな」

「マジ?やった、異世界都市ガチャ大当たりだ!…ボスが僕をここで切り捨てたのは、ちょっとでも良心があったからなのかもね」

「さあな。考えるだけ無駄な気もするけど…しかし、ガチャか」


 俺は腕を組んで天井を見上げた。


「ん?どうしたの?」

「いや、ガチャって単語久しく聞いてなかったなと思って」

「そりゃ異世界にガチャは無いもんねぇ」

「いや、そうじゃなくて…考えてみたら、そういう略語とかってこっちでの会話に出てこないなって」

「…確かに」


 亜紀も腕を組んで視線を上げ、会話の記憶を洗い出さんとしている。

 傍から見れば、男女が腕を組んで天井を見つめている異様な光景だろう。


「言われてみれば、出てこないね。なんだろう、翻訳されるときの都合かな?」

「訳しにくい単語ってあるからな。日本語だと木漏れ日とか外国語にない単語って聞いたことがある」

「そうなると、僕たちが木漏れ日って言ったときは向こうにはどう伝わってるんだろうね」

「話の流れが変わらない程度に言い換えられたりするんじゃないかな」

「その話題で僕も一つ疑問を思いついたんだけどさ」


 亜紀は視線をこちらに戻した。


「日本語とこっちの言葉で同じことを言ったときに、どう考えても長さが違うことって当然あると思うんだけど。そういうときって、時間の差異をどうやって吸収してるのかな」

「さすがに間延びしたり早口になったりってことはないだろうから…なんかこう、うまいこと認識が誤魔化されてるんじゃないか?」

「仮にそうだとすると、ますますこの翻訳…スキル?は奇妙なものになるね」

「意図的すぎるもんな。そもそも翻訳スキルが自然発生するわけないし」


 考えれば考えるほど、翻訳スキルという存在に対して疑問が浮かぶ。

 例えば、翻訳スキルは何に対して備わっているのか。

 異世界から転生してきた俺たちになのか、それとも世界そのものの仕組みなのか。


「…はぁ〜、こういうのは考えるのは楽しいけど…考えても何にもならないね」

「本当だよな。たびたび俺がこの世界に来た理由とかこの世界の成り立ちとか考えるけど、毎回『わからないけどとりあえず頑張って生きていこう』みたいなところに収束するからな」

「でもまあ、収穫はあったよね。こうやって、地球…それも日本から転生してきた人が一人じゃなかったことがわかった。もしかしたら、探せば他にもいるかもしれない。…ヒロキ君は、探してみるつもりはあるかい?」

「いや、今のところは特にない。成り行きに任せるよ。そもそも他人にいきなりアプローチかけたら不審者だからな」

「あっはっは、違いない」


 会話がちょうど一段落した所でドアが開く音がしたので、俺たちは会話をやめてそちらへと目を向けた。

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