22. 証明
ギルド所有の訓練場はだいぶ広く、全部で12個ある。
基本的にはいつも予約が入っているようだが、そこの一つを俺のためにわざわざ空けてくれたということらしい。
いい方向に考えれば、ギルドも俺の能力に期待していると考えられなくもないが、それでも疑われている現状を考えるとあまり喜べなかった。
「ちゃっちゃと証明して、たんまり金もらって帰ろうぜ」
「そうだな」
カウンターに職員が現れ、俺を訓練場内に案内した。
訓練場はコロッセオを彷彿とさせる円形の場所で、観客席も設けられていた。
直径は20m程度だろうか。
職員が数人、観客席に座っているのが見えた。
「んじゃ、頑張ってな」
ガルゼが壁に寄りかかって観戦モードに移行した。
「ウサギを放出します」
職員が丸太を置いて、アルスレーウサギ2匹を放つ。
ウサギたちは丸太に齧りついた。ウサギがどこかに逃げないようにという考えのようだが、俺としてはちょうど先程の状況を再現した形になってくれたのでありがたかった。
「では、どうぞ」
俺は腕を前に出し、手のひらに脳内魔法陣展開の魔法陣を構成する。
手応えを感じたところで、人差し指を残して手を閉じた。
指先から赤い光の線が現れ、レーザービームのように一直線に進んでいき、ウサギたちを貫く。
次の瞬間、ウサギたちは倒れ伏した。
「鮮やか!お見事!」
ガルゼが大げさに俺を褒め称えた。
呆気にとられていた職員たちは、その声で目を覚ましたようだ。
数人しかいないが、ざわざわと声が広がる。
「んで、どうすんだ?疑いも晴れたし、無罪放免は当然として…報酬の上乗せ、期待してるぜ」
期待とは対極にあるドスを利かせた声でガルゼは言った。
「いやー、たかが5級にしちゃ結構稼いだな」
俺たちが集めたのはシェロイ30本にウサギ7匹で、金額にして2870ガット。
そこに犯罪疑惑をかけられたことに対する慰謝料として3130ガットを上乗せしてもらい、俺たちは合計6000ガットを手にしたのだった。二人で分けても3000ガット。個人的には登録料を全部取り返せたのが美味しかった。
「これがあれば俺たちはもうちょい食いつなげるな。思いがけず4級依頼をこなせたのがデカかった」
「ガルゼ、強そうに見えるけど3級や2級を受けないのか?」
「俺らはよそから来たからな。この街で身分証を作ってから1ヶ月は5級依頼しか受けれねえんだ。ぶっちゃけ俺らも1週間前に来たばっかでな、あと3週間くらいは5級でチマチマ稼ぐしかねえ。おまけに身元はハッキリしてて、逃げてきたところに財産も残しちまったから、生活保護も受けられねえ。5級だけ受けて飯もロクに食えねえってなってたところで、親のせいで貧乏になってたリーサと結託した、ってワケよ」
「そうか…俺も、しばらくは5級だけか」
「まぁ、ヒロキは生活保護も受けてるしなんとかなるだろ。学費も生活保護から出るらしいし、心配するこたぁねーよ。なんとかなる。俺らも3週間さえ越せればこっちのもんよ」
ハハハ、とガルゼは笑ってみせたが、彼らは来てから1週間で誘拐を企てるほど貧乏である。
あと3週間生きていることすら怪しいのでは、と俺は不安になった。