表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺の考えた魔法理論が異世界で使われていた件  作者: キューマン・エノビクト
プロローグ
17/140

17. 赤魔法開発 #4

「話を戻そうか。赤魔法を使うということは、魔子を直接放出するということ。それには、体内で水から魔子を引き剥がす必要がある。本来、これは人間なら誰でも…それこそ、喋ったり指を動かしたりするように普通にできることなんだけど、やり方を知らないと無理だから、そのやり方を教える。ただ、口では説明しづらいから、俺がリーサを通してやってみせる。それを真似してくれればいい」

「わかった」


 両手を通して、リーサの体内で、魔子と水分を分離させていく。そして、その魔子を手や足を通して体外に放出していく。

 リーサはじっくりと感覚に集中しているようだ。

 他人の体でやるのはなかなか難しかったが、なんとか一発で成功した。


「どうだ?できそうか?」

「…なんとなくわかったと、思う」

「じゃあ、やってみて」


 俺は魔子の放出を徐々に弱め、そっと手を離す。

 リーサはひとつ深呼吸をすると、部屋のロウソクを点火する魔法陣に手を置いた。

 息を吹きかけて、ロウソクを消す。部屋は暗闇に包まれた。


「いくよ」


 リーサはそう宣言した。

 次の瞬間、魔法陣の赤い光が暗闇に浮かび上がった。

 そして再び、ロウソクに火が灯る。


「…できた…」

「できてたな。おめでとう」

「…できた!!」


 リーサは振り向いた。…上半身裸で。


「ちょ、服…!」


 言う隙もなく、俺はリーサに抱きつかれ、押し倒された。


「できた…!!わたしにも、赤魔法が使えた!!」

「ちょ、リーサ、苦しいって…」


 そこまで言って、リーサの声に涙が混じっているのに気づいた。


「…おめでとう」


 そっと手を回して、頭を撫でた。

 しばらくの間抱きつかれるままにしていたあと、ふとリーサは顔を上げた。


「…お礼、しなくちゃ」

「え?」


 リーサが体を持ち上げる。


「その…約束通り、好きにしてくれていいから…」

「待て、俺には約束した覚えがないぞ」


 胸が視界に入る前に、俺は目を閉じてリーサを引き剥がした。


「そもそも、俺は体でのお礼など受け取る気はない!」

「で、でも、わたしお金とか持ってないし…」

「俺はそもそも、今日リーサに助けられなきゃ死んでたよ。だからこれで恩を返した。それでいいだろ」

「で、でも、赤魔法使いにしてくれるなんて、そんな、恩が大きすぎて、一生を奴隷に捧げても足りないのに…」

「大げさだって。でも…そうだな、じゃあ頼みがある」

「な、なんでもどうぞ!」


 リーサが身構える。


「俺に、この世界のことをいろいろと教えてほしい。まず、俺は文字が読めない…というか書かれている言語がわからないからそのへんを教えてほしいのと、あとは冒険者という職業が何をすればいいのか、って感じかな。あとは、俺が一ヶ月後に無事転入試験に合格できたら、学校でのいろいろな手助けも頼みたいかな」

「それだけでいいの…?」

「大事なことだよ。俺はこの世界で生きていくにはあまりにも知識がなさすぎる。常識も持ってないから、このままではいろいろとトラブルを起こしかねない。その点リーサにならこの件の見返りってことで頼みやすい。というか、リーサ以外の人とはロクに話をしてないからね。リーサしかいないんだ」

「…わかった。そういうことなら、なんでも教えてあげる」

「頑張って学習するよ」


 これで一件落着だ、と思ったその瞬間。


「さっきからお前らうるせえぞ!」


 突然、男が怒鳴り込んできた。俺はびっくりして思わず目を開けてしまった。

 そこにいたのは、昼間俺が倒した筋骨隆々な男だった。


「…あー、邪魔、したな?」

「へ?」


 俺が前を向くと、リーサは未だに胸をさらけ出したまま俺に覆いかぶさっている。


「うん、俺が悪い。これは俺が悪かった。うん、邪魔したな。よし、俺は行こう。兄ちゃん、頑張れよ」

「違うんだぁーッ!!!」


 そんな不幸で、異世界初日は幕を閉じた。

プロローグ章完結です。

続く第1章もお楽しみください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ