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俺の考えた魔法理論が異世界で使われていた件  作者: キューマン・エノビクト
プロローグ
16/140

16. 赤魔法開発 #3

「まず、赤魔法を使うには概念の理解が必要だから、説明していくよ」


 こくり、とリーサが頷いたのを見て、俺は説明を続けた。


「そもそも、青魔法と赤魔法は何が違うかというと、魔法陣に流れている魔素が違う」

「まそ?」

「そう。この世界では魔力なんて呼ばれているっぽいけど、正体は物質なんだ。そして、厳密に言えば違うけど、青魔法は水、赤魔法は空気がもとになっていると思っていい」


 正確には水分子と窒素だが、原子論が存在するかどうかは怪しかったので、できる範囲で正確にしつつも曖昧にしておくのがベストだろう。


「…知らなかった。というか、前文明ならともかく、今の時代でそれを知ってる人はいないと思う」

「まあ、俺の記憶の元は…ちょっと言えないところだからな」

「気になるけど、仕方ない」


 あまり「別世界から来た」なんてことは、人には言わないほうがいいだろう。

 何を引き起こすかわからない。


「説明を続けよう。水や空気を魔法たらしめているものは、俺が『魔子』と呼んでいるものだ」

「まし…?」

「信じられないかもしれないが、空気や水はさらに細かい単位に分解できる。これはあんまり魔法が関係ない科学の話になるが、その細かい単位の物質のことを『素粒子』という。魔子は素粒子の一種で、空気や水を構成する素粒子の一部を置き換えることができる。…理解してる?」

「なんとなく。わたし、一応これでも成績はいい方だから」

「それは助かる」


 リーサは日本だったらリケジョとかいって持て囃されるかもしれない。


「さて、本題に入ろう。青魔法は水と魔子が結びついたと言ったが、ではその水はどこから来ているかというと、人間の体だ。人間の3/5は水でできているだけど、それを使ってるんだ。だから使いすぎると喉が乾いたり、水が足りなくて倒れてしまう」

「じゃあ、あのときわたしが倒れたのって…」

「水分を使いすぎたせいだね。だから俺は水を飲ませたんだ」

「へぇー…」


 興味深そうにリーサは相槌を打った。


「青魔法は水と結びついた魔素を直接出してる。だから魔法を使える量が、体内の水分量に左右されてしまう。魔子は呼吸することで空気から取り入れられるんだけど、普通の人なら呼吸による魔子の供給が追いつかなくて脱水で済むけど、魔族だと魔子の供給が多いから、最悪体の水を使い果たして干からびる」

「じゃあ、わたしも一歩間違ってたら…」

「いや、あれくらいじゃ死なないから安心して。ただ限界までやろうと思えばやれてしまうのが恐ろしいところだね」


 心なしかリーサの心拍数が上がった気がする。

 少なくとも自分が死ぬまで魔法を使い続ける人なんて想像したくはないが、いないとは思う。


「で、赤魔法は魔子を直接出して、それを空気と結びつけてる。だから水を失って倒れることもない。魔族なら呼吸が続く限り無限に魔法を使える」

「だから重宝されるんだ」

「そういうこと。まあ、世界のすべての人が赤魔法を使えたとしても魔族はもともと少ないし希少価値はあると思うよ」

「そっか…」


 リーサの声には、感慨のようなものが籠もっていた。

 どんな想いを積み重ねてきたかは知らないけど、ぜひとも報われてもらいたい。できればもう二度と犯罪には手を出してほしくない。

 自分のこの行為が助けになればいいな、と思いつつ、俺は説明を続けた。

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