133. 交流戦 #2
「コホン…えーっと、それで!」
気まずさを振り払うために、一つ咳払いをした。
「その交流戦に俺が出るってことは、確定事項なんですか?」
「正確にはまだ内定していない。が、確定と言っても問題ないくらいには方針が固まっている」
「俺が一人で戦うこともですか?」
「…ほう、確かにその手があるか」
アルナシュ先生はどこか感心したように言った。
「さっき、シルヴィが優勝したのは個人戦だと言ったね。それとは別に、2対2のタッグマッチが存在するんだ。魔法戦闘協力部門だな」
「じゃあ、それなら…!」
「ああ、助っ人を呼べる。だが、一人でさえ強い赤魔法使いがペアを組むんだぞ?敵だって、一人のときより何倍も強くなる」
「それはこちらも同じでしょう?」
「まぁ、そうだな。個人戦より枠は狭いから、もしかしたら国内予選があるかもしれないが…一応、そういう話を通しておくよ。ペアの相手はリーサか?」
「はい」
俺は迷わず答えた。
「リーサとなら、いつも冒険者として活動する時に攻撃を分担しているノウハウが活かせるはずです」
「ということだそうだ、リーサ。やる気はあるか?」
「…ヒロキがそう言うなら、やってみます!」
「いい意気だ」
満足そうに、アルナシュ先生は頷いた。
「ありがとな、リーサ」
「ううん、わたしの方こそ」
リーサとお礼を交わす。
信頼できる相手がいて、良かったと思う。
「となると…シルヴィがエントリーするのは去年通り個人戦か。今年は誰かと組ませてタッグマッチに出す案もあったが」
「わたくしの考案した魔法唱板は、仲間と戦うより個人での方が使いやすいと思いますの。去年と同じで結構ですわ」
「…新入生対抗戦で見た唱板爆陣は、確かに仲間の視界を潰してしまうな。必ずしもあれを使うとも限らないが」
あのときの戦いを思い出す。
唱板爆陣は、火を起こす魔法陣と水を起こす魔法陣のカードを組み合わせ、爆発的な水蒸気で視界を奪う技だ。
敵を撹乱するにはいいが、味方がいれば味方も撹乱してしまう。
まさに諸刃の剣だ。
「いいだろう、それで話をつけよう」
先生は立ち上がって、部屋を出ていった。
「もし魔科研から3人も南北交流戦出場者が出たら、またオレらも注目されんのか?」
「まあ、避けられないだろうな」
イルク先輩は面倒くさそうな口調で言ったが、表情からはワクワクが伺える。
ただでさえ、一度発表会を潰された身だ。注目されれば自然にそういう機会も生まれるだろう。
「だが、僕もエルジュも赤魔法を使えるようになった以上、まともな戦力として動けるようにはなりたいね」
「えっ…赤魔法、使えるの…?」
マーリィ先輩が動揺した。
言われて、ようやく気づいた。
「…そういえば、まだ赤魔法が使えないのは、この中ではマーリィ先輩だけでしたね…」
「マーリィ先輩、赤魔法が使えるようになりたいですか?」
俺が問うと、マーリィ先輩はこくこくと勢いよく頷いた。
「…俺は、普通の人を赤魔法使いにできる力を持っています。今夜、やりましょう」
「本当に…?」
「ああ、僕やエルジュ、リーサはヒロキによって赤魔法使いになった。保証する」
「…わかった。信じる」
独特の緊張感が走る。
何をするか知っている俺たち5人に対して、マーリィ先輩は怪訝な顔をしていた。