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妖精伝奇  作者: 酒のつまみにあたりまえ
妖精はどこに
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1 妖精せざる過去

 ――それはいつかの時代、どこかの国。

 誰かが触れた妖精の物語……夢を忘れた大人たちのためのおとぎ話。

 彼方から彼方へ連綿と続く時の揺りかごの中でひとは絆を紡ぎ、妖精はひとに祝福する――

 神? 信じないですよ。は、悪魔? 冗談はやめてください。いまの世にはきっとどちらも必要ないものです。

 妖精? ならば知っています。貴方もでしょう? 知らないというのなら、単に気付いていないだけですよ。



 ですが記憶……それは確かでしょうか。かつてこの大地……広大な宇宙に浮かぶちっぽけな青い水晶球に、人間は全土合わせ百億名もいたといいます。

 あれ? こんな膨大な数、どうやって数えたのでしょう? 当時はできたのですね。

 

 想像を絶しますが、この時代の世界は光の文明を築いていた……失われた未知の技術を駆使しての。

 それは本来『計算機』だったとの逸話が神々の伝説で有力ですが、数字を計算する機械に何故そんな真似ができるかなんて意味不明ですね。



 万民が光によってつながった、離れていても一瞬に交流できる理想社会……どんな誤解も偏見も差別も……その他あらゆる負の要素が解消するはずでした。


 文明は頂点を極め、物心両面で豊かになり飢えと貧困と戦乱その他のほとんどの苦痛から万民が解放され、平和の内に個々のいのちを謳歌できるはずでした。



 なぜ文明は滅んだのか。なぜ人類は衰退したのか……人間が驕り高ぶったための罰とされますが。無辜の民、罪なき子供すらまとめて滅ぼされたとは苛烈に過ぎます。人だけでなく大いなる自然を不毛の荒野に変えすらして。



 だから神は信じられないのです。存在したとしても信仰しません。いえ、ですが神の尊厳を否定するつもりもないのです。

 神を信じないでも誠実に真摯に生きるひとたちの方が圧倒的多数です。そのすべての努力の悲喜劇を無価値にする虚像こそが、宗教に対する浅薄な盲信だと気付かないのでしょうか。


 軽々しく死後の世界や生まれ変わりを論じるなど、現世の生をないがしろにします。

 貴方はどうせ死んでも来世があるからと、戦争して殺し合って良いのですか? 戯れに犯罪をしてもかまわないとでも? そんなはずないことと思います。



 しかし大地は揺らぎ海はあふれ空は荒れた。かつての人間は神の領域を侵し、あろうことか生命の神秘をもてあそぶようになった……それゆえの罰なのです。

 これに甘んじるか抵抗するかはどちらが正しいか……この矛盾と欺瞞の二律背反の中で。貴方はなにを見つけるのか。なにを望むのか、なにを残すのか……



 人とはみんな、時と空間の檻に閉じ込められた鳥。いまは飛べませんが、籠の鍵さえ手に入れば、自由な大空へと飛び立てます。


 それらをわきまえたなら、貴方はこの秘宝の鍵を紐解いてください。この地のみんなが、未来へと進むために。




 ここは世界の東の最果て。光を求める魂が明日へと進む聖地……


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― 新着の感想 ―
『九九も忘れた理系中退野郎が叫ぶ!』を読んでいる途中でしたが、その中で触れていたこの作品が気になったため、そっちを一時中断して読みに来ました。  で、読んでみれば、なるほど確かに大人のおとぎ話と納得の…
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