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目で察せられない話(貴族のご落胤→←村の幼馴染)

両片想いの無自覚BL

 最初に目に入ったのは、指だったと思う。荒れたささくれ。ああ、コイツも人間だったんだ。そう、思った。小さな頃だ。籠を持ってお使い。労働の初歩。同じ位の年の子供同士で行って来いって放り出される。そういう時期。え、お前の所無いの? じゃあ、うちだけだったのかな。うちの村、子守出来る奴いなかったし。大人とみなされる奴は、全員何かしら働いてた。そうしないとギリギリだった。いいんじゃないか? うちが、そうだったでだけで。お前が気にする話でもない。

 なんの話だったか。

 そうそう、あいつを観察? いや、見ちゃうようになったきっかけ。

 指なんだよ。

 あいつが、なんらかの理由で、俺の村に住むようになったとき。まるで妖精とか幽霊とか。なんか、生きてる感じがなくて。土に汚れた俺たちとは、根本的に育ちが違うってのもあるだろうけど。真っ白い顔と、真っ白い服で、今日からよろしくって大人たちに言われても、同じ生き物の気がしなくて。俺も周りも遠巻きだった。けど、なんだっけ。一番偉いとこの人の屋敷の草むしり、手の空いてる奴全員駆り出されたことがあってさ。なんか、偉い人が来るからって。その時。たまたま、俺、あいつの隣でむしってて。


 同じようで違う。白い花みたいな指に、俺と同じようにささくれがあった。


「なんだ、コイツ人間だったんだって思ったね」


 聞いておきながら、なんだ、と落胆する自分に驚いた。サナシャは、自分で言うのもなんだがそこそこ整った容姿をしている。それは、貴族落胤の多少なりとも良い育ちをしていたという身なりの良さもある。一時期後継者争いのせいで、使用人の遠縁の村に預けられた時は、日焼けに手荒れと労働者階級のそれになったけれど、直系の出来た今の当主になってからは、そこそこ整った容姿と身なりに戻り、女関係で不自由したことはない。


 それで、目の前の、口が鳥の羽より軽やかになった酔っ払いの話に戻ろう。


 この男の……、エディーンの視線に気付いたのはそれこそ、あの村で過ごしてからだ。

 なんだかんだと腐れ縁で、実家(と言っていいかはわからないが)に戻るのと同じ時期に、都会へと就職した男は、目が合えば挨拶する位の関係でいながら、その目線は自分を追っている。もしかして、都会に就職したのも自分を追って来ていたのではないかと勘違いする位には、熱視線だった。気がする。錯覚かもしれない。なんせ、聞いたら、珍しい生き物観察のそれだった。


 騙された。

 なんとなく肩をおろして、その、藁色の旋毛をみた。エール5杯位でこれ。同僚の男から幼馴染と認識されている己に、たまたま酒屋の前を透った時に声を掛けられた時には、エディーンは、サナシャを認識出来ていなかった。


(てっきり)


 俺が好きだと思ったのになぁ。

 なんとなく、机に頭を押し付けて、テーブルにとうとう懐いて寝始めた、無骨な顔を眺めた。


 その後1時間後、全く起きなかったので、人を雇ってお持ち帰り(健全)してみたのだが。噂では何故か最速で、貴族ご落胤との関係の噂が広がったくせ、本人は全く気にする素振りはなく。


 ただただ視線が煩いそれに、サナシャが控え目にブチギレて婚約オア婚姻を迫るのは、目前だった。


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