おネエ(言語のみ)と私(男女友情)
片方言うものの、彼らなりの会話術。
おネエさんのモドは、とても女ったらし。そして、一途である。
彼女は、特に何かと何かを混ぜたハーフの女が大好物。
なので、私が一度、奈落まで落ちた時に、「モドが付き合ってくれたら」と縋ったら、美しい黒い弓型の眉を跳ね上げて。
「アンタ、タイプじゃないのよね」
と拒絶された。
酷い話。ただただ私は地元で根を張りすぎて100代位遡れる家系図をみても、異人名がない、100%N県民女子なだけであるのに。
「アンタは、血筋含めて完ぺき過ぎるからぜーったいイヤ」
厚めの唇は、拒絶以外を発しなかった。ひでえ。酷えよ、モド。君だって、N県で生まれ育ったじゃん! 途中で、アメリカのなんとか州に、親の都合で飛んでいってしまったけれど。
「まあ、アンタの何でも受け入れてくれるそのポテンシャルは、凄いと思うわよ」
肌のこと。一度も言って来ないの、アンタだけだもの。別に、気遣いじゃなくて本気で興味ない感じ。
そう言って。モドは私のストレートなのにハネまくる髪を一房指に絡めて流した。
そうやってベテランの技巧で、「付き合ってくれ」という懇願は流された。
・・・
「……ッマイガッ。アンタ、それファッション誌のモデルの帰り?」
雨のなか。黒いトレンチコートの下は全裸。
私が、彼のちょっと洒落た造りのレンガ調アパートを訪ねたら言われた台詞。その時、モドは、彼こそが映画から抜け出して来たような黒いシャツ白いパンツ、さりげないアクセサリー(全部高そう)。
洒落てんのは、お前だよモド。
「まさか、まさかの平成で追い剥がれた……」
「え? このコンクリートのまちで、山賊にでも遭ったの?」
「良いバイトあるよって言われて着いていったら、AV撮影。さ財布も何もかもを入れ忘れた鞄であったことが唯一の救いです」
「なるほど注文の多い料理店」
実写体験オメデトウ。
そっと背中を押して優しく部屋に案内してくれたので。
「何故、モドちゃんと私は付き合っていないんだ」
と投げたら、タオルを被してくれながら。
「タイプじゃないし、アンタ面倒だからお断り」
とお断りされた。酷い。
付き合って。いやよ。それで安心してる。どちらかにどちらかがときめいても墓まで付き合うことはない。