ロマンチックストーリー(ロボット(ガチ)×人間×ロボット)
「イヤマジ好きなんだよ結婚して」
と言われた。
誰に。
いや寧ろ、何にって聞いてよ。
…スターうぉーずに出てくるような円柱形ロボットに。そう言われたんだわ。
「…………俺、ロボットって範疇外なんだわ」
カラリと、ウォッカの中の氷を回して、濡れたグラスを掲げてみせる。いやあ、あの時は頭真っ白だったのよ。
だから、キッパリ断る所までいかなかった訳だ。
「ふ、じゃあ今からロボの魅力教えてやるよ」
人間ならば、ふっと笑って髪でも撫でつけたのかも知れない。あいにく、ロボット君は金属製であり、毛根は死滅する前に存在しない。磨き抜かれた白銀のフォルムが感動的だ。
「ロボットの魅力は十分分かるよ。俺も男だからね」
ああ懐かしき学生時代。
カスタマイズ、分解構築。
巨大ロボットは今でも男の子の尊敬を一身に集めていらっしゃる。
「…そりゃ聞き捨てならねぇ台詞だな」
どこが?
「妬けるね」
冷やした方が良いんじゃね?
アルコールでめでたくなった頭で、オーバーヒートの対策を考えた。
「…外に出ないかい?」
誘いに乗ったのは、腰半分も無い銀色の背丈が小学生を思い起こしたからだ。うん、きっと身長の大きさで年を考えちまうってーのあるよな。
ウィィイイインと、もう滅多に聞く事もなくなったローラーの音に驚く。なるほど、半世紀も前の型では‘誤作動’も起こる。
やがてたどり着いたのは、ロボット達の公共墓地だった。
「『心臓』の話を聞いた事有るか?ダーリン」
「お前米国産?まあ聞いた事はあるわな。アレだろ。半世紀前のロボットは良くメモリーがぶっ壊れてたから、全部飛ばないようにどこかに第二のメモリーを置く事にしたっつう」
「ロマンの無い説明だな。まあだいたい正解だ。大戦争時代は主にロボット達の第二メモリーの場所を突き止める事が戦局を左右したほどだ。それ故第二メモリーは予備という存在ながら我々の『心臓』と呼ばれた」
ほー。適当に相槌を打つ、俺の背は段々寒さにやられて猫背になっていく。
「さて、ダーリン」
お前に私の心臓をやろう。
(プロポーズだ)
公共墓地の一つのパネルに、U字型の指が複雑に振動した。
圧巻。
圧倒。
『総ての墓』から光を内側に反射させたメモリーが出てくる。これが総てメモリーだと!?
なんという容量!
ぽかんと口を半開きにした、俺が心動かしたのは言うまでもねえ。
「ケーイージくーん」
友人が彼を訪ねたのは、気まぐれだった。赴くまま気の向くままに世界中を飛び回り、生まれ育った街の雑多な空気を吸い込んだのは昨日のことだ。
薄いドアが上にスライド、玄関に入るやオレンジの香ばしい匂いが鼻をくすぐった。彼が料理など出来ないのは公然である。
「啓治!てめっ、彼女が出来たら俺に連絡しろってあれほど…」
リビングに足を踏み入れるや白銀が目に飛び込んできた。
タウンタイムズ紙を広げて寛ぐ、精悍な顔立ちの男はチラリとも顔を上げずに言った。
「紹介する俺の嫁」
「夫だ」
フレンチトーストを運んで来たロボットが訂正した。
090324
結構昔のですが、なんだかんだでいつも微妙な人気がある話