コミュニケーション能力(SF?家族?)
暴力表現有り
【1step】
殴る、殴る、蹴る。鳩尾にヒットした膝に、鍛えられた筋肉の硬い感触。
背後に、立つ人の気配に、うんざりしてため息ついた。
「濠矢、戻れ」
「いい加減にしろよ!こそこそと!おまえ何なんだよ」
振り向いた先に、小柄ですらりとした金髪の青年の姿がある。
透明度の高い青い瞳。
「戸鍋」
「名前の話じゃない!というかうそつけ!911区の人間じゃないだろうお前!」
「いいから、戻れ。お前を守りたいんだ」
「自分の身は自分で守る」
見せつけるように、ぴくりとも動かない転がる連中を蹴った。
「よせ」
「なんでだ、こいつら頭おかしい。俺を犯そうとした」
決して、細身でも小柄でもない自分をだ。瞬間、ガンガンガンと銃声音。血の臭いに固まって、無表情に銀のオートマティック銃を向ける男を見つめる。
「早く言え」
何こいつ。濠矢は、冷や汗掻いた。ぶっ飛んでる。いきなり、カレッジで勉強していた自分をさらい、監禁したのも酷いが、今のは相当だ。
「あんた本当になんなの」
「・・・・・・従兄」
どうやら、自分には非常にダークでらりってる親族がいるようである。
【2step】
豪矢は、自身を天涯孤独だと思っていたし実際親はいなかった。いや、最初はいたらしいが、ありきたりに飢えと抗争の中消えたのだろう。そんな場所だったグラシオンは。
だから、戸鍋という男が無表情に、自分の親族を名乗った時はどんな裏があるのかと警戒したのだ。だが、そういうのではなさそうだと確信し、変な意味での心配が出来たのは、彼があまりにも豪矢に過保護だったからだ。
古くから彼を知っているという彼の仕事仲間に率直に聞くと、苦笑いで刃物を研ぎながら答える。
「戸惑ってんのさ。アイツに血縁者(家族)なんてはじめて出来たから」
彼女は、そう言って研いだナイフを縛り上げた全裸の女に突き刺した。
【3step】
明るい場所に来ると、酷くその男は浮いていた。生白い肌と、薄闇の中にあって明かりに照らされると同化する髪色。
元々華人が寄り集まってベースとなっている闇色の髪の人々の中で彼は浮きまくっている。そうと知ってれば、と豪矢は後悔していた。911地区は、旧異物の中にある。巨大なドームが建物を覆い隠し日のない薄闇の中で人々は生活していた。豪矢は、戸鍋を薄闇の中でしかみたことがない。こんなに目立つのであれば、近所の寂れたショップで十分であった。
戸鍋は、明るい照明のある市民センター内で完全に浮いていた。
「おい」
「なんだ」
「お前本当に俺の従兄弟?」
ガラガラと買い出し品を満杯に積んだカートを引きながら、戸鍋は、無造作に突き刺してあった封筒をよこしてくる。
「何これ」
「俺の戸籍」
中を開き、目に飛び込んで来た書類は確かに母の姉の名がある。
「・・・いつの間に?」
「上が役所だしな。猜疑心すけすけの目でいつもみてやがるのがだるかった」
そう言えば、市民センターにはどんなものもあると誰かが言っていた覚えがある。そうか、戸籍も発行出来るのか。
「・・・なあ」
「なんだ」
「この封筒。いやに重いんだけど」
「・・・」
ずしりと。そう例えば、銃1つ分くらい。
「それつけとけ」
「・・・あれ?時計?」
「全地区即位システムだ」
GPSじゃねえか!
2013-10-11