(魔王×侵入者)
[爆笑]
う、は。笑いを胃から吐き出す。なんだコイツは。言いたげな冷徹な顔にさらにうははと笑い出す。
非常におかしい。だって、冷徹無慈悲悪魔と名高い王様が、年端もいかない‘少年’だったのだから。
「だっておかしい!俺たちゃ、こんなちっせえ人間を恐れて恐れて…はは!そうだよな、人を治めてんだから魔王な訳ないだろう!」
腹をよじってもう大爆笑。一応警戒していた王の親衛隊は、困惑気味だ。
ふう。溜め息。
「そこの気狂い、面倒だ。余の部屋に転がしておけ」
「は、しかし」
「牢に入れてこの調子であることないこと騒がれでもしたら面倒だろ」
・
[同情]
「で、其方は何しにきたのだ」
丁重に念入りに縄にくくられ、王の自室に転がされた賊は、ひくりと笑いすぎて痙攣を起こす唇を上げた。
「俺らが残酷な王がどのような面構えなのかと拝見しに来たのよ」
「ほう」
「ちっせえなあ?いくつ」
王のにいと笑う唇は死人のように真っ青。
「6つになったか?」
「…へえ」
「不満か」
不満だ。男は、王の治世が自分の生まれる前から有るのを知っている。
「なんで曖昧なんですか」
「なんでも余は魔王の生まれ変わりらしいぞ」
「なんで他人ごとなんですか」
「余は、魂の存在を信じておらん」
「へえ、ちなみにその魔王だと見破ったのは街の賢者ですか」
「いや?何故」
「その賢者曰わく、俺はあんたと覇権を争って惨殺された魔王の弟らしい」
「母上よ」
どこまでも、無機質で平坦な声音だった。
「余を魔王めがと叫びながら産まれた赤子を締め殺さんとした」
ひくりと、別の意味で唇をひきつらせた男は、ただひとこと。
「どんまい」
2012-12-16
2013-01-03