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声が聞きたい(BL /監禁)

 おれは、今監禁されている。相手は、同級生だ。綺麗に染まった茶色い髪の、少し言動がちゃらい普通の奴。箕田みだ。下は知らない。同じクラスになったことはないが、中学が一緒で高校も同じで顔見知りだった。生徒もそこまで多くない学校だっからだろう。

 友情はないが互いに見知った顔という認識くらいはあったと思われる。


(いきなりだもんなあ)


 昨日の放課後いきなり話しかけられた。同じクラスではないので、そこは下駄箱の前ではあったけれど。

「ねえ、夜仲よなか。家に来ない?」

 唐突。思わず、友人の顔を浮かべてしまった。どちらかといえば、真面目な外見の猫被りばかりで正直、箕田くんらグループに漂うある種の反抗的な雰囲気にあわない。友人の線は消えた。謎過ぎて、おれは逆に、え良いよよったるわという謎の応答を反射してしまっていた。謎には謎を。否定してくださるエスパーは、二次元からは出てこれない。おれは、その時に詰んだ。


 それで、あっという間に1ヶ月である。まさかだ。さらに言うとおれの親は、あまりにお高い所に居すぎて下にいる息子が見えないために基本、おれがどうなっても、もしかしたら死んでも気付かない類である。社会勉強に憧れんじゃなかったわー。頭を抱えた。

 だって、そうだろ。高校には親の息がかからない平和な所を選んだ訳で、逆に言えば親が納得するほどの犯罪率のなさ。つまりは、ど・い・な・かである。

 行方知れずのクラスメートに連絡したら家族旅行だったとか、割と報連相が欠陥だらけで終わっている高校でもある。ちなみにおれは、前に一回無連絡で3ヶ月休んだ。前科有りである。


 さらに、救いのあるようで無い話。おれは携帯を持っている。iPhone素敵。電波絶好調。充電器はサービスで付いていた。部屋に。普通に友達から宿題確認の電話がきた。

 つまりは、窓なし出口なし、不自由なしの快適な生活空間である。他人宅の一部警備を強制的にさせられている感覚。



「箕田くん」



 おれは、実は箕田くんが大好きである。カミングアウトするとおれは、正真正銘男で相手も男だ。ようは、監禁されている事実を誰にも言えないのはそれが原因だった。箕田くんはちゃらいがお喋りではない。そのこころは自分が監禁している相手に声をかける必要を感じていない。



 監禁というディープな事実に相応しくない無接触ぶり。

 無機質に、受け取り口から出される食事。風呂も服も、トイレもひげ剃りも、およそ人間らしい生活をおくるに相応しい道具はその部屋に総てある。

 なのに、箕田の声は聞こえない。監視カメラとか盗聴器とかあれば良いのに。箕田くん箕田くん君が好きだ。

2012-08-18

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