ゆめ(BL)
ゆめをみた。…が…を思い切りぶったたくゆめだった。
仁科は、ぼんやりと笹伊の横顔を眺めていた。見れば見るほど、なんの感情もわかない。強いていうならば、彼の目尻あたりに、ニキビがぽこりとあるなと思うくらいだ。
「仁科くん。ぼ僕、君に何かしたかな」
「あえていうなら、なぜしない」
「はい?」
笹伊は、強すぎる視線に根負けして恐る恐るというように、横に座る仁科へ顔を向けた。
「いや、そもそもなぜ夢に勝手に出て来た」
「僕が?」
「そう、お前」
はたから見れば、異常な会話だが、残念ながらその‘はた’を担う同級生は、総合勉強であるところのアニメに夢中である。
そう、この会話は、暗く電気を落とした視聴覚室隅で行われていた。
「…えと、仁科くんと僕って前に話したことが有ったけ?」
「有ったら俺もここまで悩まなかった」
「どんな夢?」
笹伊が俺をぶっ叩く夢。
その日、笹伊は「俺を叩いてくれ」と懇願する仁科の夢を見た。
・
最近見るゆめがひどい。
クラスメートが出てくるのだが、「俺を叩いてくれ」から始まってとうとう昨日は、「俺を刺してくれ」と包丁まで持ち出してきた。
「笹伊、お前顔色悪いよ」
「多分君のせいだと思う」
「どのあたりで」
「3日前の、僕に叩かれる夢を見たって話しかけてきた辺りで」
今日から仁科の班と同じ清掃場所である。非常についてない。例の3日前から、ぽつりぽつりと何かしら話すようにはなったが、笹伊と仁科は友達以前に知り合い止まりだった。
少なくとも現実では。
「なんで笹伊なんだろうな」
「……」
黙殺。なんだか嫌な予感がした。
「昨日もいきなりキスだしな」
「っ!仁科の馬鹿!!」
笹伊は、思わず竹箒をフルスイングしていた。まさしく夢の現実、とうとう仁科は笹伊にぶったたかれた訳である。
だが、その日から笹伊の夢はステップ・アップ・ヒートしたわけでして。
2012-10-20




