微妙に不幸なトリップ話(RPG系異世界トリップコメディ)
Bl未満のただのパンツが出てくる話。サイトの拍手に置いてた奴。
彼と握手をする。そんなことができようとは夢にも思わなかった。
「体温あるんだな」
「は、」
「いえ、こっちの話です」
まさか、実は、自分。異世界から来ましたとか言えるわけない。しかも、明らかに、300時間くらい惰性で1年やっていたRPGの中ですとか。
つまり、村人に紛れて勇者さまわっしょいしている俺の台詞は、画面越しにしか彼をしらないものの戯れ言だ。
勇者一行は、村1番の宿屋に向かい去っていった。村1番というか、村に1つしかないというか。まあ、実質1番ではある。
「リヤ、」
手を握ったり開いたりして、今彼と握手したんだと感動している後ろから甲高い声で俺を呼ぶ声。振り向くと、豚の貯金箱に羽根を生やしたような、微妙な生物がパタパタと懸命に此方に近付いてきている。彼女は、ジャイ子。俺の多分相棒。
昔、ここにトリップしてしまって右往左往していた俺の頭の上に降ってきた卵から孵った…魔物?…である。
「お土産!」
嬉しそうにしてぶぎ、っとひと鳴き。口から吐き出したのは、しましま柄のトランクスである。
このジャイ子。困ったことに、散歩から戻ってくる度パンツをどこからかぱくってくる。マジで勘弁して欲しい。近所で話題を集めるパンツ泥棒の正体は、俺、否ジャイ子なのである。俺の居場所が無くなるフラグのため、懸命にしつけをしている。戻して来い!とこの前手酷く叱ったが、戻された当人(パン屋の主人52歳)は、びしょびしょのパンツに(ジャイ子の胃液とか涎)可哀想なくらいに憔悴していたため捨ててくるように路線を変更した。
てか、今日もやっちゃったのジャイ子ちゃん。今日は、俺内最強スペック持ちのギラエがいるんだけど。アイツ隠しキャラだけど、ストーリー上仲間にならなかったら敵に回る上、都合3回バトルで復活する最凶キャラだよ。
俺は、アイツ仲間にするの条件厳し過ぎて諦めたのに。なんで、すんなり勇者一行に入ってるんだろ。俺が操作したから、悪いのか。
まあ、言うなれば敵に回せば最悪の正義のメンツがいるよってこと。村長とかになんかのついでで依頼とかされたらたまったもんじゃない。
「なあ、俺さすがにこの村出たら生きて行けない自信があるんだ…捨てて来い」
そのトランクス、見覚えあるとか嫌過ぎる。イベントでパンツ一丁になった勇者のと凄い似てる。あ、名前書いてある。俺、文字読めなくて良かったああ!
「捨てて、来い!」
強く言えば、しょぼんと肩を落としてジャイ子は、さらに。
もう1枚のパンツを吐き出しやがったのである。真っ青になる俺。あれれ。今日の勇者さま一行。勇者さまとギラエを除いて全部異性だけど。あれ、それ男の下着だよね。ボクサーパンツですか。黒ですか。
何故か、赤字でコンテニューの文字がちらついた。