SFBL
「よくぞ、ここまでやれたな」
「さすがでしょ」
「褒めて無いことに気付け」
あえて空気読まない。そう言った男の羽織が風に煽られた。
ああとてつもなく壮観である。
この大きく突き出た崖から望む大地が全て緑だった。
「きみに美しく着飾った大地を見せてあげるよ」
約束だと浮かんだ小指がまるでつい先ほどの光景のようだ。そうその時はまだ、この光景は、荒れた大地だったのに。
「おっと風かな?モニターがずれた」
ふありと、風が美しい紺色の矢絣を吹き上げるついで、鈍色の無骨なフォルムを撫で上げた。
飛ばされないようにと手を伸ばすが、一足遅い。羽織は、すらりと落ちた。
現れるディスプレイには、非常に解像度の悪い人物が呑気な顔で笑っている。
「適当なこと言いやがって」
「さあ、崇め祀ってくれたまえ!どうだいこの素晴らしい世界は」
「どこの誰のセリフだ」
「ああ、太陽が眩しいね。スポットライトだ」
少しづつ、噛み合わない会話。
残念ながら、空は青いも太陽は隠れている。
ディスプレイに寄りかかると、悲鳴のような機械音がした。
「さて、残念ながらお別れのようだ。また、今度“電話”するよ」
チャオ。陽気なイタリア語が最後に。
テレビ通話を装う男の顔は、フリーズしている。
「残念ながら、演出は最後のが駄目だったな」
冷凍スリープで眠っている間、遭難した宇宙船は母船を呼ぶより、星を改造する方を選んだようだ。
君にサプライズだ。と寝起きざまにディスプレイの中で老いた仲間が言う。その後に贈られたプレゼントは、少々迷惑なぐらいの大きさであった。