貰い手(現代/GL)
かわいい。その人に思った単語はそれひとことだった。
「結婚してください」
「いいよー、くりちゃんが30になっても貰い手なくて、私が今の彼氏と別れてたらね」
きっとメグムは、少女たちの戯れの1つとして受け取ったのだろう。栗子は、絶対だからねと小指を上げた。彼女も、ふふっと笑って小指を絡ませる。
「約束ね!めぐちゃん!」
「うんうん約束ねー」
彼女の指は、さらっと離れて、早々に携帯にのばされた。
「30歳おめでとうくりちゃん」
「26歳おめでとうめぐちゃん」
「ありがとう。ところで、なんでくりちゃんが私の部屋にいるの」
「約束を果たしに」
「え……決闘とか?」
あまりに真剣な瞳に蹴落とされて、寝ぼけたままにメグムは栗子をみた。きっちりと着込んだスーツは隙がない。契約を分捕ってきますと挑む保険会社勧誘員みたいな感じだ。
「忘れたの」
「何を?」
「結婚してくれるんでしょう?」
「何言ってんの」
思わず素っ頓狂な声を出すメグムに、あくまでも真摯に彼女は横から年代もののラジカセを取り出した。流れてくる会話は……びっくりすることに役十年前の自分たちの会話だ。
思わず、彼女は、仏教徒にも関わらずおお神よ!と頭を抱えた。
2012-12-29