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oh,parents!(NL/家族)


 エッチ!

 真面目に真面目に過ごして来た、朝華にとってそれは暴言に等しく耳に残った。

「この、私がエッチ?破廉恥だと…?」

 カーテンを捲った姿勢のままわなわな震え出す。様子の可笑しい朝華に、夜理は、言った本人ながらどう声を掛けて良いか分からずに、不鮮明な声掛けを行う。

「あの…」

 まさかここまで過剰に反応されるとは思わなんだ。

「じょ…」

 冗談です。と続ける前に、朝華は、精悍な顔をきっと夜理に向ける。

「分かりました。責任を取りましょう」

 いや、まさかそんな、大事になるとは。




「……」

 夕斗は死んだ目で、無表情に夏休みの宿題の手伝い…を越えた日曜大工に精を出す父を見る。

 精悍な青年らしさを今尚保つ横顔は、小さい頃からクラスメート(特に女子)に大人気。お父さんいつ来るの?と聞かれる日々。いや可笑しいだろ。父兄は、普通そんな簡単に学校に来ねえよとか思ったことも真新しい。

 そんなモテモテ父のハートをキャッチアンドホールドした、両親の甘酸っぱい恋愛話を期待して、きっかけを聞いたのだ。母に。




 まさか、バイト先の作業中に、倉庫カーテンを捲った父にふざけて言った母のひとことが原因で、己が誕生したとか…自慢どころか、忘れたい。

 デートとかはしなかったの、アンタらのスタート時はわかった。じゃあその後は?

 平凡な外見の母は、しょんぼり肩を下ろしてお茶を飲んだ。冷えたお茶は、グラスに雫を召喚している。

「翌日に婚姻届持って来られて、次の日両親に挨拶して、4日後に籍入れて、引っ越して、お酒飲んだあとの記憶なくて、次の日朝華さん仕事で1年海外で、1年後に夕くん生まれて」

「何、それ」

 つまり、息子から仲良しおしどりに見えていた夫婦は、仮面夫婦もびっくりなほど、様々な過程をすっ飛ばしていたらしい。恋愛にすら発展していない可能性があった。現在進行形で。




 夕斗は、とうとう彫刻刀を持ち出し、立派な本棚に細工を施そうとする父の手を止めた。

「父さん、やめて。俺をどんな天才大工児にするつもり」

「?これ、戻ってきたら母さんにやるんだろう」

「いや、母さんが本棚欲しいから作るんじゃなくて、あくまで夏休みの宿題の引き取り先だから」

「母さんは、女性だろう?」

 真面目に言う父に頭痛がする。

「じゃなきゃ俺は生まれない」

「いや、女性はこんな感じの細工が好きだろう?」

 視線の先には、インテリア雑誌。重りを乗せられ、開かれたページには、明らかに一般家庭には必要無いアンティークな本棚があり、その細やかな細工は見事。こんなのを作られたら、出せない。宿題を。



 どうやら彼らは、息子が小学5年生になりようやく、交流をはじめたらしかった。



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