第五話:「新しいクラス」
勇人をいじっている間に学校の門の前に到着してしまった。
久しぶりに来る学校は桜吹雪に舞っていた。
きれいだ…。
そして初々しい新入生のスカートが風に舞うとーーー
…やめておこう。
勇人みたいだし。
現に勇人はしっかりスカートを目で追っている。
妹コンビはおしゃべりしていて、きずいてないのが幸いだ。
それに周りがチラチラこちらを見ている。
…無理もない。
琉奈は言うまでも無く美少女だ。手足が長くスレンダーだし、あの大きな目はいかなる男達を魅了してしまう。ルックスだけなら月9ドラマの主役を張れるな、うん。
綾香ちゃんも茶色っぽいくせっ毛がキュートでかわいい。勇人と違って身長が低くて童顔なところも妹属性的にグッドだ!
勇人は性格はメチャメチャだが、顔はいわゆるイケメンだし、身長も高くて、その人懐っこい明るい笑顔は万人を惹きつける。
………こんなこと絶対言わないけどな。
「じゃあ私たちはクラス分けの表が昇降口にあるので、ここでお別れです」
「そっか、新入生だからな〜」
「お兄ちゃん、悠人先輩に迷惑かけないでね。あと女の子のスカートあまり覗かないほうがいいよ。変態さんみたいだから」
「………シクシク」
………勇人の事を分かっていたのはどうやらオレだけじゃなかったようだ。
恐るべし洞察力、綾香ちゃん。
「………悠人」
梶本兄妹が別れの挨拶?をしている間に流れ上、うちの兄弟も別れの挨拶をすることになった。
「帰りは迎えに来てね、あと帰りに夕食を買って帰ろ、今日は何がいい?わたし、悠人が食べたい物なんでも作るよ?」
すごく不安そうな表情をしていた。
…たぶん、これからの学校生活が不安なんだろうなぁ。
琉奈はかなり人見知りだから。
オレは一言、
「わかったよ。絶対に迎えに行くから」
と言い、指きりした。
「まるで離れ離れになる王子様と姫様みたいだな…」
「・・・うん」
オレと勇人は特進組である2年1組になった。
…考えてみれば、一年の頃の入学式の前に入試とは別に特進の選抜テストしてたっけ…。
「たるいな…。また同じクラスのメンバーか…」
オレの一言に、勇人は、
「そうでもないらしいぜ。上位10人ぐらいはいつも固定メンバーだから残留だけどそれ以外はいつも順位が入れ替わるらしいから、一年の学年末のテスト次第では30人入れ替えもありえるぞ」
それはよかった。新しい友達はやっぱ欲しいし。
実際、教室に入ったら知らない顔が結構いる。
担任はまだ来ていない。
キーンコーンカーンコーン
予鈴が鳴った。
するとすぐ先生が入ってきた。
「うぃ〜す、全員いるか〜」
すごくやる気なさそうな声だった。
担任は男だった。
身長は高いが、いかんせん髪の毛がぼさぼさ、無精ひげだった。
一応、黒のスーツ着ているが、とても先生には見えない。
「俺はこのクラスの担任になる斎木塁、教科は数学、今年からこの高校に新規採用されてきた。どうぞよろしく〜」
随分、テキトーというか、グダグダな先生だな。
が、突然
「俺が就任したからにはこの特進クラスは全員東大合格めざすぞ!」
低い声で高らかに宣言した。
クラスに沈黙が走る。
確かに例年、特進クラスでは旧帝大国立大や早慶に合格してるが………
沈黙が続く。
隣のクラスの自己紹介の拍手が聞こえる。
ツバを飲み込む音が聞こえそうだった。
「…………………………今のは出会いのジョークだから」
一分後に小さな声で斎木先生が困ったようにささやく。
オレは少し疲れた。
………誰かこの微妙な空気を変えてくれ。
………誰かこの先生に上手いジョークを教えてやれ。
………誰かこの担任変えてくれ。
………誰かこのーーーーーーー