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異世界ライダー  作者: 燃焼リング
第1章 異世界入門
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第6話 笑う男の目的

ヤツは俺を見ていた、食事中ずっと見ていた

そのニヤけ顔で…


毎回コイツが食事を持ってくる訳ではない、コイツもまた女医のように三日に一度ほどだ


コイツ意外は仏頂面とまでは言わないが大抵無表情だ、怒気を感じることもなく好奇の目を向けてくるわけでもない

単なる研究対象、さながらフラスコでも眺めるような目を向けてくる


だがコイツは違う…

俺を見て見るなりニヤついた顔を向けてくる、なにかされるでもない

コイツに関してはガラス越しに見てくるかこうして飯を持ってくるかだ

故にいつもと違うのはこの5枚のカード、一貫性が無いこの絵柄

いや意味なんて無くてランダムに選んできたのかもしれん


食事が終わるとまたカードを見せられた、先程と同じだ


左からヤツが指差す順に俺は答える


「大根、鹿、手のひら、山羊、ルービックキューブ…」


分からん… なにがしたいんだ… 

ヤツは「クク…」と不適に笑うとカードを置いて食器を下げ始めた

もしかして、もしかしてだが… 単に楽しませようとしてくれたのだろうか?

笑うのは友好の証だったり?気持ち悪いけど…


俺が答えたところでヤツには伝わらない、妙な発音と単語にしか聞こえていないはずだ、俺が向こうの言葉を聞いても理解できないように向こうにはこちらと同じことが起こってるはずだ


でもコイツ、笑ってるんだよな…


そもそもおかしいのはこうして身振り手振りで意志疎通を図ってるのはあのニタニタだけだということだ

他の連中は一方的に俺を実験動物にしてるだけだ、それこそネズミかなにか見てるような目で


仮にこの男を研究熱心な変人だとしよう…

で、他の奴らは飽くまで仕事でやってるとしたら…

つまりコイツには俺がとてつもない研究対象に見えていて、なんとか情報を得ようと意志疎通を図ってるのか?ニヤけ顔は敵じゃありませーんってとこか?

ん~…無理があるよな…


いざ冷静になって考えると、コイツのやってることは俺からの視点だけでなくここの奴らの目で見てもなにかおかしいのではないだろうか?

思うに、こんな雑務みたいなことやってるってことは上のもんじゃないな、平だろう

多分ここのトップはあの宇宙人みたいなヤツだ

もしかしたらこの世界は宇宙人に侵略された後の地球なのかもしれない、なんて映画みたいな話だが俺の状況から見るに完全に違うとは言い切れない


そんな風に考えを巡らせているとこの男、今度は薄ら笑いを浮かべて俺を見下ろしている


本当に気味の悪いヤツだ…


するとこの後予想もしていなかったことが起きる


本当にまさかと思った

ヤツは俺の耳元でボソッとこう呟いたのだ




頭文字(イニシャル)だ…」


……




「…えっ?」



……


………



…!?!?!?


もう聞くことはない… 


そう思っていた言葉


否、言語だ

俺の聞きなれたあの日本語だった!


俺が動揺している隙にヤツは部屋を後にした


「待て!お前は!?」


気付いた頃にはカチャッと鍵の閉まる音と遠ざかる足音が響いた


「アイツ…なにもんだ?」


動揺した…

いつもニタニタと俺を見てくるアイツは「俺の日本語」を使ったのだ

アイツは味方なのか?そんな疑問がよぎった

思えば俺はアイツから直接非人道的な対応を受けたことはない、俺にいろいろしてくるのは他の奴らだ

特に宇宙人野郎…


アイツが… もし味方だったとしたら…

今の言葉…

脱出のヒントが隠されているのではないか?


希望が見えた気がする

同じく言葉が通じる… 諦めきっていた俺の心に火を点けるには十分だった


すぐさま言葉の意味を考えた



とりあえず、アイツは言った「頭文字」って言ったな…

俺はこの言葉がたまたま俺の日本語に似たこっちの日本語とは思っていない

何故ならヤツらの言葉は何の理解もできないから、これは要するに俺の耳には空耳でも理解できる単語が無いってこと


誰かがこっちの言葉で俺に話しかけても俺は形容し難い擬音のように感じる


なんて例えたらいいか… 

そうだな…


ステッペンウルフというバンドの「Born to be wild」って曲がある、映画イージーライダーで有名なあの曲だ

あれの歌い出し「get your motor runnin'」って歌詞が空耳で「いつものラーメン」に聞こえる

そんなわけあるかと思うだろうがこの文章だと思って歌い出しを聞いたらもうそれにしか聞こえない、一度聞いてみるといい


まぁ要は、この世界の言葉は俺にとってそういう空耳すら存在せず

俺には「もにょもにょもにょ」と到底言葉とは言い難いものに聞こえるということだ

勘違いすらない


でもあのニタニタ男、ハッキリと「頭文字だ」と俺に言った

そして俺はちゃんとその言葉を理解できた

これこそが答えだと俺は思う


かと言って…

頭文字か、なんにせよよくわからん

アイツの行動を整理する必要がある

そこにヤツの発言のヒントがあるはずだ

これはチャンス、逃すわけにはいかない…


ヤツの行動は…


ニタニタした顔で俺を見てくる


三日に一度ほどのペースで食事を持ってくる


今日に限っては統一性皆無な絵柄のカードを持ってきた


言った言葉は「頭文字だ」


つまり…

カードか、カードに秘密がある


俺は机に並べっぱなしの5枚のカードを見た、恐らく順番にもこだわりがあるはずだ


くどいようだが

左から順に…


大根 鹿 手のひら 山羊 ルービックキューブ


それぞれ描かれている


頭文字か…

じゃあこれらの頭文字、それが答えの可能性が高いな

これも左から…


D S T Y R


えっと… ドスティア?いや違うか、なんだそのゲームにでてきそううな町の名前みたいな…

クソッ…紙とペンがあればもっと楽なんだが

もしかして英語の頭文字か?よし!




……


分からん…

まず大根って英語でなんなんだ??鹿gazelleだったか、手はhand、山羊?山羊って…YAGI?ルービックキューブはそのままだな、じゃあ…


○ g h ○ r


え… together? 

じゃないよな… 

落ち着こう、多分英語にはしないんだ

ドスティアのほうがまだしっくりくる


イタタ…

考えたらさっきの頭痛がぶり返してきたな



で… 朝の続きがしたいってわけね…


扉の方に目をやるとニタニタとは別のヤツがいた、俺を次の実験に連れ出すようだ

勿論そいつの顔は無表情…


「頭文字だ」 この言葉を聞いた後にこの無表情を見るとあのニタニタの顔が死ぬほどマシに見えた


そのまま俺は連れ出された


どうやらさっきのニタニタとのやり取りを咎める気は無いらしい

やはりアイツはこの中でも少し浮いた存在のようだ…


次はどんな実験だろうか…

まぁ大方あのへんなヘルメットを被せて俺の思考を読みたがる実験だろう


この際変な薬を打たれてないだけマシとする


これが終わったらまた謎解きだ


もっとも頭痛が酷くなければ、だが…

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