第5話 まるで実験動物
…
俺の名前は水橋功一
年齢は27歳
結婚は、もう無理だろうな…
仕事は…
実験動物かな…
ここに来て色々されたよ
まったく何を言ってるかわからん連中にね
あるときは尋問?ただし何を聞かれてるか分からないので伝えようがない
またあるときは頭になんだかよくわからん装置をつけられてとにかく具合が悪い、吐き気がする… 多分嘘発見器とかそれ系で思考を読み取ったりしてるのかもしれない
またまたあるときは髪の毛は愚か眉毛やまつ毛もない身長の低いおっさん?が耳に変な機械をねじ込んでくる、アイツが来ると頭痛がひどい…
これらは一例にすぎん、とりあえずいろいろだ
俺はあの時病院で目覚めた後、医者に現状を訴えたが
なんだかもにょもにょと訳のわからんことを言ってた、お互いに言葉を理解できてないんだろうな
向こうもお手上げって感じが見てとれた
そしたら誰かが… 多分偉いやつだが、通報かなにかしたんだろう
しばらくして背広の連中が来てもにょもにょしゃべって俺に手錠を掛けた、もう半分諦めてた俺は抵抗することもなく真っ赤な空のした黒塗りの車に放り込まれた…
でここだ
もうどれくらい経ったかな?一ヶ月は経ってない思うが…
研究所のようなとこで白衣の連中の監視のもとやりたい放題やられてる
確かに俺はやつらから見れば異世界人だが、人間は人間だし調べてなにかわかるとも思わないんだが…
こんな俺、余裕に見えただろうか?
違う… もう諦めて抵抗する気にもなれないだけだ、なんに対してもまぁいいかって感じだ
多分これが鬱病なんだ
これはここ数日のうちに考えたことだが…
こういう施設があるのって俺みたいなやつが他にもいるってことだろうか?
いたとしたらみんな同じことされてんだろうか?
みんなあの小さい毛なしのおじさんに変な機械突っ込まれてるのか?
あの人はなんなんだろう?肌の色はいかにも不健康な感じだった、白すぎて逆に黒ずんで見える
白いというか、もうグレーと言っていいかもしれん
あ… 宇宙人か?
ハハッ もうなにがでてもおかしくないな、向こうからすれば俺が宇宙人みたいなものだしな…
ここが国の管轄なのか、あるいはこういう組織なのかしらないが…
もはやどうだっていい、殺してバラバラにでもするがいい
痛くしないでくれよ?
…
と、思ってたら飯の時間だ
白衣のおっさんがニタニタ笑いながら病院食ばりに質素な飯を持ってきた、毎度のことで嫌になる
これなら学校給食のがましだ
「フゥ…」
思わず溜め息だ…
飯のことじゃない、おっさんの方だ
ニタニタして気持ち悪いんだよ、三日に一度くらいでくる美人の女医さんにしてくれ
あの美人さん俺の診察とかしてくれるんだが、近づいた時シャンプーっぼいいい匂いするんだよ、唯一の楽しみと言っていい
もっともあの人は常に無表情で、俺も楽しみとは言え0が0.1になるってレベルの話だ
表情にだして喜ぶことはないし、なにか気の利いたジョークで機嫌をとることはない
そもそも伝わらないんだが…
くだらない考え事をしながらニタニタ白衣を見ていた
俺と目が合うと「ンフフ…ヒヒ…」とと不気味に笑いを浮かべる
ちなみにこの男だが、ドラマ「相棒」のあの人を高身長で面長にした感じだ
まぁとにかくその不気味な笑いをやめてほしい
この際どっちでもいいのだけど、コイツらは医者か?それとも科学者か?
飯を持ってくるからと言って配膳係りってわけでもあるまい
ニタニタ白衣は俺をじっと観察してる…
そんなに飯食うとこが珍しいか?
まぁそれでも食べるんだが
俺が一通り食べ終わるとアイツは不適な笑みを俺に見せて帰っていった
結局アイツはなにがしたいんだろうか
…
翌日
血を採られた、注射器にして3本分ほどだ
これをやったのは例の美人女医だ、美人だからいいとは言わないがあのニタニタ顔に何かされるよりは余程マシだ
その後は食前にまた宇宙人みたいなやつが来て耳によくわからん機械をねじ込んできた
今回はそれで終わらず、片手を俺の目を覆うように被せてきた
これもまたよくわからんがなにかしてきたんだろう、キーンという音と共に激しい頭痛に襲われた
気を失ったようで目覚めてもまだ頭痛が残ってた
鼻になにか入ってる、取ると赤いなにかが出てきた
まぁこれはつっぺだな、鼻血を出すほどの頭痛は初めてだ
くそったれ宇宙人野郎め
次の日も、そのまた次の日も実験動物にされた
もういい… もう殺してくれ…
そう思い始めた頃だ、あのニタニタ顔が食事と一緒にカードを何枚か持ってきた、絵の描いてあるカードだ
飯の前にそれをテーブルに並べられた、それぞれ5枚
左から…
大根 鹿 手のひら 山羊 ルービックキューブ
なんだこの絵…
ニタニタが左から順番に指差していくので俺の日本語で答えた、無論伝わらない
意志疎通ができないことをやっと理解してくれたのか?こちらの言葉を理解する方向にシフトしたのかもしれん、それくらいのことすぐ思い付けよ
そう思いながら食事を始める、相変わらず質素な味だ…
その光景を見続けるヤツの顔は当たり前のようにニタニタしていた