第42話 言葉ひとつで人が救えるなら
潤んだ瞳で俺を見る景子さん… そんな景子さんをじっと見つめる俺
辛かったろうに… 一番信頼してる人たちにみんなに裏切られてきたんだ、それでもよくこうしてしっかりした大人になってくれたものだ
本当に、しっかりしすぎだ
自分だけは真面目に生きようと決めたんだろうな
俺の結論…
というか思ったことやアドバイス、考え方と今後どうするか、偉そうだが言っていく
「まず子供の頃にあったことも含め、もちろん景子さんは被害者です、よく歪まずにこんなしっかりした女性になってくれたと思います」
「ありがとう…」
「はい、それで始めの2つは別としますが… なぜ景子さんと付き合う男が浮気に走るのか…ということを俺なりに考えたんですが…」
これについて…
前々から思っていたことだが景子さんは非常に良くできた女性、多分これほどの人はそういない
これだけ美人でよく気が利いて面倒見もよくしっかりした人は俺が知る限りいない、話してみると意外と茶目っ気があるが、それもまた魅力だと思う
でもそれこそが原因だと思う
これだけの女を自分の物にした… という優越感がもっといけるとそうさせるのか
こんなにできた女なんだから自分でなくてもどうにでもなるだろう… と劣等感からさせるのか
あるいはあまりに面倒見がよい、母性どころか本当に母親のように甘えきってその優しさにあぐらをかいている
「ちょっと傷付けても俺の我が儘を結局許す」のような考えに至るんだと俺は考える
「ここまで少し辛辣な言い方かもしれませんが許して下さい、悪気はないんです… ごめんなさい」
「大丈夫… でも私ってそんなに褒められるほどいい女かしら?」
「え~っと… はい、その~ 並みの女性では景子さんに敵いませんよ?きっと…」
「…ありがとう、初めて言われた」
嘘つけぇ!?というのは黙っておくが
これ、結構緊張するな… 淡い青春を思い出す緊張のレベルだ… 深呼吸しよう…
「ふぅ… じゃ続けますよ?」
景子さんのそういうところが逆に悪いと言ってるのではない、それは大きな魅力だから崩さずそのままでいてほしい… さっきも言ったけど男が悪い
敢えて言うなら景子さん自身もそういう男と敢えて付き合ってる傾向があるのかもしれない
「どうです?」
「自分ではよく理解できてないけど、確かにそうかも」
「少し厳しいことを言います、でもどうか気を悪くしないで下さい…」
「大丈夫よ?ゆっくりでいいから、聞かせて?」
うぅ…こういうとこなんだよなぁ… つい甘えたくなるのは…
まさか誰かが俺を試してないか?浮気しないように誰か見てるんじゃ…
まぁいい…
「景子さんって多分、男をダメにするタイプだと思います」
ハッキリと言わせてもらった、こんなこと言われて怒らない人はいないんじゃなかろうか?怒鳴られるのは覚悟しよう
「そんな!……… でも否定できない… 続けて?」
大丈夫だった… よし
くどいようだが景子さんはしっかりしすぎている、仕事も家事もできるし学歴も素晴らしい
成功者と言っていい、でも男はそんなにできる女の横にいると「全部彼女がやってくれるからなー」とどんどん甘え始める… 景子さんもそれに応える、男はどんどんだらしなくなる
なんでもできすぎて男が甘える、包容力が裏目に出ている
「でもそうなるとどうしたら…?」
「それで結局景子さんにはどんな人ならいいのかな?って考えてみたんですよ
多分いつでも感謝できる人… ですかね、あとは景子さんだってたまにはワガママいってお姫様みたいに扱ってもらいたいでしょ?頑張りすぎないでたまには甘えましょう、素でいいんです」
月並みな意見かもしれないが的外れって訳でもあるまい
「いつもありがとう」って常に思える人、景子さんはそれに甘えてもいい
そんな人いるのか?わからない… でも景子さんの話を聞いたら誰でも「俺だったら!」って思うはずだ
俺はこれでもじっくり考えたつもりだ、傷つかないように言葉も選んだつもりだ
うまくまとめられてないのは何となくわかってるが
「なんかすいません、偉そうなこと言ってますがうまく言い表せられません…」
「ううん…伝わるわ… 確かに今まで付き合った人にはちゃんと感謝されたことなかったかも、まったくないとも言わないけど…この時は?って思い浮かばないもの」
「ごめんなさい… お酒が必要かなこういう話には、シラフじゃむず痒くて言えやしない」
「あらそれは“飲みに行こう”ってお誘い?」
「あぁいや!そんな深い意味は!?」
「フフッ…今度機会があれば行きましょうね?」
も、もうダメ…ノックアウトしちゃう…
俺は両手で顔を隠し「おふぅ」みたいな情けない溜め息をついた
それを見てクスクス笑いながら「どうしたの?」とわざとらしく聞いてくる
「いや、景子さんやっぱり大人ですわ…」
「えぇ…? もっと子供っぽくしたほうがいいかしら?」
「や、そのままでお願いします」
話が済むとカフェを出て仕事に戻ることにした
仕事と言いつつもうデートなんだが…
うんデートだわこれ、このあと装備品を揃えるために服屋さんだぞ?装備品とかいってただ景子さんのファッションショー楽しむだけだから、ただ二人で服選ぶだけだから
うん… 気を取り直して改めるが、今回ちょっと森の中らしくてな
だから動きやすい格好がいいんだ
「それじゃ、どこがいいですかね?」
「“動きやすい”って言っても登山するわけじゃないし、ジーンズとシャツとかでいいかな?って」
「了解です」
コスパのいい大型量販店にでも行こうかね
急いでる訳でもないのでゆっくり歩いて向かうことにする、途中で昼食も済ませながらね
道中、景子さんは言った
「私、正直最悪な人生だって思ったわ… 男運は無いし母だっていつのまにかホスト通いしてた、聖人のヤツはしょっちゅうセクハラしてきたわ
仕事だけしっかりこなしてお金だけは稼いでたって感じね、でもお金ばっかりあってもちっとも幸せにはなれない… そんな風に思ってたらあなたが来て先生は異世界に行くと言い始めた、あの時の功一くん… 目は死んでたし表情ひとつ変えなかった、この人は来たくもない世界で一人ぼっち、会いたい人にも会えないし頼れる人もいない、その上言葉は通じない…功一くんと比べたら私なんてまだ幸せな方だとか思っちゃった…ごめんね?」
「いいえ」
「先生は始めからあなたを逃がすつもりだった、私も… これは同情かしらね?可能な限り助けようと思ったわ、そうして功一くんのために動いてる間は、自分で言うのも難だけど“良いことをしてる”って行動に意味を持てたし、幸せだったわ… 功一くんと言う理由をつけて聖人のヤツも撃ち殺せた… もう戻るつもりはないの、過去を捨てて今はスッキリしてる、功一くんと話して自分の中の暗い部分も少し晴れたわ… いつか留まりたくなったらどこかの世界に留まろうかなって思ってるの、そこから再スタートよ!今のところは旅を続けたいけどね」
少し前に出た彼女が、くるりとこちらを向き俺に言った
「大変だけど、今は楽しい!ありがとう!」
…
いい笑顔だ、かつてこんなに素敵な笑顔を見たことがあるだろうか?
こういう時… 俺はどうしてたっけな?忘れた…
よく考えたら… 景子さんがアイツを殺したのって俺と逃げるためなんだよな
まぁ、俺のためなんだ… 他にも理由はあれどね
「俺も、なんか楽しいです…」
本当に…なぜか充実してるよ、人生にスパイスを…ってやつか?
あまり揺さぶらないでくれ
俺のライフはもう0だよ
帰りたくなくなっちゃうじゃないか…




