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異世界ライダー  作者: 燃焼リング
第1章 異世界入門
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第3話 つまり異世界

あえて宣言しよう


俺はこういうタイプの人間が嫌いだ


大嫌いだ


自分勝手ですぐキレる、話を聞かない偉そうなヤツ


じっとしてろなんて言われたがもはや従うのは本意ではない

おっさんがいる、これ即ち人が住んでる空間ということだ

なにもおかしくはない


コイツはわけのわからんことをほざいていたがただのイカれた危ないヤツかもしれん

言葉も喚いてるだけかも


だからまた交番に入った


電話が使えないのは電気が通ってないからか?

俺はさらに奥に入り込んでみた


するとどうだ…


驚くべきことに生活感がある

例えばポットにお湯が入っていたり照明も点いたりガスも通ってたり


こんなの聞いたことある

何て言ったかな… 確か死んだじいさんに昔聞いたんだ


そうだ


迷家(まよいが)

ってやつじゃなかったか?


山で迷って歩いていると、立派な門構えの家があり入ってみると直前まで人が居たかのような生活感が残っている

物をひとつ持ち帰ると幸せになれるとか、逆に物にはいっさい触れるなとか諸説いろいろあるみたいだが…


俺は峠に居たな、つまり山だ

だったらそういう可能性もなきにしもあらずか?

もっともここは「家」というよりは「街」なんだが…


しかし

おっさんと会ったからだろうか…


なんだか開き直って好奇心が沸いてきたぞ

隠してた訳じゃないが俺は結構こういうオカルティックな不思議体験に興味がある

火星の文明の痕跡とか見たら

あ、これは火星人いますわ… って信じちゃう

それくらいに不思議なことには理解があるつもりだ


某ネット掲示板のまとめサイトとかで読んだぞ

最近流行ってるらしいな


「異世界」とかいうのが


イカれたおっさんと言ったばかりなのであれだが、これならおっさんの発言にも頷ける

もしやアイツは管理人みたいなヤツなんじゃ?

服装も用務員みたいだしな


「外来人」か… そういうことなら俺は外からきた人間となる


開き直るってのは時には大事だな、恐怖心が薄れた

それに来てしまったモノは仕方ない


そう思い立ち交番の外に出るとおっさんが腰に手を当てて凄い剣幕でこう言った


「コォラァッ!!!じっとしてろと言っただろうがぁ!チョロチョロすんじゃねぇ!」


「あ、はい…」


一瞬で萎縮してしまった…

しかしだ、これはチャンスだ

いろいろ聞けるじゃないか、ここどこなんですか?とか

よし… 


「すいません、ここはどこですか?… 峠にいたはずなんですが…」


「あぁ?ここか?ここはな…」


俺が訪ねるとおっさんは少し悩んだような顔をした

言葉を選んでるのかもしれない、必ずしも「異世界」とかそういう言い方をするとは限らない

こちら特有の言い方があるのかもしれない


「まぁ、溝みたいなもんだ」


溝?

ちょっとよくわからんぞ… 想像と違う答えが返ってきたな


「溝… ですか?」


「お前その“言葉”を使うってことは空が“青い”だろ?」


「へぁ?言葉?空?」


日本語ってこと… だよな?

じゃあ空が青いってのは?

俺は上、つまり空を見上げた

うん、空は青いだろう…


「違うか?」


「あぁいや…ちゃんと日本語だし空は青いもんだと…」


「なら大丈夫だ、すぐ帰れる」


意味が… 分からない…


でもこの口ぶりは俺が異世界にいることを証明してるんじゃないだろうか

もしかして、天気が悪いと帰りにくいのかな?

言葉… さっきおっさんは謎の言語を使ってたな

日本は今晴天だろ?っていうことを聞いてたんだろうか?

あれはどこの言葉だ?


「言葉って言えば、さっき電話で話してたのは何語ですか?」


「聞いたことないだろうが、あれはああいう“日本語”だ、まぁそういうとこもあるってことだな…

ん?おぉ準備完了か」


いや、あれが日本語は流石にないだろ…

ともあれ準備完了か

おっさんはさっきのPHSを見てそう言った

よくわからんが帰れるらしい、これは珍しい体験をした

みんなに自慢しよう


「よし目を閉じろ」


「え?あ?はい!」


「俺がいいと言うまで開くなよ?」


言われた通り目を閉じた

いいと言うまでって、具体的にどれくらいか教えてほしいんだが…


10秒 20秒 30秒…


と時間は過ぎていった

何分経っただろうか?声をかけてみるか?


「まだですか?」



あれ?返事がないぞ?


「あの…  おーい!」



え、もういいのかな?でもいいと言うまで開くなと…


しかし…


いや、気になるな

怖いもの見たさってやつかな、今目を開けたらどうなるんだろう?


日本の神話に

地獄かどっかに嫁さん取り返しに行って、帰るまで振り向くなって言われたのに嫁さん見たさに振り向いてしまって

そしたらゾンビテイストにハエが集ってる姿の嫁さんにドン引きして思わず置いて帰ったというのがあったな…


もしかしてそんな感じなんだろうか?


クッ…

なんだこの好奇心は!


絶対目を開けたらダメだけどなにかが俺を落とし入れるためにこういう気持ちにさせられてるとか、陰謀めいたものがあったりして!


もう一度だ、もう一度呼んで返事がなかったら目を開ける!


「おーい!誰かー!」


…いるか?



いないな



うん… よし…


南無三ッ!


カッ!と音が入るんじゃないかというくらい思いきって目を開ける見開いた

そこにはあるのはなにか?

しばらく閉じていた目が景色に慣れていく…


…?


… ?ッ!


…ッッッ!?!?!?


「なん…だ?これ?」


そこには先ほどの家や道路は無かった

それだけじゃない

空も地面も何もかも違う


さっき俺は知らない住宅街が異常だと言ったが…


ありゃ嘘だったよ、異常な空間ってのはこういうのを言うんだ!?


目の前に広がるのは…

なんて形容したらいいんだ!?これは!こんなの!


そうだ!ラーメンだ!油ギトギトのラーメン!それにありとあらゆるインクや絵の具を放り込んだような!とにかくぐにゃぐにゃのぐちゃどろなんだ!


それが360度に広がってるんだ!


頭が痛い… もう、思考が追い付かない…


「バカ野郎!目を開けるなと言っただろう!」


おっさん!おっさんの声だ!


「ここは!ここはなんなんですかぁ!?俺はどうなってしまったんですかぁ!?」


「落ち着け!落ち着いて自分の帰るべき場所のことを考えろ!」


俺はがっしりとおっさんの肩を掴み叫んだ、とにかく理解が追い付かず取り乱した

暴れまくって殴ったりした、逆に殴られたりもしたがそのときは痛みがなかった


おっさんの言ったことなど考えられる訳もなく、また気を失った

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