第30話 三ヶ所の真実 (前編)
街中を爽快に走るバイクが2台
片方はオフロードバイク、どんな道でも走破してやろうというのが伝わる極悪な運転をする男… 英介だ
そしてもう1台… そのオールドな見た目に気品と歴史、さらに味わいのようなものを感じさせる最高にカッコいいバイク… 乗る男はお馴染み久しぶりにバイクに乗って気が大きくなっている俺、水橋功一 バイクの名は水橋V
「たのしーなー!」と縦横無尽にバイクを走らせる俺たち、向かうはあの木がある学校だ
ルークに黙ってろと言った手前また行くのはやや恥ずかしいところではあるが仕方がない、一応策も用意した
それは店を出る直前に遡る…
…
「さすがにそのバイクで顔出しは目立つな」
英介が言った
確かに、このままでは「水橋バイク乗ってたな~」って知人に宣伝してるようなものだ
ならばどうする?顔を隠せばよい
だが
「お前フルフェイスは?」
「使わないと思って置いてきた」
「こんなときのためのヘルメットだろうが!」
何て言われましてもね、バイク乗らないでヘルメットだけ被ったヤツがテクテク歩いてたらどうよ?ヤバイだろ?持って歩いてたとしても変だ、俺は当たり前のことをしたまでだ
だったら英介の店のヤツ使わせてくれって話だが、コイツ… バイク屋のクセに「メットの在庫なんて無い」ときたもんだ
そもそもこの世界の法律は俺の見解通りヘルメットは被りたいヤツだけ被れっていう法律らしい、まったく甘ったれた交通法だな
…
「そうだ!いいものがある!」
英介がそう言って取り出したのは口回りを隠すマスク… のように使うための赤バンダナ
これで隠せというのか?いいだろう… いいが…
「完全に不審者だよなぁ…」
「だから俺が一緒に行くんだぜ?」
まぁ… そうだな…
英介が一緒なら怪しくても大丈夫だろう
…
ということがあった、まぁつまるところ顔を隠してるから今度こそ他人と言い張るんだ
そして回想してる間に到着だ
中学校… 昼前なので生徒たちは授業中だろう、昨日と違い静けさがある
俺達はバイクを止めるとまっすぐに裏へ向かった、目的は例の木… いちいち校内へ入る必要はない
「功一、なんでここからなんだ?」
そう、なぜ「ここ」からなのか
一応俺も考えている
一人の少年の一日のルーティンと見た場合こうなる
朝は家から学校へ、学校が終わると空き地へ、夜は家に帰る
今は昼前、だからなにかいるとしたら今は学校だ
…
そう説明すると英介もすぐに理解した
そして木にたどり着く…
「英介、なにか見えるか?」
「いや、だけど妙だな… うまく説明できないけど俺が前見たときと違う気がする」
結構前の話だろう、ルークが話してた「見てもらった」時だな
こう言うんだから何か可能性はあるな、俺もラジオをつけるぞ
「これは…」
反応ゼロ… つまりなにか「あった」だなあの時の小さな反応は確かに何かを示していたことになる
謎が増えたが謎だということが確定した、これは一歩前進だな
「分かった、空き地に先回りしよう、とにかく今ここには“いない”」
というわけで先回り… の前に昼飯を軽く済ませてから移動した
午後1時… 空き地に到着だ
「ここは前と変わらんな」と英介は言う
ってことはここではラジオが?
… やっぱりな、微弱な反応だ
理由はわからないがとにかく何かあるな
…
待つこと二時間弱
フッとラジオの微弱な反応が消えた、誤差だったのか?だがこのタイミング…
ピィー…
!?音が鳴った!レベル1だ近づいてきた!?
「功一… なんか来るぞ、まだ見えないけど来る、それは分かる」
英介もなにか感じ取ったようだ
それに合わせてラジオの高音が鳴り響く
ピィーピィィ!ビイイイ!
レベル3だ!?もう見える位置にいるぞ
「なんだコイツは!?」
英介はなにもない空間に向かいそう言った、ちょうど空き地の入り口付近だ
「俺には見えん!何が見えるんだ!?」
「影だ!真っ黒い影がいる!」
影!?やっぱりな!シャドーピープルだ!大当たり!
俺はそいつに近寄るなと忠告し空き地の角に寄った、観察だ… いったいなぜシャドーピープルが?
「英介、どんな感じだ?」
「さっきから見てる感じだとあの黒助、隅っこにある丸太みたいなもんに座り込んで動かないな… あとアイツの周り… 半径1メートルくらいかな?なんていうか、変だ… あそこだけ切り取れそうというか… 白い紙にまるで囲んだような感じって言ったらわかるか?とりあえず変だ」
驚いた、ソフトスポットが見えるのか?
俺はそれにだけは絶対に触れないように釘を刺しておいた、智昭くんのようになってしまうからな
だが念のため、もし急におかしな空間に入ってしまったらあの黒いヤツを殴り倒せと助言
コイツは幽霊も殴り倒せるしシャドーピープルも倒せるだろう多分
しかしシャドーピープルはどの程度の自我があるんだろうか?
智昭くんは問答無用に撃ち殺したが意思疏通はできるのか?
英介越しだがソイツはなにもせずこちらにも干渉せずにただ座っている、近づいてくることはないしこっちを見ている気配はない
まるでこちらを空気扱い、タダでルーティンをこなしてるだけなんだろうか?
一時間もしないうちに動き出したソイツを追うことにした、前回の反省点として… 「不用意に近づかない」これが鉄則だ
…




