第17話 ソフトスポットの悪魔
音が鳴る
よく周波数が合ってないときに鳴る「ビュウイィ~ン」って音だ
それに混ざり聴こえる音… 小さいが確かに「プィーン」という高めの音が聴こえる
ランプは…
点いている!
1つだけだが点いている!
でもやや点滅気味だ、誤差なのかあるいは遠いだけなのか、まだわからない…
「光ってるようだけど…」
「これだとまだ微妙っすね、周辺を調べましょう」
俺たちは神社を右回りに歩くことにした
ちょうど右側面に差し掛かったところで音がハッキリしてランプが2つ点いた
これは鳴ってるなってわかるくらいの大きさだ
「近づいた!」
「このまま近づくとしたら、裏かな?」
裏へ回る
少し早歩きで進みだす
そして角まで着いた時だ、音がグッと高くなりランプは4つまで点いた
しかし「あ!?」と思った時には3… 2… とランプが消えていく
何が起こったのか…
ソフトスポットが動いている?
「遠ざかったね、ソフトスポットって移動するのかい?」
「わかりません…」
こんなのは斉藤から聞いてなかったな、こういうこともあるのか… 程度に考えておこうか
だが今のであるのは確定だと思ってる…
それから俺たち二人はその後も神社を三週はした、それに合わせて光っては離れてを繰り返した
俺たちが追い、ソフトスポットが逃げてるような構図が出来上がる
こうわざとらしいと、もしかして異次元生命体でもいるんだろうか?と思えてくる
智昭くんはそこで思いきって「反対回りをしないか?」と提案し、俺はそれに乗った
正直危険だとは思う、斉藤は深入りするなとも言ったしあるのがわかった今一度戻るのも手だが…
これは俺たちの悪い癖である
彼は仲の良い友人だ
それはつまり“悪友”と言ってもいい
いい歳のおっさんがリスクを省みずテンションでやらかすのだ
すかさず反対回りをした
ラジオは… ランプが点く
2… 3… 4… 合わせて音も高くなる
ピィィーッ!とまるでブザーのようだ
そしてそこまでくるととうとう点いたのだ…
「5個…点きました…!」
「半径1メートル以内…!」
進むに連れて近くなる…
今回はなぜか逃げないが、やはり右回りなんだろうか?
正しいなら1メートル先の正面にある
…
俺は手を伸ばす
1メートル… 届いた!
…
がなにもない
しかしそこで
フッ… と音が止んだのだ…
「止まった… また逃げられましたね、これ以上の深追いはやめときましょ…ってあれ?」
俺がくるりと振り向くと… いない…
友人智昭が消えた
まずい!入ってしまったんだ!
すぐに気付いた
調子に乗るとすぐこれだ、俺たちが妙な遊びをしてると大体余計なことが起こる
主に俺に被害がある
だが違和感にすぐに気付いた
空は灰色、風や虫の声… おかしい…逆にだ
中間世界は時が止まったように生き物の気配も天候の変化もない
はずだが
今はそんなことはない、従って俺は現実世界にいるんだ
「智昭くんが入ったのか…!?」
近づいたのは俺だし、トラブルは大体俺にくるから勘違いしていたが
今回は逆らしい、俺が最も恐れたこと…
“智昭くんが入ってしまう”
ど、どうする!
斉藤のとこへ戻るか?いや!事例によるとけっきょくここへ戻るはずだ!おっさんもでてこないで
ポンと帰ってくるのだ
しばらく様子を見よう…
俺はラジオ片手に神社の正面まで戻った
智昭くんは… 戻っていない…
ラジオの方は反応無しか… まさかとは思うがマジで異次元生命体に拐われたのか?
だとしたら只でさえまずいこの状況が完全にアウト状況になっちまう!だがどうすれば…
よし… 一時間だ!それで戻らなかったら斉藤を呼ぼう!
…
智昭失踪から30分…
…
まだ戻らない… ラジオに反応は無し…
漠然と待ってても仕方ないので再度神社を回るが、探知は無し…
心配だ…
とは言え暇なのでラジオの周波数を合わせてみた、ニュースが入ってる
天気は全国的に晴れとかってやつからアメリカの新兵器がどったらこうたらとかそんなことまでいろいろ話している
戦況はドイツが優勢らしい、なんでも技術力で負けていて押されつつあるとか…
失踪から50分…
戻らない… やはり斉藤に… いやあと少し待とう…
ラジオでは日本軍に入ってアメリカと一緒にドイツを倒そうなんて宣伝が流れてる、人員不足なんだろうか…
戦争の価値観によって善悪って変わるよな、やってることは同じ人殺しなんだが、相手は敵だから殺してもいい…
綺麗事を言うつもりはないが楽しそうなCMで宣伝する事じゃない気がする… しかも音楽番組の合間だぞ…
もうすぐ一時間… 仕方ない!行くか…!
とその時だ
ビビィィーッ!
ラジオの声に混ざり高いノイズが入った
ランプは3つだ
「近い!」
どこだ!?
俺は周辺を見回した
正面から離れると音も光も減る…
これは神社の周りではないってことか?
俺はまっすぐ階段へ向かった
例の事件… 階段に子供がいたって言ってたな… まさか…
階段まで来るとより一層大きな音が鳴る、ランプは5つだ!
「いるんですか!?」
声をかけつつ周囲半径1メートルを警戒
俺まで入ったらまずい… 一人よりは心強いが
…
真後ろ!なにか違和感を感じる!
「そこ…!」
ブァァァァアンッッッ!!!
振り向いた瞬間とてつもない破裂音と共になにかが俺のすぐ隣を通りすぎた
飛んできた… というのが正しい
「な、なんだ…」
耳がキーンとする
今の音、いつか聞いた銃声に近い気がするが
俺は何かが吹っ飛んだ先を見たするとそこ驚愕のものがあるのを見た…
にわかに信じがたい… 理解が追い付かない…
…
そこには…
…
「真っ黒い…人?」
そうだ、一言で言い表すなら「影」だ
立体な影が鳥居の柱に横たわっている
最悪の想像は当たらなかったので幸いだが…
よかった…
でもなんだあれは?というかなにが起こったんだ?
「ふぅ…やっと仕留めた」
反対側、先程音がした方だ
そこには彼がいた
「智昭くん!」
「功一!“ソイツ”に近づくなよ!」
“ソイツ”とは例の影人間だ
智昭くんは猟銃のようなものを構えたまま俺の前へ来た
って…
「銃!?」
「あぁ、なにがあるかわからんからね… 何そんなに驚いてんの?」
驚くに決まっている…
銃を持っていることがすでに驚愕だ、しかもそれを友人が手慣れた感じで使いこなすというのは実に信じがたい…
まさか… これ…
「あの…さっきくれたこのケースって…」
「銃だよ、それはレバーアクションだけど… え、なに知らなかったの?」
知るわけねぇだろう… 旦那ぁ…




