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異世界ライダー  作者: 燃焼リング
第1章 異世界入門
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第11話 ソフトスポット

… 


俺の名前は水橋功一


年齢は27歳


明日彼女がプロポーズを受けてくれたらいよいよ結婚だ


仕事はしがないトラックドライバー


どこにでもいる普通の中年なんだが…



「出してくれ!なんなんだよ!俺はなにもしてないぞ!」


「うるさいぞ!静かにしろ!

 コイツ… 急にべらべら喋るようになりやがって、何があったんだ?」





数時間前



「え… は… ?」


「言葉の通りだ“君”を奴らに突き出してその間に我々で逃げる」


一体何を言っているんだ?

俺を助けてくれるんじゃなかったのか?


裏切られた…のか?

コイツらにとって俺は所詮道具かなにかでしかなかったのか… まぁそうだろうな


俺は斉藤に絶望に満ちた憎しみの目を向けた



「“君”というのは、この“世界”の君のことだ、勘違いしないでほしい」


なに?


え…俺?


「この世界の俺?」


「そうだ、見たまえ…」


斉藤はそう言うとベッドのシーツを剥がした

そこには…


俺がいた…


そう水橋功一がそこにいたんだ

これはさすがに呆気にとられた… この“俺”は眠っている、薬でも打たれたのだろうか…


「彼はこの世界の水橋君… 君だ、この水橋君はこの世界で生まれ育ちこの世界のルールに乗っ取って生きてきた、君であって君ではない」


つまり斉藤はこう言いたいのだ

俺の脱走の替え玉としてこの水橋功一を差出してその間に逃げようと


確かに… 適任かもしれない… 

俺なんだからな、しばらくバレないだろう

でも、こんなの… 


確かに複雑だぞ… 自分を売るのか?

正直キツいぜ、いい気分にはならない


「待ってくれ!じゃあこの俺が俺の代わりにあの実験受け続けるのか!?この俺にも生活があるんだぞ!」


まさに、他人事とは思えないというやつだ

俺は斉藤に反対の意思を示した


「確かに… だが彼はこの世界の人間だ、明日には不幸な被害者として出してもらえるだろう」


「だからって!」


「会社、家族、友人、恋人、すべてに対して国が根回しをしてくれるだろうね… 多額の示談金と共に」


そー…なのか?


「むしろ前よりずっと裕福な生活ができるよ彼は、国家機密に振り回された不幸な男ということでね」


「ちょっと待ってくれ、それはつまり…」


じゃあこの俺は残ってる支払すべてを終わらせて親孝行もして

いるか分からないが彼女に結婚を申し込み、金の都合で挙げるつもりのなかった結婚式を盛大に挙げて

新婚旅行は海外に行って

家を買い、子供ができたら習い事とかさせて… 

ついでにバイクも車も買い換えちゃったりして…


「俺より幸せじゃないか…」


「だろう?」


本当になるんだろうな?

確認をかねて俺は斉藤に念を押したが、これは間違いなくなるらしい…


そうか…


吹っ切れた俺は忌々しい病院着を脱ぎ捨て斉藤から元の服を貰い、着た…


そして景子さんが寝てる方の俺の服を剥ぎ、病院着を着せてるのを見て何とも言えない気持ちになった…

ていうかこの人さっき銃殺とかしてたのにマジでメンタル半端じゃないな…

現場で見てた俺も大概だけども




そんなわけで

本当の水橋功一こと俺は、今斉藤の車で移動中だ…


空は相変わらず赤いが、シャバの空気が実に最高だ

この世界の俺よ… 

一攫千金のためにしばらく耐えてくれよな…


さて…

「追っ手の心配はいいとして… これからどこへ?」


「この世界から出る、そのためには… “ソフトスポット”に行かなくてはならない」


ソフトスポット?

初めて聞く名前だ


「なんですそれ?」


「その名の通り“柔らかい場所”のようなものだよ、例えば君はどうやってここまできたか覚えているかい?」


どうやって来たか…

俺は思い出し、それを話す


峠でバイク事故を起こし、誰もいない世界で変なおやじに会い

ぐちゃどろの空間に入る… 焦った俺はパニックを起こし気が付くと空が真っ赤なこの世界へ…


「フム…少し予想と違ったが大体説明は付くな、君が事故を起こした近くにソフトスポットがあったんだ、偶然そこに接触して次元の壁を越えてしまったんだろう…」


なるほど… よくわからんがやっぱり山にはいろいろあるってことだろうな…


「じゃああの不思議空間とおっさんはなんなんです?」


「“溝”と言われたんだろう?私は“中間世界”と呼んでいるよ、それは町であったり大きな建物…例えば学校や病院だね、希に自分の部屋が急に中間世界に変わりしばらく気付かないこともある」


俺の時は住宅街だったな… 中間世界か…

「次元の境界にあるため“溝”であり“中間”と呼ばれている」斉藤はそう言った

世界から世界へ、中間を通り越えて異世界入りする者もいるが…

俺のように中間に入った人は大体おっさんに返されるんだそうだ

もっとも… 俺はそこからこっちに入ったわけだけど…


おっさんだが

「彼らのことは私にも一概にこうだと説明はできないんだ… ただ、認識の違いでどんな風にも見える」


つまり俺が見た時は作業着ハゲ中間管理職オヤジに怒鳴り散らされたが、認識を見直せば景子さんみたいなお姉さんに「メッ!」てされるように変わるということか…

明確に正体がない… たしかに説明ができんな


「なにか大きな力を持った存在かもしれないね…」


そう言った斉藤の言葉には含みがあるように感じた

だがぐちゃどろのことは本当になにもわからないらしく、予想ではおっさんの移動手段に通じるものではないかとのことだ…


「いろいろいっぺんに起こりすぎて混乱してきた…」


「まだ聞きたいなら向こうで話そう、さぁそろそろ到着だ」



田舎… なかなか自然に囲まれたとこだ


斉藤は古く荒廃した小さな駅の前に車を止めた

第一章 異世界入門 終


次回

第二章 異世界放浪

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