階級の説明
「やっと起きたか。元人間」
ぼんやりとしていた視界がだんだんとハッキリしてくる。
しかし、私の顔を前のめりに覗き込んでいたのは家族でも友達でもなく俺様野郎……千尋だった。
「その呼び方はやめて…… それよりここはどこ?」
「ん?俺の家?俺の部屋?俺の寝室?」
何故全てにクエスチョンマークが付いているのか。
ま、そんな事はどうでもいいのだが。
「どうして貴方の家の貴方の部屋の貴方の寝室なの。他に場所はあったでしょ」
「まぁ、そうなんだけど。お前からする人間の香りが低級妖怪を無意識のうちに集めてしまって面倒だから俺の匂いが一番強いこの部屋に連れてきたんだよ」
「人間の香り…?貴方たち妖怪は人間を食べるの?」
月光や千尋もそうなのだろうか。
妖怪は人間を食べないのだと勝手に思い込んでしまっていた。
「そんなに怯えるな。半分正解で半分は不正解だから。人間を食べる妖もいるが、俺の家にいる奴らは人間を食べない」
よ、よかったぁぁぁ。いつの間にか固まっていた身体の力が抜けていく。
「そんな事よりお前、名がないのだろう?思い出すまで『密』と名乗れ」
「密…?」
「そうだ。お前は元人間だ。人間が生きたままこちら側に来ることは不可能。俺が何を言いたいかわかるな?人間だった頃のお前の心臓はとうの昔に止まっている」
嘘だ。私は死んでなんかいない。
死んでいるのに感情も感覚もあるわけがない。
「……妖怪の生まれ方は3種類ある」
急に何を話し出すんだ。妖怪の生まれ方なんぞ知りたかねぇよ。
「……妖怪は、モノの感情・思いから生まれたヤツ、自然現象の歪みによって生まれたヤツがいる。そして最後は……誰を知らない」
「は?」
ついマヌケな声を出してしまった。
「なんで誰も知らないのよ。」
「妖怪には大きく分けて階級が4つある。始祖、上級、中級、下級。そして、これらのどの階級にも当てはまらないのが『稀少種』。そして未だに誕生の仕方が不明なのが稀少種だ」
あー、話が長い。面倒くせぇ。
と言うかこの話、いつ終わるんだ?
「千尋、私は『どれ』?」
「恐らく、稀少種」
「証拠は?」
そう。証拠がないのに稀少種だと決めつけられるのは少し癪にさわる。
「突然俺の領地内に現れたこと。俺の結界が発動しなかったからな。月光に見に行かせたが何の損傷も見当たらなかったらしい。そして、もう1つ。まあ本命はこっちだな」
じゃあそれだけ言えよ。最初から。
回りくどい言い方してんじゃねぇよ。
「お前の容姿」
「バカかお前。妖怪には様々な容姿のヤツがいるって私に教えたのは千尋だろ?なのにどうして容姿で決まるんだよ」
密のイライラは最高潮に達していた。
「あー、そんなにイライラすんなって」
「態度に出てた?」
「おーおー、バッチリ出てたぞ」
「早く話せよ…!」
「お前は男か。もっとおしとやかに出来んのか」
「余計なお世話だ」
「ハハッ、可愛気がないな。まあ話の続きをすると、稀少種の特徴として『黒髪』『オッドアイ』『人間の容姿』があるんだよ。外見には、な。それの全てがお前に当てはまるんだよ」
確かに、外見が人間じゃなかったら直ぐにおかしいと気づくはず。
オッドアイになっているとは想像もしなかったが。
「まあ、貴重な稀少種の赤ん坊を拾ったんだ。大切に育ててやるよ」
この時の千尋の顔は嬉しそう、と言うより悪巧みをしている子供の顔に見えたのは密だけではないハズ………
読んだ事ある。そう思った方、申し訳ないです。
私の勘違いでこんな事になりました。