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 今日もとても天気がいいです。

 すべての準備が整い出発することになった一行はただいま外道をのんびりと進んでいます。

 私と共に聖国ファーミルへと行く旅路に付いて来て下さることになったのは、女性のほうがどこにでも共に行けるということで一の御姉様と、外交に慣れた三の御兄様。

 そして年が近い者ということで年子の七の御兄様でした。

 この四人で初めての旅です。

 そして私たち個人個人に付く侍女、侍従に護衛。

 それに全体の護衛と荷物の番や馬車を操る御者達がいるため総勢五十人以上はいるとても大きな師団で私の初めての旅が始まりました。

 

 まあ国の端までは転移の魔法を使うことが許されているので実際の旅の日程はとても短いものなのですが、転移を使い国を跨ぐことは出来ないので昼前に端の街に移動して準備を整えました。

 一番国の端に位置する街から聖国ファーミルの一番端の街へ入るには太陽の時が過ぎてから出発しても花の時が終わる前には到着します。


 勿論転移を使うには教会や街などの許可やそれ相応の費用などが掛かりますが、決められた場所に移動する時にはとても重宝されています。

  

 そして転移の技術が確立しているとはいえ国境を越えてしまえば侵略と取られかねないため国同士では使えません。

 なので国から国へと移動する道も勿論整備されています。

 今回使っている道は比較的安全に行き来できるとはいえ魔や盗賊などがまったく出ないとは言えない、この時代はそんな時代なのです。

 これだけ周りを固められていてもそれでも最低限の数、少数精鋭の部隊なのです。

 そして商いをする者たちにとっても街から街、国から国へ移動することは常に危険が付きまといます。

 そのため今回私たちの団の旅に続くように沢山の商人の者たちが後に付き従っているため、聖国ファーミルへと行く実際の旅路はとても大規模な集団になっていますした。

 下手をすると小さな村一つの大規模集団になっているため襲ってくるものはよっぽど自信のあるものか少し楽観的なものくらいでしょう。

 なので何の問題も起きないとても長閑な旅路を満喫しています。

 ええ、そう旅路自体はとても長閑なのです……。


「だ~か~ら!! 絶対この衣裳着て恥じらうアルのほうが可愛いってば!!」

「ふん、何言ってるのよ。分かってないわねエランは。アルは何を着ても可愛いのは当たり前よ!! け、ど!! 絶対この服着て胸元とか裾とかを気にして恥じらうアルのほうが男どもを悩殺すること間違いなしだわ!!」


 馬車の中にいるのは私たち兄妹だけなので誰かの目を気にする必要はなくとても楽です。

 ですが何故私が乗っている馬車の中は色とりどりの服が錯乱して一の姉様と七の兄様が言い合いをしているのでしょう?

 それも私が聖国ファーミルに入る時に着る服のことで。

 これはもう泣いてもいいでしょうか?

 私が処分するように言った筆頭のはずの服を一の御姉様は持っていますし、七の御兄様もまた違う服を持っています。

 それ私が着ないといけないのですか?


 一の御姉様が持っている服は胸元が大胆にカットされ、胸元の下で紐で結んだ形をしています。

 足首まであるスカート部分はシースールーを何枚か重ねていて、パッと見た感じはそんなに抵抗はないのです。

 なのですが、この服特に際どい所はスカート部分なんです。

 シースールーを何枚を重ねてできているこの服を留めているのは胸元の下で結んでいる紐だけで、両脇ががら空きなのです。

 動くと重ねた布がひらひらと揺れ中が見えてしまうのです!!

 下着という概念がまだ浸透していないこの時代、中が見えてしまうイコールぽろりどころか裸を見られるんですよ?!

 そんな服を着るなんてありえません!!

 だからこそ一番に処分リストに入れましたのに何故それを一の姉様は持っているのですか?!


 それに七の兄様。

 何ですかその服!?

 言ってしまうと胸当てとビキニじゃないですか!!?

 飾りがついてじゃらじゃらしてますけど布の面積まったくないじゃないですか?!


 二人の持っている服を見て慄けども白熱する二人を止められる気が一切しません。

 だってこれ、昼の休憩が終わり出発した直ぐ後くらいから始まっているのですよ?


 国の端の街から国の端の街までの道のりは丁度半分半分ほど。

 だというのにもうすぐ国境の関所に到着するのにずっと言い合っているのですよ?

 私には止められる気がしません。

 あと、何で三の御兄様はまた違った際どい服を私に手渡してこようとするんですか?

 私はそんな服とは呼べないようなものは着ませんからね?! 


 一の御姉様と七の御姉様とは違い、にこにこと笑う三の御兄様と私は無言の攻防を繰り返していましたが不意に馬車の動きが止まりました。

 もう関所についたのでしょうか?

 そう思っていたら外から馬車の扉が叩かれ外から団の隊長の声が聞こえてきました。


「歓談中申し訳ございません。そろそろ国境に差し掛かりそうなのですが、国境付近に聖国ファーミルの使者と思われる者たちがいるようですが如何いたしましょうか?」


 今回の団は私が公の場初の公務ということと、教会の依頼を受けている当事者ということで未成年でもあるにも関わらず代表をしています。

 勿論代表とはいっても大事な部分や危険なことがあると判断されれば御兄様や御姉様が前面に出ることになっていますので名ばかりと言えばそれまでの代表なのですが、はったりも必要だと母に押し切られてしまいました。

 そのため私付きの護衛隊長が団の責任者も兼任しています。

 隊長の声がいつもよりも少し硬いのが気にかかり馬車の扉についている小窓を少し開け、詳しく話を聞こうとしたら三の御兄様が先に小窓を開けてしまいました。


「人数は?」

「五人ほどです。うち文官と思われる者が二名とその護衛と思わしき帯剣している者が三名。他には聖国ファーミルの者で武装している者は国境警備に立つ者のみで他に隠れている者の影は見られません」

「何か接触は?」

「今のところありません。ですが護衛と思われる者の一人が我が国側にて待機しております」


 三の御兄様も小窓から外を覗き警戒をしているので、反対の小窓から外からわからないようにそっと覗き国境へ視線を向けました。

 隊長の言う通りそこには私たちと共に来た隊商とは違う民たちから浮いてしまっている一団がいました。 

 まだまだ関所を通る時間としては日は高い位置にあるのでそこまで人も多くないのですが、旅慣れた商人や冒険者たちは、綺麗な服を着ただけの旅装束でないその一団に何事かという視線はむけるけれども足早にその場を避けるように去っていきます。


 使者を立てるという話は出ていなかった筈なのに一体何があったのでしょうか?

 三の御兄様の指示で関所近くにいる使者の近くまで馬車を進めるようでした。

 外からわからないように動く馬車の中から見つめていると、隊長と護衛の一人が少しだけ速く馬車の前を走り、それに続いて何かあった時に対処できるようさり気なく護衛の配置が変わっていきます。

 その様子をみてもし万が一にでも何かがあればすぐ対処できるようにと己の心を気を引き締めなおしました。


「突然失礼する。そちらはシャルバン国より来られた第三王女殿下の馬車とお見受けするが如何か?」


 相手もこの馬車が誰の物であるのか分かっているようで、微かに聞こえてきた尋ねる言葉に迷いがるようには思いませんでした。

 ですが誰何すれども己の素性を話さない人物にどう答えるのか隊長が答えあぐねていると、一人国境のこちら側にいた騎士は隊長の下に近づき何か白い紙を渡しました。

 隊長はその表面を軽く検分すると副隊長にその紙を手渡します。

 そして副隊長はその白い紙を持って馬車まで来ると馬車の小窓から三の御兄様へその白い紙を手渡しました。

 

 三の御兄様は渡された紙、白い封筒の表裏を私たちにも見えるよう確認すると何も言わず封を開けます。

 蝋で止められたその封筒の蝋の部分には、これから行く聖国ファーミルの紋様がしっかりと刻まれており何か悪い知らせでもあったのかと不安が胸を襲います。

 

 どきどきしながら三の御兄様を見つめていると、不意に顔を上げられました。

 その表情は少し険しく眉間にしわが寄ってしまっています。

 一体何があったのでしょうか?


「何があったの?」

「聖国ファーミルの王から秘密裏に会談をしたいとの申し込みがきました」


 私たちを代表して一の御姉様が尋ねると嫌そうに三の御兄様が答えますが、もともと一度王宮で会談する予定なのにどういうことでしょう?

 

「アル、今言った通り王自ら会談を今夜開きたいと申し込まれましたがどうします?」

「どう、といいますと?」

「一応今回の代表はアルだからねどうしたいですか?」

「どう、といいましても王自らの打診ですと断れませんですよね?」

「まあ、そうだけどアルが初めての遠出だということは向こうも知っているだろうから体調を理由に断ることも出来るよ」


 確認をされましたが、王自ら打診された会談を断ることなんてよっぽどの事がなければ失礼ですのにそんな事を言うなんて三の御兄様は嫌なのでしょうか?


「ですが直ぐに合うことになるのですし少し先延ばしにしたところでは何も変わりませんですよね? なら、どんな思惑があるにしろその御申出御受けするべきではないでしょうか?」

「直ぐ会うからこそ態々前倒しで会う必要もないとは思うけどね」

「もう、七の御兄様!!」


 嫌そうな三の御兄様の言葉に反論するのは心苦しいのですが、何か思惑があった場合なるべく早く知っておきたいという気持ちもあるので会うことを提案します。

 するとそれを七の御兄様が面白くなさそうに言うので抗議の意味を込めて見ましたら顔を反らされてしまいました。

 もう、何が御二人とも気に入らないのでしょうか?


「もう、二人とも大人げないわよ。アルが困ってるでしょ? ほら、早く返事をしなさい」 


 御兄様御二人の態度にどうしたらいいのか分からず困っていましたら一の御姉様が三の御兄様に返事をするように言ってくださいます。

 その言葉で渋々ながらも三の御兄様は待っていた副隊長に是という返事を伝えて下さいました。

 三の御兄様の言葉を聞いた副隊長は軽く一礼をすると隊長の所へ駆けていき隊長へと言伝を伝えてくださいます。

 

 副隊長の言伝を聞いた隊長が相手の方へ話をすると、聖国ファーミルの方はこちらの馬車に向けて頭を下げられました。


 その後隊長と何事か話をすると、こちらに背を向け国境に待つ一団へと掛けていかれました。

 きっと返事を届けにいったのでしょう。


 走り去る方を見た後隊長もこちらへ来てこの後の予定を軽く話してくださいました。


 

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