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 御母様を納得させられるだけの反対意見を出すことができず、私は『元・旦那様(候補)』の通う学園へ何故か行く事になってしまい私はその準備に追われることになりました。

 ですが一国の姫が軽々しく他国に赴くことができるわけもなく、持っていく荷物から始まり同行してくださる方々の選別が慌ただしく振り分けられています。

 そして後何故か私についていくのは誰にするかと御兄様と御姉様たちの間でも苛烈な話し合いが起こっているのが気になるのですが今は諦めています。

 残念なことに未だこの世界で一人前と認められる年齢に達していない私は一人で行く事を皆に反対されてしまったのです。

 住んでいる宮から出たことがなく世間知らずなことも理由の一つでしょう。


「アル様今日はずっと動きっぱなしですし少し休憩しませんか~?」

「あれ、もうそんな時間ですか? ではお昼にしましょう」


 他国へ行く準備なんて何を持っていけば良いのか分からなかったのと、この機に要らないものは処分してしまおうと思いたってしまったので上へ下への大騒ぎになってしまっていたところにサデアの根を上げた声が聞こえてきたことでやっと太陽が真上まで来てしまったことに気が付きました。

 そういえばお腹もすいてきましたし少し疲れた気もします。


 手は出させてはもらえないけれど侍女たちと共に荷物の仕分けをしていたので本来なら主に口を動かしていた私が疲れるなんてことないはずなのに、いつの間に用意されていたのか分からないほど多くあった際どい衣裳を持っていく持っていかないとの攻防が続くとは予想外でした。


 私の侍女たちは皆気立てがよくて性格もいい子ばっかりだというのは前から知ってはいましたがやんわりした口調で言い募られて何枚か持っていく荷物の中に紛れ込まらされてしまいました……。


 絶対にあの服は何があってもきないように気をつけなければいけないと心の中でチェックを入れておきます。


「だけど変われば変わるものね……」

「何がですか? アル様」


 御昼の御食事を頂いた後サデアにお茶を入れてもらいながら、数週間のうちにあった変化を思い出してため息をついてしまい慌てて周りを見まわしてしまいました。

 サデアが不思議そうに問いかけてきますがその近くにシスがいなかったのでほっと息を吐き出しました。

 サデアはあまりマナーに対して厳しくはないのですが、その分シスのマナーに対しての厳しさは高く、自室以外での態度に対してはまったく容赦がありません。

 私にマナーを叩き込んで下さった先生もこの国屈指の淑女ではありますが、それよりもその厳しさが尋常ではないことのほうが有名な方なのです。

 その分良き学びを身に着けることができましたがその方に手放しで褒められるマナーを身に着けたシスはその方の気性も受け継いでしまったのかとても厳しいのです。

 時々本気でちょっと泣きそうなほどです。


「いえ。今まで私の周りにいたのは女性ばかりでしたのに、破棄すると御話を頂いた後は警備の方や他の方々にも男性が付くようになりましたでしょう? その、何といいますか皆様御年は違えどもそれぞれとても素敵な方ばかりで気恥ずかしいといいますか……」

「ふふ。確かに今まで婚約者がいたことで秘されていたアル様を間近で御世話できることになってから皆アル様の美貌にメロメロですもんね!!」

「もう!! そんな冗談を言って茶化さないで下さいサデア。私は真剣に悩んでるんですよ?!」


 楽しそうに話すサデアですがその様子はどこかからかいを含んだものだったので抗議の意味も含めて拗ねているのだと分かりやすく横を向くことで示しました。

 

 私よりも少しだけ早く生まれたサデアは着易く接してくれる数少ない人物でもありますが、それが行き過ぎてよく人をからかってくるのが玉に瑕です。


「も~からかってないって言ってるのにアル様はまったく信じないのはなんなんですかね?」

「もう、何言ってるのよ。そんなことよりサデア。私は何故急に傍で御手伝いをしてくれる方が入れ替わったのか知りたいのです。勿論国を出る時驚かないようにという配慮もあるとは思いますが、それにしても半数以上の異動があるのは何故なのでしょう?」


 食後のお茶はいつも周りに誰もいないテラスなどを使っているため今日も声が届く範囲にはサデアしかいないので疑問を口にします。


 この国の季節に冬のように凍えるほど寒い時季がないので南国の草花が庭に咲き乱れ見る者の目を楽しませてくれていて疲れた心を和ませてくれます。


「ああ、それは沢山の要請があったからです」  

「要請?」

「はい。今回の騒動は王様も正妃様も隠されなかったのですぐに宮勤めの者たちにも知れ渡ったんです。今まではこの国の結婚とは別の結婚観の場所に嫁がれるということで男性との出会いは固く規制されていたのですが、それも破棄されたと王自ら発言されたのでそれを聞いた未だ独身の者たちが少しの可能性を求めて立候補してきたんですよ~」


 楽しそうに話すサデアの話は立て板に水を表す様にすらすらと続いていますが、要約すると王家の姫に気に入られてあわよくば王家の仲間入りをしたいということでしょうか?


 すべてがすべてそんな人ではないと思いますがやはり身分があるというのも大変なのですね。


 今回学園へ行く名分として真偽の確認だけでなくこの国で確認されていない魔の確認と教会への査察が含まれています。


 査察。

 そう驚くことに見学や視察でなく査察なのです。

 この国の成り立ちが古いことは今まで施されてきた勉強で分かっていましたが、未だ手つかずだった教会の総本山が実は我が国にあったことにびっくりしてしまいました。


 まだまだ魔の物に対抗するのが難しかった時代、教会の発端になった宗教がこの国で出来てその分派が巡り巡って今の『聖国ファーミル』を起こしたのだと言われているらしいのです。

 勿論その真偽は定かではありませんが建国を手伝い今なお両国の国交があるということは王家と教会の上層部では語り継がれている事実としてあります。

 他国との兼ね合いや我が国では他国よりも強い魔が発生しやすいためその点から干渉されることを嫌いそれを知るのは成人を迎えてからしか教えられないそうです。

 私も本来であればもう少ししないことには教えられなかったそうなのですが急遽ファーミル国へ行く事になったため教えられました。


 一国の姫でしかない私が知っていても知らなくてもあまり関係はなさそうですが、元々教会へは新しい防御を司っている宝玉の魔力を注ぎに行かなければいけないらしいので言ってしまえば壮大なおつかいです。

 そう聞くと何かむず痒いものを感じますがまあ初めての外なので妥当なところなのでしょうか。


「そういえばアル様休憩の後に今回随行する護衛の人たちの紹介をされるそうなので楽しみにしてくださいね~」

「そう、では後は誰が一緒に行くのか決まれば出発なのね……」


 そわそわしてしまいそうになる心を落ち着けるためお茶を一口口に含み一息入れているとテラスに続く部屋の中から来た侍女がサデアに何事かを耳打ちしました。


「アル様護衛担当の隊長と副隊長が挨拶に来たみたいですが御通ししてもいいですか?」

「ええ。ここに御通しして」


 私がそういうと侍女は一礼して部屋の中へ戻っていきました。

 今までは不思議に思わなかったけれど私付きの専属の者は直接話しかけることができるのにそれ以外の人は私付きの侍女経由でしか話しかけられないことが徹底されています。

 仕来りや意味などあるのでしょうが、これからは少しでもその点も緩和されるといいですね。


 人が入ってくる前に服装が乱れがないかと確認をしてクッションの位置を直していると二人の男性が部屋付の侍女に案内されてきて私のと少し感覚を開けて跪きました。

 

「御初に御目にかかります姫様。卑小な存在である我らでは御座いますが御身に姿を晒す無礼、どうぞ御許し下さい」

「私の為によく来てくださいました。我が国の勇敢なる戦士である貴方方を何故卑小などと思いますでしょうか。どうぞ貴方方の御名前を御教えくださいませんでしょうか」

 

 様式美とはどの国にもあるようで、口元が引きつりそうになるのを何とか意志の力で抑え込みました。

 下の者が上の者へ対して無礼だと怒りを買わないためなのも分かりますし、形式を用いることで上の者が普段は気安く言えない感謝を伝えられるいい機会でもあるのですから羞恥心が込み上げてくることには目をつぶり紹介してくれる二人の騎士に意識を向けました。


 この国の兵士の装いは動きを重視しているため心臓を守るための胸当てくらいしかつけていない。

 上はそんな胸当てだけで惜しげもなくその肉体美を晒していて下は布を巻きつけた姿をしています。


 この国は基本的にナイフや剣を使う戦いをしないのでそんなに無防備で大丈夫なのかと心配にはなりますがそのぶん腕や首などにつけられる守護の守り飾りがあるから心配しなくてもいいのでしょう。


 一人は歳は二十代後半くらいでしょうか?

 もう一人はそれよりも若そうなので良くて二十代前半かしら。

 二人とも若いけれど筋肉がしっかりついて前線を張る方々だということが分かります。

 お二人とも女性におもてになるんでしょうし、同行する侍女たちはまだ独身の子が多いからきっと帰る頃には何組かカップル出来てるのかしら。


 そう考えると今回の御出掛けも良いものの気がしますわね。

 普段はあまり私付きの侍女たちは出会いがないですから少しでも良い切っ掛けにでもなれば帰国してからでも仲良くなれますしね。

 そう思うと用事が終わって国に帰る時が楽しみですね。




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