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一章<俺曰く惚れた女が最優先>

 「ほーん、今回は一目ぼれパターンか…」

 突発的な告白だったにもかかわらず竜也はリアクションが薄い。一生懸命パック飲料のいちごオレを余さず吸い込もうとしている。

 俺と竜也は、入学式も顔合わせのホームルームも終わり、学校近くの河原で午後いっぱいという時間を存分に持て余していた。

 「いやだってよ、黒髪ロング清純派の先輩はいつだって正義だろ!もうなんかお手本をそのまま現実に映し出したみたいな人だったぞ」

 俺は完全に興奮状態だった。

 「お前そんな状態でまともにホームルームできたのか?」

 「おうよ、クラスから好奇の視線を集めまくりだったぜ。何人か話しかけてきたくらいだ」

 自慢げな俺にようやく興味がわいたみたいで竜也が尋ねてきた。

 「ほう?どんな感じにだ」

 「『すごいね!もう生徒会に入る気満々なんて!』ってもうそれはちょっとした人気者だったな」

 「お前それは色目立ちしたというんだバカ。つまりお前は自己紹介で生徒会に入るつもりです!なんて馬鹿かましてきたんだな?」

 呆れながら満足するまで飲み干した紙パックをつぶす竜也。

 ははーん、俺の人気具合に嫉妬したのかな?

 「そりゃもう明日から生徒会はいる準備するつもりだし」

 「お前入学する前まではかわいい子がいる部活をがむしゃらに頑張る!なんて言ってたの覚えてるか?」

 はて、いつぞやの話だろうか

 「大して変わらなくないか?それに生徒会なんて一度時期を逃すと入れないぞ。やるなら今だろ。思い立ったが吉日だ」

 「やらない後悔よりやった後悔ってやつか?それは総じて成功した人間の発言だからな」

 寝転がって雲を数える俺とやれやれと首を振る竜也。この空気はもう今まで何十回も繰り返されてきて飽きたというより慣れたものだ。温かい春風が吹き抜けていくのがどこかぴたりとはまるような光景だった。

 とそこに聞きなれた声が降ってきた。

 「こんなとこで油売ってたの?帰らないの?」

 「お、瑞貴じゃん。お前こそこっち帰り道じゃないだろうに」

 俺は見上げるも

 「そうだぞ高嶺ー、お前も暇だったんだろどうせ」

 顔すら動かさず茶化す竜也。

 「せっかく一緒に帰ろうと思ってあんたたちのクラス見に行ったらどっちもいないから探しに来たのになんなのその言い方!」

 きれいにまとまったポニーテールを振り乱してぷんすか怒るのは高嶺瑞貴<たかみねみずき>。俺たちは中学からの付き合いだ。クラスもずっと同じでいつもくっついていろんなことをしてきた

 「だってよー、大志がまーた恋をしたなんて鼻息荒くいってくるもんだからよ」

 「またぁ!?浮気というか心が浮ついてるというか、あんたその性格早く直しなさいよ…」

 目を真ん丸にして風見にじとっと視線を振る瑞貴。少し怒気も混ざっているような気がして川上は小声で「おーこわ…」などと言っていた。

 「いんや一目惚れは本能だぜ?従わずしてどうするよ。この人が俺にとってドストライク!ってなったらそりゃ疑う余地ないだろ」

 むふーっと鼻から息を吹き出しながらドヤ顔で言ってやった。

 「なんであんたがそんな得意満面な感じなのかは意味わからないどころか気に食わないんだけど…」

 こめかみに青筋を浮かべながら震える瑞貴。

 「てかんなことどうでもいいから腹減ったしそろそろ飯行こうぜ。平日の昼に外食できるのも今日くらいなもんだぜ。しばらくは校内だからな」

 話題を変えるように竜也が誘うが瑞貴は気が済まないようでまだ不貞腐れている。

 「…全然どうでもよくないのに」

 「飯かー、なんかめっちゃ腹減ってるしガッツリ行きたいなぁ」

 瑞貴が何か言っていたような気がしたが腹が減っていたので全く気に留めなかったのだが、視界の端で竜也が呆れたようにため息をついていたような気がした。



「んで、うちの高校って生徒会に入るのどうすればいいんだっけ?選挙?それとも申請?」

 結局凝った店を探すのもめんどくさかった俺たちはファストフード店に入ってバリューセットを頼んでほおばっていた。がっつりしたものが食べたかった俺は肉が三重に重なった期間限定のボリューム自慢のメニューにかぶりつきながら肝心な質問を二人に投げかけた。

 「お前そんなことも知らずに生徒会に入るとか言い出したのかよ…。普通の選挙だよ。ただし、競う相手がいなければ信任投票の後に生徒会長と面接になる」

 「いや、あたしもさすがにそんなに詳しく知らなかったわ…。逆によく知ってたわね」

 マジでなんでそんな詳しいんだ…。選挙管理委員と友達にでもなったのか…。

 「いや、入学資料に書いてあったし…。信任投票はともかく会長との面談なんて採用方式はなかなかないからな」

 まぁ信任投票なんてほとんどの生徒が何も考えずに信任に丸をして提出してしまうから、変な奴が生徒会に入らないようにするための措置なんだろうな…。

 「にしてもそこまで資料熟読してる新入生お前しかいねぇだろう…。春休みよほど暇だったのかよ…」

 「失礼な…、どっかのバカが急に生徒会にいる女の子に惚れたりするんじゃねえかと思って目を通しといたらマジに起きちまったんだよ…」

 「三年間の経験が生んだ悲しい予測ね…」

 うつろな目でポテトをほおばる竜也を同情するような目で瑞貴が慰めていた。

 「さすがといえばいいのやらわかんねえけどおかげさまで明日から行動に移せそうだ。サンキュー竜也」

 「マジでやるのか?たとえ失恋したとしても三年間ついて回る役職だぞ?中途半端にできねえのわかってんだよな?」

 「竜也。こいつが半端に物事やったことないの散々見てきたでしょ、いうだけ無駄よ」

 だからさっきから俺を置いてけぼりで予定調和について話すみたいにするのやめてくんないかなぁ。まぁ言われてるとおりなんだけどさ。

 「んなダサいマネはしねぇよ。まぁ動機は不純かもしれないが入るからには職務をきっちりこなす、その辺は心配すんなよ」

 「わかっちゃいるけど一応ってだけだ。まぁ、中学時代の感じから言えば無事に生徒会生活が済むとは全く思えないけどな…」

 「あー、まぁそれはそうよね…」

 「いやマジお前らどんだけ俺のことわかってくれちゃってるんだよ。安心しろって。今回が最後だ、俺だってそろそろ落ち着きたいしよ…」

 齢15でそんなに振られっぱなしでいられるかってんだ。今度こそ俺は意中の相手と結ばれてそれはもう絵にかいたような青春をだな…

 「んー、こういっちゃなんだがお前の場合は振られるのが青春って感じだな」

 「あ、それ言えてる!」

 「さすがに俺でもキレるぞおい」

 始まる前から振られる話をされながら飯を食うとはまぁなんと飯のまずいことか…。店内を流れる子供向けメニューとコラボしているアニメの主題歌が空しく胸に響いた。なーにが妖怪のせいだ。俺が振られるのも妖怪のせいなの?そうなの?一大事だよマジで。

 そんなこんなで、俺のめでたい高校生活初日はジャンクフードをかっ食らって終了した。

 二人と別れた後の帰り道、これから生徒会に入るにあたってどうするか考えてみた。

 とりあえず高校生活最初の恋は生徒会長というなんだか王道みたいな感じになったけれど、いいじゃないか王道。俺は踏破してみせるぞ、王の道。まぁとりあえず信任を得るとこから始めないとな…。

 …そういえば女の子目当てなのにマニュフェストなるものを書き上げることはできるだろうか。俺この学校どうしたいとか全くないぞ、だってまだ一回しか通ってないもんよ…。しいて言えば会長とイチャイチャしたいってだけだわ。それを祝福してくれればいいよ。うーん、その辺竜也に丸投げするか、なに、一回飯奢れば書いてくれるだろ。何とかなるって。

 そんな感じで特に何も決めずに家に着いたから考えるのをやめた。


 

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