11月26日 土曜日 sky
学校に着くと、何故か麻里がいて、鈴野達とはそこで別れることになった。
何か楽しみにしてなさい、とか言って鈴野達は去ったが、俺と真奈はなんのことか分からず、見合ったが、真奈が目を反らしたので、教室に向かうことに。
まあ、そしたら何故か崎間と岡部に捕まったんだがな?
そしてそのまま連行された。
真奈は今から店をしなければならないらしい。
やむなく別れることになった。
2時間程学園祭を連れ回されて、教室に戻ると、普段の制服に着替えた真奈が慌てて駆け寄ってきた。
「裏央!講堂に行くぞ!」
「は?ちょ、まて!引っ張るな!」
周囲の視線を集めながら、俺は真奈に引っ張られて講堂に連れて行かれた。
ノワールも空中を余裕で走ってる。
便利だな。
「ハア・・・ハア・・・間に合った~」
「なんだよ一体?なにかあんのか?」
「裏央・・・何で息切れしてないの?」
「別にこれくらいはな?それで、何があるんだよ?誰もいないぞ」
講堂には客が本当に誰もいなかった。
普通無いだろ?
学園祭なのに講堂で何もしないってのは・・・。
「うん、誰も知らないから。みんなは外のイベントを見てる」
「知らない?」
スケジュールに無いとかか?
『裏央、真奈』
突然マイクを通して鈴野の声が聞こえた。
ステージの方を見ると、垂れ幕が上がっていき、そこに鈴野達、skyがいた。
『今日はあなたたちの為にライブを開催するわ!
精一杯演奏するから思いっきり楽しんで!
行くわよ、みんな!ワン、ツー、スリー、フォー!』
始まったのはskyのデビュー曲である、「遙かな空」。
俺が一番好きな歌だ。
鈴野はギターを思いっきり演奏し、本当にたのしそうに歌い、安藤と桐野もそれに続いている。
普段大人しい赤坂でさえ、人が変わったようにドラムを演奏している。
その歌声は、とても綺麗だった。
本物の演奏は、ヘッドフォンを通して聞くのとは比べものにならない程の迫力があった。
俺も真奈も、ノワールでさえ、熱心に聞いて、知らないうちに体がリズムを刻んでいた。
やがて、演奏が終わる。
『裏央・・・アタシたちと会ってくれてありがとう。あの日に会ってなかったら、アタシ達は今ここにいなかった』
『あなたと会ってからは、楽しいことがたくさんあったわ。初めて会った時も特別扱いしたりしないで接してくれたことは嬉しかった』
『わたし達も、まだまだとは言え、街なんかを歩いていると囲まれたりすることあって、嬉しい反面困ってもいました』
『あの時、あそこに来たのが裏央で良かった。わたしたちはそう思ってる』
鈴野、安藤、桐野、赤坂の順でそれぞれの思いを言ってくれた。
『これからも、いつも一緒に学校にいられる訳じゃないけど、よろしくね?』
人差し指をビシッと突き出してにっこりと笑う鈴野。
安藤達も笑っている。
赤坂も。
隣では真奈も。
だからだろうか?
「ああ。もっと楽しくしていこうぜ?俺たちでな?」
俺も笑いながらそう言っていた。
ライブはすぐに終わってしまったが、俺たちは満足していた。
「ほら!裏央!真奈!次はあっちに行きましょうよ!」
「ちょっと!次は私の番でしょ!」
「ええ!わたしも早く回りたいです!」
その後、俺と真奈は鈴野達に引っ張り回され、赤坂は俺の制服の裾をきゅっと掴んでいた。
途中で由香と葵も加わって、やたら大所帯になったが、今日は素直に楽しいと思えた。




