11月25日 金曜日 夜 真奈
学園祭1日目は、朝の一件以外は問題なく進んだ。
裏央と恵理ちゃん、2人と帰ろうと思ったけど、裏央は用事ができてしまったみたいで恵理ちゃんと2人で帰ることになった。
軽い夕飯を食べて、先生達が帰ってくるのを私の部屋で待つ。
暫くして、扉が開き美奈先生と涼子先生が帰ってきた。
「ごはん食べますか?」
「ああ、頼む」
「はい」
ちょっと待っててくださいね?と言って、台所に立ち、ごはんを作って2人に持って行く。
先生達はお礼を言ってくれて、その後食事を始めた。
約30分後。
先生たちも食べ終わり、食器を片付けて、
「3人とも、話を聞きに来たんですか?」
と問う。
3人が頷いたのを確認して、私も座り
「話自体はすぐに終わりますからね?」
一応、そう言っておく。
「え~っと・・・いきなり重いかも知れませんが、私が学校にいる間の様になった原因は父の死でした。5年前に病に伏して、そのまま他界したんです」
「5年前、ということは小学6年くらいの時だな?」
「そうです。その後、お母さんが私と姉を女手一つで育ててくれたんですが、3年前に無理が祟って倒れてしまい・・・そのまま・・・。そしては姉は多分、姉も3年前だったかも知れません。ある日の朝、手首から血を流して死んでいました」
「そんな・・・」
恵理ちゃんが口元を抑えた。
たったこれだけの話で目にはうっすらと涙を溜めている。
「辛くなかったの?」
美奈先生が不意に聞いてきた。
「もちろん辛かったですよ・・・何せ、2人で頑張って生きていこうって約束した次の日に死んでしまったんですから・・・その日は、1日中姉の冷たくなった体に縋り付いて泣いていました」
「ま、家族が死んで悲しまない奴なんかいないだろうな・・・あいつは分からないが」
「・・・・・・」
そのあいつと言うのが誰なのかは、この場にいる私たち全員が分かっていた。
でも、今はそれは関係ない。
「それで、何故学校ではあのような言葉遣いにすることにしたんだ?」
私が思うのと同時に涼子先生が聞いてきた。
一つ頷いて私は話し始める。
「気丈になっていないと、心が保たない。それだけです。気付いたら学校などにいるときはあの様な言葉遣いになってしまいました・・・いえ、違いますね。家でも話す人がいないから結局はどこにいても同じでした」
「そういえば、初めて一緒にごはんを食べた時もそうでしたね?」
「うん・・・でも、今は裏央の前でなら前の私に戻れる。みんなの前でも・・・。
初めてそれを感じたのは、授業をサボった時でした」
「ああ、私がお前の弁当お食った日のことか?」
「そうです。教室に帰る前、私は裏央の肩を借りて寝ていたんですけど・・・妙に心が落ち着いたんです。家族の夢をみることもできました」
「・・・じゃあ、その時から真奈ちゃんは裏央くんのことが好きだったのかしら?」
「ぁ・・・そうですね。でも、もしかしたら会った時から好きになっていたのかも知れません///」
顔が赤くなっているのが分かる。
「それにしても、私たち全員が同じ奴を好きになるなんてな・・・よくもこうして同じ場所に揃ったもんだ」
「そうね・・・おもしろいわよね?そういうの」
「お兄さんの力なんでしょうかね?人を惹き付けるっていうか・・・」
「うん。みんな裏央を中心としてるんだよね。由香さん、葵さん、亜紀ちゃん、魅沙ちゃん、沙羅さん、莉子さん。みんな・・・」
「そうなんだろうな・・・麻里がどうかは分からないが、まあ、この面子が意外と飽きない」
涼子先生の言葉に私たちはみんな笑った。
本当に、みんなでいると楽しいことばかりだから。
そして、それは全部裏央のお陰だから。




