4月20日 水曜日 2
もうすぐ昼休みが終わるという頃になっても彼女は戻ってこなかった。
机にはまだ、彼女が手を着けていない弁当がポツンと置いてある。
仕方無く俺は彼女を探しに向かい、何となく居るのではないか?と感じる方向へと向かって進んでいくと蹲り、声を殺して泣いている彼女を見つけた。
どうして泣いているのかなど、俺には関係も無いから、
「そろそろ授業が始まるぞ?」
それだけ言った。
「ふえ?」
彼女は間抜けな声を出しながら顔を上げた。
彼女の目には涙が溜まっていて、それは今も止まることなく流れ続けている。
「どうして、ここに?」
突然彼女が聞いてきた。
「いつまでも弁当を放置されてると困るんだよ。脂っこい物は苦手って言ったろ・・・見ているだけでも気分が悪くなるんだ」
「・・・あはは・・・それは酷いな。今日のは結構自信作だったのに」
「あんたの自信作だろうと何だろうと、俺に取っては迷惑だ。
食うか、片すかしてくれ」
乾いた笑いを浮かべてそう言う彼女に返すと、
「君が食べれば良かったのに・・・」
と言ってきた。
「はあ・・・この短時間で同じ説明を3回もさせる気か?あんたは・・・」
「本心だよ。君に食べてもらいたいと言う思いも確かにあるんだ・・・私には」
「はいはい。・・・しょっと」
「?何をしているんだ?」
少し離れた位置に腰掛けた俺を見てそう聞いてくる彼女。
「何を言っても動きそうに無いからな。授業も面倒だし、俺はここでサボることにする」
ヘッドフォンを掛けて音楽を流しながら目を閉じる。
彼女が動く気配は無かった。
俺同様にサボるつもりなのかも知れないが、まあ彼女の場合勉強は出来るのだから問題ないだろう。
キーンコーンカーンコーン・・・と午後の始業告げる鐘の音が校内に響いた。
少し離れた位置に腰掛けた彼はヘッドフォンを付けると目を閉じながら堂々とサボる宣言をした。
私はそんな彼を見て、彼同様サボろうかと思った。
そして直後に始業を告げる鐘が鳴る。
今から言っても完全に遅刻だ。
弁当はどうしようか・・・放課後にでも片付ければいいだろうか?
もしかしたら誰かが食べてしまったかも知れない。
それは困るな。
今日の弁当はさっきも言ったが彼にも食べてもらおうと思っていつもより気合いを入れて作ってきたのに・・・。
彼にはあっさり流されてしまったが、あれは本当に本心だ。
だが、脂っこい物が苦手とは・・・観察していた筈なのにテンションが上がっていて気づけなかった。
彼の弁当箱には本人が言っていた通り、野菜が中心で肉類はウィンナーが少しあるだけ。
明日は野菜で攻めてみようか?
うむ、そうしよう。
そしてふと気づく。
さっきまで胸中を渦巻いていた感情がすっかり消えていることに。
何故か今は酷く落ち着いている。
さっきまでの悲しみがまるで嘘のように、酷く静かだ。
「君のお陰なのかな?これは・・・」
彼の方を見ると、
「・・・スゥー・・・スゥー・・・」
穏やかな寝息を立てていた。
本格的にサボる様だね?
「それじゃ、私も寝ようかな?
・・・・・・寝てるよね?」
もう一度彼の方を見て寝ているのを確認し、そっと肩に頭を乗せて目を閉じた。
こんなに近くで人の温もりを感じたのは・・・本当に久し振りだな。
小さな頃は4人で一緒に寝ていたっけ?
またお父さん達のことを思い出したけど、今度は悲しくなることは無くて、
「ぽかぽかする」
暖かくなった。




