11月25日 金曜日 学園祭開催 プチ怖い話
本日11月25日金曜日。
学園祭が始まった。
今日は生徒だけで行い、明日と明後日は一般の人間も参加することが出来る。
俺は朝からやたらテンションの高かった真奈と妹に半ば無理やり起こされ、強制連行された。
『裏央、お前が思っているより、学園祭は楽しい物だぞ?』
『年に一度の学園祭。思いっきり楽しんでおいで?』
涼子と美奈に連れて行かれる際にそう言われたが、どうしたもんか・・・こういうのを楽しみ方法を俺はもう忘れてしまっているからな。
妹は着いて早々に屋台やら何やらを見に行き、真奈は午前中にメイドをやるから結果的に俺はノワールと教室で戯れることになった。
「なんや、佐久間?考え事か?」
「崎間・・・いやな?学園祭を楽しむにはどうすれば良いかを考えているんだ」
メイド服(多分、一般的な型の)を着て、何の前触れもなく現れた崎間にそう言うと、やりたいようにしたらええ、と何とも単純な答えが返ってきた。
だが、それもそうか・・・考えても分からないんだからな。
「み!」
ノワールも同意みたいだ。
にしても、メイドの数がえらく少ないな?
真奈・崎間・岡部と後は知らない奴を入れて6人。
今はこの人数で足りてるが、盛況ぶりを考えると足りない・・・まだ来てないだけならいいが・・・。
ぼんやりそんなことを考えていると、
「なあ、君この後暇?俺らと遊ばねえ?」
何とも典型的なナンパの台詞が聞こえた。
見ると岡部が数人の男子に絡まれている。
周りを見てみるがやはりと言うか何というか、誰もが気付いている筈なのに一切助けようとはしない。
「「やめろ(やめんか)!」」
この2人を除いては、だけどな。
真奈と崎間が男達にそう言って岡部を助けようとしたが、男達はそれでも余裕の表情を浮かべている。
どうせ、女2人でどうにか出来るとは思っていないんだろうな?
席を立ち、気付かれないように男達に近づく。
「!」
気付いた岡部に向かって口に人差し指を当て、静かにするように指示する。
目だけで肯定する岡部。
「なに、君たちも混ざりたいの?いいよ、大かん「馬鹿だろお前」ぶはっ!」
何ともめでたい思考の持ち主だなと思いながら背中に蹴りを放つ。
良い具合に入ったな。
運良く机などは巻き込まずに倒れてくれたので助かった。
準備結構面倒だったからな・・・。
「いってぇ~・・・何すんだ!てめえ!」
蹴り飛ばした男が立ち上がった。
他の男達も心配してか駆け寄る。
何だ、結構仲間思いなんだな?
自分が良ければそれでいいタイプだと思っていたが。
「うん?苛ついたから蹴った。ナンパなら他でやってくんないか?この3人には先約があるんだ」
「はあ?俺らにそんなこと関係ないっての!お前ら!」
男がそう言うと他の男3人が俺を囲んだ。
なんか展開が可笑しくなってるな?
ここは一応普通の学校なんだが・・・まあ、いいか。
「1人に4人で掛かってくるなよ・・・ノワール?」
「み!」
呆れながら呼びかけると、肩から跳び一番近くにいる男の顔を引っ掻いた。
「いってえ!なんだ今の!」
急に顔を押さえて痛がり出した男を見て他の奴らも驚いている。
その後他3人の男を何度も引っ掻くノワール。
一旦俺の肩に戻ってきたノワールの顎を撫でながら、
「お前ら知ってるか?」
と問いかける。
『?』
多分男達だけじゃなく全員がなんのことか分からないだろうな?
「以前暇があった時にこの学校について調べてみたんだがな?この教室に以前猫が迷い込んだことがあったらしい」
『え!』
それだけで何人かは今起こったことが分かったみたいだ。
「その猫はとても衰弱していたんだが・・・迷い込んだのは夜。勿論人なんかいるわけがない。その猫は翌朝、最初に来た生徒に発見されたが既に息を引き取っていた」
『・・・・・・・』
「ここまでなら、それだけか?と思おう奴もいるだろう。だが、この話はここからなんだ」
少し声のトーンを変えて言うと、クラス中から息をのむ音が聞こえた。
「その猫を見つけた生徒はどうしたと思う?」
「・・・埋めたんじゃないのか?」
別に聞いた訳ではないのだが、男の1人が律儀に答えてくれた。
「そいつが善良な心を持っていたのならそうしただろう・・・・だが、その生徒には嫌いな物があったんだ。分かるだろ?そう、猫だ。その生徒は幼い頃に何匹かの猫に囲まれ体中を引っ掻かれた。それがトラウマとなっていて、以来猫を見るだけで体が震えるようになってしまったんだ・・・」
「じゃあ・・・その生徒は猫を」
「――――踏み付けた」
『――――っ!』
誰かが言った言葉に続けて言うと、クラス中から驚いたような声が上がった。
「見ただけで怖くなる、と言ったが、そんな状態でその猫が生きているかどうかなんて確認出来るわけがない。生徒は猫の体を何度も踏み付けた。ここまで言えばもう分かるだろうが、とりあえず最後まで
言わせてもらう。
それ以来、その生徒の周りではおかしなことが起こるようになったんだ」
『・・・・・』
律儀に聞いてくれているこいつらに、お前ら暇なのか?と思ったのは秘密だ。
ノワールなんか寝てるし。
「通学中道をふさぐように何度も猫が横切り、学校ではノートや教科書が何かに引っ掻かれたようにビリビリに破られていた。夜寝る時はいるはずのない猫の鳴き声が聞こえ、確認してみてもやはりどこにっも猫はいない。可笑しいと思わないか?その生徒は猫を見るだけで、震えるんだ。勿論家族もそのことは知っている。ならば猫を飼うなんてあり得ない・・・にも関わらず部屋からは猫の鳴き声が聞こえるんだ」
よく考えたらこの話全く怖くないな・・・まあ、いいか。
最後まで行こう。
「声は日を追うごとに多くなり、終いには耳元で聞こえてきた。何とか寝ても夢の中でまで猫は出てくる。生徒にとってはまさに悪夢だ。やがてそれは落ち着いて来たが、生徒の精神は危ない所まで来ていた。心配した両親は病院に連れて行ったが、診察を待っている時に生徒はまた鳴き声が聞こえた。出所を探して当たりを見回していると、急に腹に違和感を覚え、視線を下ろすと―――」
雰囲気だけでも作ろうと思い、最後を溜める。
「――――腹から猫の頭が出ていたんだ」
『きゃーーーーーー!!』
女子が数人叫んだ。
誰も結末とこの教室が関係していないことに気付いてないのか?
「・・・じ、じゃあ・・・さっきの引っ掻かれた様な痛みは・・・」
「ああ、その猫の怨念がこの教室には溜まっていてな?むかつく奴は片っ端から引っ掻いているいるんだ。いつまでもここにいると・・・・・・目玉抉られるぞ?」
『うわあああああ!!』
言った途端に漫画みたいな逃げ方で逃げていった。
「まあ、全部はったりだが」
ガシャン!!
「ん?」
何かが倒れるような音がして見てみると教室の至る所で生徒は転けていた。
「裏央!雰囲気ありすぎ!」
最後に真奈につっこまれた。
「まあ、おもろかったけどな?」
「とりあえずサンキュ」
崎間に礼を言っておく。
ふう、しゃべり疲れた。




