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俺と私  作者: 大仏さん
33/50

8月15日 月曜日 肝試し 下


美奈・麻里ペアが出発して約10分後、葵たちが戻ってきた。

それを確認して俺も出発する。


後で真奈が


「絶対帰ってきてよ~」


とか言っていたが、気にせず進んでいく。



墓地の奥へと進んでいく途中、所々で草むらが揺れたり何か発光体の様な物が浮いていたりしたが、気にせず進み続けていると、


「「きゃああああああ!!」」


と先方の2人が叫び声を上げた。


まあ、帰ってくる途中だったみたいで俺に気付かず走り去っていったが・・・何か出たりでもしたのかね?

俺の周りには現在も色々在るぞ?


発光体に頭に矢が突き刺さっている奴や、胸に剣が刺さっている奴、それに黒猫。


ん、猫?


思い直して正面に浮いている黒猫を見る。


「お前も死んでるのか?」


『み~』


肯定するように頷いた。


ま、成仏出来なかったとかそんな所だろうな。


「捨てられたのか?」


また頷く。


「恨んでるか?」


今度は横に首を振った。


「これからどうする?」


考え込むように開いていた蒼い目を閉じた。


霊になったからなのか、それとも別の要因か、こいつは人の言葉をハッキリ理解しているみたいだ。

でなければこんな反応はしないだろう。


やがて閉じていた目を開き、猫は俺の額に


『みっ』


と短く鳴きながら前足を当てた。


「そうか。もしかしたら他の奴にも見えるかも知れないから、あまり怖がらせるなよ?」


『み!』


肩辺りの浮いたまま空中を歩くように移動してしていき、数分後。

墓地の奥について真奈達が置いて言ったハンカチを持って、来た道を引き返した。


その途中で黒猫に名前を付けた。


「どこの国だったかは忘れたが、黒を意味するノワールはどうだ?」


『みっ!』


どうやら気に入ったみたいだ。


俺とノワールはその場でなんとなくハイタッチする。


なんで霊に触れるんだ?とか思ったが、細かいことは気にせず皆のいるとことに戻った。




「戻ったぞ~」


「あ、裏央!おかえり!何もなかった?」


真奈が出迎えてくれて、続いて皆も集まってくる。


それぞれにハンカチを返しながら


「猫を拾った」


と言うと、全員が何処に?と言った感じの表情をした。


見えてないみたいだ。


「まあ、その猫は死んでいて、『は?』何か未練でもあるのか?」


『・・・・・・み?』


「なんとなくか?」


『み!』


「みたいだ」


「え、ちょっと待って、裏央」


鈴野が恐る恐ると言った感じでそう言った。


「もしかして・・・その猫って・・・幽霊?」


「ああ。今もこの辺にいるぞ?」


右肩辺りを指しながらそう言うと赤坂以外が一瞬硬直してそのすぐ後に叫びながら駆けだした。


残ったのは俺とノワールと赤坂。


「別に怖くないんだが・・・赤坂は怖くないのか?」


「慣れてるから。ねえ、その子って触れるの?」


「ああ、どういう訳か分からないがな?ノワール」


『み~』


呼ぶとそれだけで分かったのか赤坂の顔の前まで下がった。


赤坂が的確にノワールの頭の位置に手を持って行ったことから、本当に視えていることが分かる。


霊とはいっても地縛霊じゃ無かったようだから、俺たちはそのまま宿へと戻った。

道中赤坂とノワールは終始じゃれていた。


珍しく笑顔だったから、猫が好きなのかも知れないな。







ただでさえ怖かったのに、幽霊が出るなんて。


なんで裏央は平気なの?


ていうか裏央に怖い物ってあるの?


宿に全力疾走で戻って部屋に駆け入ってみんな息を整える。


それから何分か経って、裏央と魅沙ちゃんが戻ってきた。


魅沙ちゃんがなにか抱えている様に腕を胸の前で組んでるけど、そこには何もあるようには見えない。


「魅沙、なにか持ってるの?」


亜紀ちゃんも同じことを思った様で私より先に聞いた。


「ノワール」


ノワール。


確かフランス語で黒を意味する言葉だよね?

それがどうしたんだろう?


「赤坂、それじゃ分からねえって・・・さっき、言ってた猫の名前だよ。黒いからそう付けた」


「え?・・・あの、もしかして魅沙さんも幽霊が視えるんですか?」


恵理ちゃんの質問にこくんと首肯する魅沙ちゃん。


亜紀ちゃん達とマネージャーさんが驚いていた所を見ると知らなかったらしい。


「ま、害なんて無いからな?怖がる必要はないぞ?」


そう言いながら魅沙ちゃんの組んでいる腕の少し上辺りに手をおいて撫でるように動かす。


なんだかそれが妙にリアルに見えて確かにそこにいるんだな、って思った。




それから私達はお風呂に入ってご飯を食べた。


その時に裏央が丁度いいからと言って皿にのっていた魚を小さく取ってから手のひらに乗せて頭の上に持って行った。


みんなが見ている中、魚は消えた。


『え?』


魅沙ちゃん意外が何が起こったのか分からずに声を上げる。


「さて、今食ったのは誰だ?」


裏央が謎かけをするように問いかけて来て、沙羅さんが答えた。


「ノワール?」


「正解」


確かにそれしか考えられない。

裏央は手をずっとその位置から動かさなかったし、落ちた様子もなかった。

にも関わらず魚は消えた。


単純かもしれないけど、だからこそすんなり認めることが出来た。


「俺と赤坂はどういう訳かこいつに触れることが出来るが、お前達はどうか分からん。だが、さっきも言った通り、害はない。こいつも俺たちの言葉を理解しているみたいだからな。後、今のを見て分かったと思うが、こいつはこっちの物に触れることが出来る」


「あ、そっか。食べたってことはそういうことだよね」


納得。


それからはまたゲームなんかをして、眠くなった所で寝た。


今度は裏央は1人で。


「あ、違うか」


正確には1人と1匹だ。



何はともあれ、住人が1匹増えた訳だ。



そんなこんなで私たちの海水浴は最終日を迎えることになった。



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