8月15日 月曜日 肝試し 上
寝ていたのだが、何故かすぐに目が覚めてしまい真奈達を探していたんだが、どこを探しても見つからなかったから宿へ戻ると、部屋から話し声が聞こえた。
襖を開けるとそこには全員いた。
「・・・裏央」
真奈が俺を見ているが、別にいいか。
「なにしてんだ?」
俺も中に入り適当な所に座り聞くと、涼子が俺の話をしていたことを教えてくれた。
そんな話聞いても時間の無駄にしかならんぞ?
「それで、話は終わったんなら海に行こうぜ?明日には帰るんだからな?」
「そうだな・・・ほら、みんな、さっさといこう」
涼子がそう言いながら立ち上がり、皆も続いて部屋を出て行った。
そして最後に真奈が残った。
「行かないのか?」
「裏央・・・ごめん。勝手に話して」
真奈が頭を下げた。
「話す話さないはお前の自由だ。俺の話を聞くのも聞かないのもな」
別に聞かれて困ることなんかないし、ハッキリ言ってどうでもいいんだよな・・・俺の話を誰が聞こうが。
「・・・ねえ」
「なんだ?」
「裏央はまだ、自分が生まれてこなくて良かったって思ってるの?」
そんなこと聞いてどうするんだ、とは思ったがまあいいか。
「思ってるよ・・・多分、ずっと変わらないだろうな」
「何があっても?」
「さあな・・・劇的な何かがあれば変わることもあるかも知れないが、早々ないからな」
そもそも、そんなことが日常的に起こったりするなら誰も日常に飽きることはない。
そんなことが起こらないから自分で何かを始めるのかも知れないな・・・そこに何を求めているのかは分からないが。
「例えば?」
「アパートが破裂するとか」
「ないから!」
「ナイスツッコミ。ほら、行くぞ?」
すかさず突っ込んできた真奈に満足した俺は先に部屋を出た。
後から真奈が慌てて追いかけてきて、なんか言っていたが全て受け流して浜に向かった。
「なあ、真奈」
「なに?」
浜についてシートの上で寝ている保護者組に、あいつらがどこに行ったのか聞いたが、分からないと言うので探していたのだが・・・。
「これくらいで良いんじゃない?」
「ダメ、もっと」
鈴野に見守られながら赤坂が穴を掘っていた。
それはもうザックザックと・・・。
俺たち全員が入っても、まだ余裕あるくらいだ。
よく掘ったな?
「この穴、何に使うと思う?」
「え~っとぉ・・・」
右手の人差し指をあごにちょんちょんと当てながら考える真奈。
「裏央を埋める?」
「何故?」
「いや、何となく・・・でもいいんじゃない?これも劇的な何かだよ」
「一歩間違えたら死ぬぞ?」
「その辺は・・・なんとかなるって」
アバウトだな。
少し離れた所では由香達が砂で何か造っていた。
しかし、あれだな・・・由香は体が小さいから、この画が妙にしっくりくる。
葵たちが姉に見えても不思議はないな。
「おっと。スコップを投げるな」
「なんか失礼なこと考えてたでしょ!」
飛んできたスコップを受け止めて横では真奈が、由香の後では葵たちが拍手しているのを聞きながら言うと、離れていても心が読めるのかベストタイミングでそう言ってきた。
「失礼なことなんで考えてないぞ?」
「じゃあ、何を考えてたの?」
「砂遊び似合うな・・・って」
「子どもってこと!?」
「誰も言ってないのに自分で言うってことは、それなりに自覚があるってことだろ?」
「ぐっ・・・」
由香達の所に近づき何を造っているの聞くと、5人が思い思いに砂を寄せ集めてそれを形にすると何が出来るかということをしているみたいだ。
浜で砂遊びと言ったら俺は城が真っ先に出てくるんだけどな・・・。
実際造ってる奴いるし。
結構なでかさがある。
「まあ、いいや・・・なあ、赤坂は何してるんだ?」
「ああ、なんか浜に来てすぐに掘り始めたんですよ。最初はお兄さんを埋めるのかな、と思っていたんですけど、どうやら唯掘ってるだけみたいです」
「なんでお前も真奈も同じこと考えるんだよ?」
「いえ、皆さん思ってましたよ。ね?」
『うん(ええ)』
俺なんかしたか?
それから暫くして赤坂が穴から出てきた。
よくあの高さを登ってこれたな?
それで、上にどこから持ってきたのかシートを被せて更にその上に砂を掛けて・・・って。
「落とし穴かよ。誰を落とすつもりなんだ?」
「もちろんアンタに決まってるじゃない?」
そうですか・・・とりあえず気を付けておこう。
慣れているのかどうかは知らんがかなり上手い。
ちなみに言ったのは鈴野な。
あ、鈴野は泳ぐ時は髪をポニーテールにしてる。
民宿ではストレート。
「裏央・・・落ちたら上がってこれないよ?」
「そうね・・・あたしは絶対無理。魅沙ちゃん、よく登ってこれたわね?」
「運動は得意」
「そういう問題か?」
落ちないように気を付けんがら保護者組の所に戻って適当に色々話ながら時間を潰した。
昼にはまた昨日と同じ所で飯を食って、午後は俺が砂に埋められた。
顔は出してるが・・・
「暑い」
陽の光がガンガン当たってる。
真奈達はそんなことも露知らずと言った感じでどんどん俺を埋めていく。
そして崩してまた固める。
それを飽きもせず繰り返していた。
夜になり、桐野の提案通り俺たちは肝試しをすることとなり、現在グループ分けを行っている。
結果は以下の通り。
真奈・妹・鈴野
涼子・桐野・由香
葵・赤坂・安藤
美奈・麻里
俺
どういう訳か俺だけ1人になった。
くじを引くと残念とか書かれていてちょっといらついた。
ま、肝試しのルールは簡単で、墓地の一番奥まで行ってハンカチをおいてくる。
そしてそれを最後の奴が全部もって帰ってくる。
最後は俺なんだが・・・。
というか順番は組み合わせを発表した順だからな。
つい今し方葵たちがスタートした所だ。
それなら俺がまとめてじゃなくて交互に置いてくる、持ってくるを繰り返せばいいと思うんだけどな?
「裏央くん・・・ここって、出るらしいよ?」
「幽霊か?」
「ええ。しかも毎年結構な人数が目撃しているみたいよ?今の所は大丈夫みたいだけど」
麻里がそこまで言った所で真奈達は戻ってきた。
様子からみるに何も起こらなかったみたいだ。
怖がってはいるが・・・。
主に真奈が。
雷が苦手なのは知ってるが、ホラーも苦手なのか。
「りお~・・・怖かったぁ~」
ふらふら~と俺に抱きついてきた。
「よしよ~し」
まあ、適当に頭を撫でておく。
すると妹まで撫でてくれと言うので空いている方の手で撫でた。
「それじゃ、行ってくるわね?」
「裏央君?ちゃんと側にいるのよ?」
「分かってるよ」
「ならよし」
そう言って美奈・麻里ペアは墓地を進んでいった。
本当に何も起こらないと良いがな・・・。




