4月20日 水曜日
学校が始まってそろそろ2週間。
特に何も
「よし、弁当を食べようではないか!」
あった。
彼女は先週の火曜日から突然俺と飯を食い始めた。
理由をきこうかとも思ったが、面倒だから止めた。
1週間経てば人間たいていのことは慣れる物だ。
俺に向けられるクラスの奴の視線も含めてな。
最初は単なる気紛れだと思っていた。
すぐに終わると。
だが、そうはならずまだたった1週間とはいえ、こうして今日も彼女は自分のいすを、俺の机の横に持ってきて座り弁当の包みを開け始める。
これもすっかり見慣れた光景。
違うのは毎日変わる弁当の包みと中身だけ。
今日の包みは青を基調として、周りには白で花が彩られている。
昨日は白を基調としたもの。
一昨日は緑を基調としたもの。
覚えているのはそこまで。
「今日はこの唐揚げが自信作なんだ。どうだ?食べてみたいくないか?」
「別に」
「む、唐揚げは嫌いか?」
「というより脂っこい物は苦手なんだよ。俺の弁当も野菜とかが多いだろ?」
「おお、言われてみれば」
言いながら弁当箱の蓋を開けて中身が見えるようにする。
俺の弁当は魚や野菜が中心で肉類は端っこにウィンナーが2本ほどあるだけ。
彼女の弁当はさっき言っていた唐揚げ等が中心で、俺は食べる気が全くしない。
正直言って見ているだけで気分が悪くなってくる。
昨日、一昨日も同じ様な弁当だったが、今日は油物が多いから尚更だ。
話は変わるが彼女は自分が好きみたいだ。
弁当を俺の席で最初に食べ始めた時に言っていた。
その時、俺は自分が嫌いだと言った。
「それにしても、自分を嫌うとは・・・哀しいと思わないのかい?
折角この世に人間として生を受けたのに、『嫌い』だなんて・・・親御さんも悲しむぞ?」
「望んで人間として生まれた訳じゃないし、俺に親はいない」
「っ・・・それは「謝ったりするなよ?」え?」
「俺は家族がいないことに対して、特に何も思っていない。
それなのに、謝られたりしたら迷惑だ」
「そうか・・・ちょっと飲み物を買ってくるよ」
彼女は席を立ち教室を出て行った。
「茶ならいつも持ってきてるだろ・・・」
俺はぽつりと呟いた。
『家族がいないことを何とも思っていない』
彼はそう言った。
確かにそんな人間は居るだろうが、おそらくその殆どが虚勢だろう。
本心ではいつも泣いているのかも知れない。
目を見ればホントかウソか少しくらいなら分かるが、彼は違った。
本当になんとも思っていなかった。
まだ会ってたったの2週間程度だが、いつもの目と違うことくらいは分かった。
「・・・お母さん、お姉ちゃん」
思い出すと涙が溢れてきた。
ペタンとその場に座り込む。
私にも家族はいない。
5年前にお父さんは病気で他界し、残された私たちをお母さんは無理をしながらも育ててくれた。
だが、その無理が祟って3年前に倒れそのまま目を覚ますことは無かった。
お姉ちゃんはある日の朝、起きたら手首から血を流して死んでいた。
訳が分からなかった。
前日に2人で頑張って生きていこうって、約束したばかりだったのに・・・。
「ぅ・・・おかあ・・・さん・・・お姉・・・・ちゃん・・・お父さ・・・ん」
誰もいないことを確認して来た場所だから声を上げて泣いても多分バレはしない。
それでも、どうしても声を抑えてしまう。
「そろそろ授業が始まるぞ?」
「ふえ?」
突然声を掛けられて反射的に顔を上げるとそこには彼がいた。




