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俺と私  作者: 大仏さん
24/50

5月9日 月曜日 出会い 

ピクニックが終わってアパート帰って、妹の様子を見てから自分の部屋で眠り、翌日からは特にイベントなども無く時は流れた。


強いて何かあると言ったら学校で由香が俺といても不機嫌な顔をしなくなったことくらいか・・・。


バイトも順調でゴールデンウィークは・・・まあ、騒がしかったな。


特に風が治った妹のテンションがやたら高くて。


俺は殆ど毎日あの丘に行っていたが。


そんなこんなで今日はゴールデンウィーク明けの学校だ。


面倒だな・・・いっそのことずっと休んでいたい。


そんなことを言うと真奈に怒られる訳で、何故かそれを葵と由香にも報告して電話を代わってまで


「さぼりは駄目よ?」


とか


「ば~か」


とか、ってちょっと待て。

何故馬鹿だ?


まあ、結局さぼることは叶わず今日も学校へ向けて歩き、着いたら殆どの授業を寝て過ごし昼休みは俺、真奈、葵、由香、涼子、美奈の6人で保健室で飯を食う。


ああ、そう言えば最近真奈達はよく一緒に遊んだりする。


ゴールデンウィークに出かけてたりしてたからな・・・妹も一緒に。


帰って来た時の様子からして楽しかったのは間違い無いだろうが、どこか物足りない様な顔をしていた気がするが・・・どうなんだろうか?




昼休みも終わり午後の授業も終わって、今日はバイトは俺は休みだから暇つぶしにあの丘に行くことにした。



ピクニック以来あの丘が好きになった。


誰も来なくて静かで・・・音楽を聴くにはもってこいの場所だ。



なんてことは考えながら丘を登っていきもう少しで木に到着すると言うところで、なにやら話し声が聞こえた。

声からして女子みたいだ。


数は・・・3~4人くらいか?


「ま、いいか。邪魔にはならんだろう」


木の所まで行ってみると、その女子グループの一人が俺に気付いた。


他の3人もそれにつられてこちらを見る。


「あの・・・何か用事ですか?」


そう聞いてきたのは小動物を連想させる小柄な少女。

赤みがかった茶色の髪を肩に掛かるくらいまで伸ばしており、瞳も赤い。

制服から見るに4人共、どこか別の学校みたいだ。


「アタシたちの情報が漏れたとか?」


と言ったのは長身のすらりとした女子生徒。

長い黒髪を黄色いリボンで縛りツインテールと言うのか?そんな髪型にしている。

瞳も黒だ。


「もしかしたら追っかけ?」


これは最初の少女とさっきの女子生徒の中間くらいの身長の女子。

髪はふわふわしていてウェーブが掛かっている。

色はクリーム色とでも言えばいいのか?

瞳は翡翠?そんな感じの色だ。


「・・・・・・」


そして最後に何も言わない無表情の女の子。

身長はこちらも中間くらいだ。

髪はなんか猫みたいな形してる。

色は蒼。

目の色も蒼だ。




「skyのメンバーか」



声から何となくはそうだと思っていたが、顔を見てハッキリした。


「あら?アタシたちのこと知ってるのかしら?」


「ああ、あんたらの曲好きだしな」


「あ、ありがとうございます!」


「嬉しいわね」


「・・・・」


やはり無表情。

俺も人のことは言えんが。


「とりあえず自己紹介くらいしておくよ。俺は裏央」


「りお?変わった名前ね?」


「そうか?別に気にしたことは無いけどな」


ハッキリ言って名前なんかどうでもいい。

呼び方なんかも勝手にしてくれていいしな。


「アタシは鈴野亜紀すずのあき。ボーカルとギター担当よ?」


「亜紀ちゃんがするならしない訳にはいかないわね。

私は安藤沙羅あんどうさら。ベース担当」


「え、えと・・・わたしは桐野莉子きりのりこです・・・サイドギターをしています」


「それで、この無表情っ娘が・・・」


鈴野が猫少女の名を言おうとした時、


赤坂魅沙あかさかみさ。ドラム」


とだけ言った。


なんか3人は驚いているが、どうかしたのか?


「ちょ、2人とも!」


「私も驚いたわよ・・・魅紗ちゃんが自分から名乗るなんて!」


「今までこんなことありませんでしたよね!?」


「騒いでる所悪いが、お前らここにはよく来るのか?」


俺の問いに興奮が収まったらしい鈴野が答えた。


「え、ええ・・・ここは滅多に人が来ないから休むには絶好の場所なのよ。前は誰から居たけど、それからは見てないわね」


多分真奈達だな。


「こんなに景色が良いのに、誰もここまで来ようとしないなんて・・・お陰で休むことができるけど、皮肉ってこういうことを言うのかしらね?」


鈴野は俺の後の景色を眺めながらどこか悲しそうにそう言った。


「それは俺も同感だな・・・結局人ってのは今見ているもので満足しちまう奴が殆どなんだろう」


「・・・どういうこと?」


安藤が聞いてきた。


「新たな物を見ようとしないんだよ。そこまで視野を広げることができないのか、初端から拡げようと思わないのかは別としてな・・・多分、無意識だと思うが・・・。


少し拡げるだけで・・・こんな景色が見られるのにな?」


「じゃあ、りおさんはどうしてここに?」


「以前来て以来、ここが好きになったんだよ・・・お前らだってそうなんだろ?単に人が来ないって理由だけなら、もっと別の場所だってあるからな」


「・・・確かにそうね。アタシたちもこの場所が好きだから来てる」


「ま、それを邪魔する訳にも行かないから俺は帰るよ。じゃあな?」


背を向けて丘を降っていこうとしたら、


「ねえ」


と赤坂に呼び止められた。

振り向くとまたも3人が驚いている。


「なんだ?」


「今度はいつここに来るの?」


何故そんなことを聞くのかと思ったが、別にいいかと思い答えた。


「そうだな・・・バイトが無ければ、多分毎日くると思うぜ?」


「そう」


と短く返事をして、それからは何も言わなかった。


「ついでにお前らに言っておくぞ?」


「何かしら?」


「無理はするな。仕事柄厳しいとは思うが、俺はお前らの曲を楽しみにしてるんでな?そんじゃ」



俺は今度こそ丘を降っていった。



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