4月30日 土曜日 ピクニック その2
裏央がバイトの助っ人に行ってからも、私たちはピクニックを続けていたけど、さっきまでの楽しさは感じられなかった。
由香さんは清々するみたいなことを言っていたけどなんとなく物足りなさそうで、先生達は明らかに不満装だった。
私だってそうだ。
昨日の朝から楽しみにしてたのに・・・恵理ちゃんだってそうだった。
でも、タイミング悪く風邪を引いてしまって今は部屋で寝ている。
結局裏央がいないまま、時間は流れて、4時頃になった時、私は我慢できなくなってお弁当を片付け始めた。
先生達はそんな私を見て不思議に思ったのか何をしているのかと聞いてきた。
「裏央といたいんです。皆さんだって裏央がいないとつまらないでしょう?」
そう言うと涼子先生と美奈先生はすぐに頷いた。
なんでも人の生徒を勝手に借りるなだそうだ。
裏央はあなたの物でも無いのですが・・・いや、今は言うのは止めておこう。
先生たちも片付けを手伝ってくれて思いの外早く終わり、渋る由香さんを葵さんが無理矢理引っ張っていき、私たちはその後を追って丘を下り始めた。
その途中で同い年くらいの4人の女の子が丘に登っているのを見かけたけど、今は店に行くことが最優先だ。
5時くらいに店に着き中に入って席に着いてから、まだいるか分からなかったけどボタンを押してみた。
そして出てきたのは、
「あ、裏央!」
裏央だった。
嬉しくてつい手を振って呼び掛けた。
「来たのか?」
素っ気なく言う裏央の質問に涼子先生が私が裏央といたいって言ったとばらし、そうなのかと聞いてくる裏央に私は寂しかったからと答えると、美奈先生に裏央の前だとキャラが変わるって言われた。
というかこれが本来の私なんだけどね?
「ま、とりあえず注文は?つってもお前ら腹減ってないだろ?」
確かに裏央のいう通り、私たちはさっきまでごはんを食べていたからお腹は空いてない。
と考えていると、
「ポテト」
と由香さんが言った。
「はいよ」
裏央は何も言わずに打ち込む。
「何も言わないの?」
「そしたらまた怒るだろ?ま、あん時は悪かったよ。じゃ、少々お待ちを~」
由香さんの質問に裏央はそう言って、謝った後にキッチンに戻っていった。
「由香ちゃん、そろそろいいんじゃない?」
裏央の姿が見えなくなった時に葵さんが由香さんにそう聞いた。
「・・・・・」
何も言わず少しの間沈黙する由香さん。
「・・・葵、書く物ある?」
その質問に葵さんは何も言わず鞄からメモ帳とシャーペンを取り出して由香さんに渡した。
「ありがと」
受け取った由香さんは表に何かを書いてから裏にも何か書いて千切ってから葵さんに渡した。
「それじゃ、お願い。あたし、先に帰るから。涼子先生、美奈先生、失礼します。真奈ちゃんも、ごはん美味しかったわ」
「ありがとうございます」
由香さんは代金を置いて店を出て行った。
そのすぐ後に裏央が来て、由香さんが帰ったのかと聞き、葵さんが答えながらさっき受け取った紙を渡した。
裏央は皿を置いてから受け取り表を見てから紙を裏返した。
どうやら書いてあったのは電話番号とメールアドレスみたいだった。
裏に書いてあったのは、裏央がちゃんと確認しているだろう。
「なあ、葵?」
「なに?」
「あいつって不器用なのか?」
「そうかも知れないわね?」
葵さんは笑いながら裏央の質問に答えた。
それから1時間くらい経って、裏央の助っ人も終わったみたいで、次に出てきた時は私服だった。
会計をしてから店を出て、葵さんと別れて私たちはアパートへの帰路についた。
その途中、裏央の携帯が鳴り、裏央が通話を始めた。
「どうした?」
「誰からかしらね?」
裏央を見ていると美奈先生が小声で聞いてきた。
「どうして私に聞くんですか?」
私も小声で聞き返す。
「あら?気にならないの?」
「なりま・・・」
言いかけて、自分が気にしていることに気付いた。
どうしてだろう?
「・・・・・・・」
考えてみたけど分からなかった。
「ま、とりあえず真奈は寂しがり屋だから、よろしくな?・・・・・・ああ、じゃあな?」
私のことを話していたみたいだけどそれよりも相手のことが気になった。
葵さんかな?
それとも、由香さん?
恵理ちゃんはアパートに居るけど・・・もしかして、私の知らない人?
結局相手だ誰かも聞けずにアパートに帰り、それぞれの部屋に戻ってから、私は軽いごはんを作ってから食べた。
それから歯を磨いてお風呂に入り、暫く携帯で昨日裏央のヘッドフォンで聴いた曲を聴いて過ごした。
10時を回って、私は特にすることも無くなり、電気を消してベッドに入ったけど、中々眠気は来てくれなかった。
楽しみだったピクニックは、微妙な気持ちのまま終わってしまった。




