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俺と私  作者: 大仏さん
18/50

4月29日 金曜日 1


今日は祝日で学校が休みだから、朝からバイトだ。

いつもと同じくらいの時間に目を覚ましたが、開店は10時だから、まだまだ余裕はある。


とりあえずテレビを点けてチャンネルを変えていくが、平日の朝なんてたいした番組はないんだよな。

暇だ・・・真奈んとこでもいくか?


「お~い、真奈・・・起きてるか~」


扉をノックしてしばらくすると中から騒がしい音が聞こえきた。

それから少しの間静かになり、すこしして扉から制服に着替えた真奈が出てきた。


「裏央!って・・・なんで私服?」


「寝惚けてるのか?今日は祝日だぞ?」


「・・・・・あ!」


どううあら忘れていたみたいだ。

開いている扉から中を覗いてみると、涼子たちも寝ていた。

布団は足りなかったのか、同じ布団で2人くらいが一緒に寝ており、妹に葵とゆかもいる。


「とりあえず着替えろ。今日は朝からバイトだぞ?」


「うん、分かった。裏央は始まるまで何するの?」


「適当に辺りをぶらつくよ・・・おまえも来るか?」


「うん!」


「なら、外で待ってるよ。急がなくていいからな?ちゃんとあいつらにもどうにかして伝えておけ」


それだけ言って俺は一度部屋に戻り、携帯と財布をポケットに入れて、鍵を閉めてアパート入り口のところで待っていた。


祝日は商店街が盛り上がるが、店はどうだろうか・・・まだ本当の忙しさを知らない俺としてはそろそろ知っておいた方がいいと思っているんだが、客が来ないことにはな・・・。


どこを回ろうかと考えながら空を見上げていると真奈が出てきた。


皆には手紙をおいて来たようなので、それをあいつらがちゃんと見つければ大丈夫だろう。


「行くか」


「うん」


途中、コンビニで朝飯を買ったりして店に向かったが、まだ8時ちょい前。

こんな時間に開いている店も少ないから、やることがない。


もっと家にいても良かったが、やることがないから結局同じだしな・・・。


「公園でも行くか?」


「いいね。もう随分行ってないし・・・ブランコでもする?」


「お前がいいならな?」


「なら決まり」


俺たちは公園に向かった。




公園には朝のジョギングをしている奴や犬の散歩をしている奴くらいしか人がいない。


もちろんブランコも誰も乗っていない。


「ある意味貸し切りだな」


「そうだね・・・裏央って昔はこんなところで遊んだりしたの?」


「殆どしていなかったかもな・・・やりたいとも思ってなかったかも知れない。お前は?」


「お姉ちゃんが家にいる時はよく一緒に遊んでた。シーソーとか砂場で穴を掘ったりとかして。

楽しかったな・・・」


真奈は昔を思い出すように目を閉じた。








砂場で遊んだ時は決まって服が汚れて、お母さんにはもう少し気をつけなさいと言われた。

一度も女の子らしく、とかは言われなかったから、今思い返してみればそれは結構良いことだったのかも知れない。


こっちに来る前の学校で、子どもころに何をして遊んだかという話なった時、殆どの子が女のこらしい遊びを挙げていたけど、私は木登りとかもよくしていた。

それを言うと、決まってみんなは可笑しいと言ったけれど、私はそうは思わなかった。

お父さんもお母さんも、子どもだからこそできる遊びもあるって言ってたし、それは真実だなと思っていたから、私はやりたいことはすぐにやった。


実際高校生になった今は、木登りは少し恥ずかしいと思っている自分がいるし・・・。


「久しぶりに登ってみようかな?」


この辺に高い木はあるのかな?


「どこにだ?」


「・・・昔はよく木登りとかもしてたから、どこかに高い木はないかなと思って」


「それなら、向こうの丘に街一番の木がある」


裏央がそう言って指さしたのは学校の裏の方。


見てみると確かに一本だけ突き出ている木があった。


「さすがにあれは高いかな・・・」


遠くからこんなにハッキリ見えるということは近くに行けばもっと大きいと感じるだろう。


「そうか?登ってみれば体が思い出して結構上までいけるかも知れないぞ?」


「・・・そうかな?」


「明日行ってみるか?バイトもないし、涼子たちも入れてピクニックってのも良いと思うぞ?」


ピクニック・・・。


「なんか、響きがいいかも。行こうか?お弁当も作って」


「ああ。帰ったら涼子たちにも聞いてみるとしよう」


「うん!」


なんだか今から楽しみになってきた。








それからブランコに乗って、俺は足ですこしだけ前後していて、真奈ははしゃいでいるのか結構激しかった。

一度止まってから今度は立ちこぎをして、反動を付けて前方に跳んだりと、本当に子どもみたいに遊んでいた。


1時間ほど経つと、近くの子どもも来て少しずつ公園に家族が来るようになってきた。


「そろそろ行くか」


「でも、まだ時間あるね?」


「少し早めに行くくらいならいいだろ。他にも来ている奴はいるだろうし、適当に駄弁ってようぜ?」


「・・・咲さん、来てるのかな?」


「どうだろうな?行けば分かるさ」


「うん」


俺たちは店に向かった。


まだ店が開くまで1時間弱。

と言っても本当にすることもないから、遅れないようにするためにも行っておいて損はないだろう。

もし仕事があったら、さっさと片付ければ良いだけだしな。


途中の店などを横目に見ながら、真奈があれが可愛いかったとか、あれ欲しいな、とか言っていた。

こういう所は素直に可愛いと思う。


いつまでも無邪気な心を持ち続けると言うのは簡単なようで難しいことだからな。


当たり前のことが当たり前にできるのと同じ様に・・・。


店に着いて裏口に行くと、ちょうどチーフが来ていた。


声をかけて一緒に中に入り、特に仕事もないということなので適当にお喋りをすることになり、明日のことを話すと、なぜかチーフも参加することになった。


まあ、いいが。


真奈たちが楽しめるならそれでいいしな。



それから3~40分が経過し、俺たちは制服に着替えた。


キッチンに出て、店が開くのを待つ。

店長や他の店員も来だしてだいぶ賑やかになってきた時、店が開いた。



「さて、今週はこれで最後だしな・・・やるとするか」


「おー!」



真奈が元気にかけ声を上げた。



ま、適当に頑張るとするか。



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