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【標本No.7】終わらない砂時計

作者: 湯琉里羅
掲載日:2026/05/13


――砂は落ち続ける。




時間は、不可逆な流れではない。


それは、あらゆる場所に堆積し、結晶化する「物質」だ。


私は一生をかけて、世界中の「時間の残骸」を掻き集めた。


サハラの熱風が数千年かけて磨き上げた石英の粒。


ノルウェーの氷河に抱かれ、凍結されていた古代の岩片。


そして、かつて愛や誓いが交わされた、今は亡き教会の崩れた大理石の粉。


それらを丹念に洗浄し、選別し、私は一つの巨大なガラスの器へと注ぎ込む。


これはただの砂時計ではない。


数億年の歴史を物理的な重さへと凝縮した、地球という星の総体なのだ。



私は思う。


化石、思い出、砂時計…これらには時間の凝縮というロマンがある。


その時代に生きた人の、物の、軌跡の残像物。


いわばそれは奇跡の輝石。



ふと、腰が痛む。もう歳だ。限界も近い。


だから私は集めた砂を器に移す作業を始めた。



ある粒は光を増幅させ、ある粒は濁った黒を演出する。


個々の混ざりあった社会のように、流紋の渦を構成する。


ひとつひとつの音が、質が、私の耳を揺らす。



砂はサラサラと流れ、石はその過程に音を出す。


尖った木片はかつての言葉のようだ。


鉄がカランと落ちる。


紙はヒラヒラと舞い、風を浮遊する。



ようやく砂時計に蓋をした時、私の手は震えていた。


中央にそびえ立つその器は、静かな音を鳴らし続ける。


周辺には、巨大な砂時計を祀るように化石や額縁、岩の数々が並べられている。



最後に、私は遺言を書くことにした。



『私は生涯を時間に捧げた。この砂時計は私の全てだ。何年かかっても構わない。その砂が落ちきった瞬間を、私とともに見届けてはくれないか。』



視界が暗転する。


強く頭を打ち、私の意識は闇の彼方に放り投げられた。




――砂時計は静かな音を鳴らし続ける。その重荷が落ち切るまで。




「これがあの有名な永遠の砂時計だって!」


「すごーい、推測だと、あと何万年もかかるらしいよ。」


「作った人、肖像画しか残ってないけど、名前なんて言うのかな?」



――彼の死から何年経っただろうか。


時間の博物館と名付けられたこの場所で、砂時計はなおも静かな音を鳴らし続けていた。


何万の人々が訪れ、その大きさに目を見張り、多くの者が四角の画面を向けた。



いつか彼が望んだように、砂時計の終わりを見る者は現れるのだろうか?


それは、誰にもわからない。


ただひとつだけ確かなのは、いまも彼らは一生懸命に生きているということだ。



最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
残る余韻が素晴らしかったです。 素敵な作品をありがとうございました!
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