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第2章 ガルス辺境伯家の人々 (2)

館の者達に聞いた情報では、ガルス辺境伯領内では時折、マーケットが行われるそうだ。異国の商人も訪れ、賑やかなそうだ。

シーズー大陸は人間が多いが、トーイ大陸という所は獣人が多く、シーズー大陸南部はトーイ大陸から渡ってきた獣人達の国もあり、マーケットには獣人も訪れるらしい。


ルビー王国には獣人はおらず、魔塔等の限られた場所で在住を許可されたエルフ、ドワーフ等がいるだけだった。


(獣人見てみたい。もふもふに癒されたい)

カイトは好奇心が溜まっていった。


次の週末にマーケットが開かれると聞いて、カイトは辺境伯シモンに見物に行っていいか尋ね、外出許可をもらったのだった。

メイドのアンに加えて、護衛を兼ねた近侍を1人付けてもらえる事になった。マグネルという名の赤毛の青年だった。


* * *


週末。

カイトはメイドのアンと護衛のマグネルを伴い、街の見物に出かけていた。

王都では辺境伯はあまり豊かではないと聞いていたのだが、街中は賑やかな人々と物が行き交っていた。

治安も悪くはなく、のんびりと見物ができた。

王族だった頃は買い物などした事はなかったが、一般庶民の生活も知っておいた方がいいのではと、教育を兼ねて王国通貨を多少もらったのだった。


街中には食べ物屋さんもあり、屋台のような形式だったり、テイクアウトして食べ歩いている者もいた。


調味料スパイス香辛料はトーイ大陸やシーズー大陸南部が主で、ルビー王国でも高値で取り引きされ、王侯貴族や富裕な商人以外では使用される事は少なかった。


屋台の料理も塩一択のように見えたので、わざわざお金を出して買う気になれなかったが、アンが焼き菓子を買って分けてくれた。熱々だったので美味しかった。


ニャオン。


ふと猫の鳴き声が聞こえた気がして、その方向を見ると、三毛猫がおり、チラチラとこちらを見ていた。

屋敷に時々迷い込んでくる例の三毛猫のようだった。

カイトを凝視して、何処かへ行くようだった。時々振り返っては付いてこいというようにカイトを見る。


(何だろ?)

猫の仕草が気になり、カイトは付いていった。

その脇にアンとマグネルも続いた。


* * *


猫に連れられ、街を歩いていると、マーケットの裏路地にいつの間にかいた。

裏路地の中に古書店があった。

猫はその店舗にするりと入っていった。


異国の書も取り扱っているらしく、興をそそられカイトは店内を見てみることにした。

アンとマグネルも付き添いで古書店に入ったのだった。


店の主人はフードを被り、人相はよく分からないが、獣人ではなく人間みたいだった。

猫がツンツンと一角を差し示して、本に触れていた。

紺色の和綴じの本だった。

(和綴じ?)

知らない単語が脳裏に浮かび、カイトは戸惑ったのだった。


この大陸では見かけない変わった作りの本が気になり、カイトはその本を手に取ってみた。

中をざっと見てみると、ルビー王国の文字とは全く違う文字だったが、見覚えがある?ようで、何故か書いてある事が理解できるようだった。


フードを被った店主に声をかけ、この本の由縁を聞いてみた。

店主の声は女性らしかった。

持ち込まれたもので、遥か昔にいたサマナーという異能使いが使っていた書物で、異世界から召喚された遺物らしい。

「その本が読めれば使いこなせるらしいわよ。サマナーは召喚術ね」

店主の何処か面白がっているらしい様子とその説明に、カイトは本を買ってみることにした。初めての買い物もしてみたかったので。


銅貨5枚が1日の食費相当らしいが、店主に値段を聞くと、本はちょうどそれと同等だった。


お金を支払い、本を手にカイトは店を出た。

その姿を店主はじっーと見つめていたのだった。


カイトとアン、マグネルが店を立ち去ると、古書店は忽然と姿を消したのだった。

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