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第1章 無能者はお呼びじゃないそうなのでおさらばしますね(2)

ガルス辺境領はルビー王国の辺境にあり、魔獣がよく出没する死の森に隣接していた。魔獣の死骸から出る魔石が主な収入源であり、辺境伯は公爵と同等な軍事の要であった。


おそらくは王位継承には関わらない末っ子の王子を、一人息子を失った辺境伯の後継として養子に出す事は、家格の釣り合いが取れており、高位貴族の必須と言われる王立アカデミーに落ちこぼれで入学できなかった末王子の将来を憂いた父王の温情配慮と表面的には美談になっていた。


ガルス辺境伯領は、魔獣の跋扈する死の森や辺境に位置しているので他国の侵略を防御する為に、雷撃の魔法陣結界が設置された城塞都市であった。


城塞都市の中心部には領主の城があった。

外門から入り、近侍のジョンと数人の護衛が辺境伯邸前までは馬車で送ってくれたが、彼らはそのまま王都に帰っていった。


辺境伯邸の鉄門の前に1人佇み、

ここから先は1人で頑張らないといけない。

新しく両親になる人達はどんな人達なのか。

と気持ちを新たにしていた。


不安を感じていたカイトだったが、実はさっぱりしてもいた。

優しかったのは乳母位で死んでるし。

近侍や侍女達もギャラ貰ってるからお前のような小僧に仕えてやってるんだぜ義理仕事感が満載だったので、特に別れは寂しくもない。


両親とはそもそも親しい仲でもなかったし。

長兄はゴリゴリ成せばなる努力大好きでサボリを許さず、自分だけ頑張ってればいいのに他人にも押し付けてくる迷惑な兄だったし。

他の兄も闇属性のヤンデレストーカーちっくで正直関わりたくなかったし。


(俺は静かにヒキニートしたいんだよ)


ん?

ヤンデレ

ストーカー

ヒキニート

って何だ?


知らない言葉が突然、頭の中に浮んできて戸惑ってしまった。


(きっと新しい土地に来て疲れてるんだな)

と思うことにしたのだった。


* * *



カイトは辺境伯邸の鉄門の前で、

(辺境伯ってどんな人だろう…

父上みたいに恐くて冷淡な人だったらどうしよう…

きっと無能王子と言われて、辺境伯の人達にも厄介者扱いされるのでは…

というか、外門の門番は邸内に連絡してくれてないんかな…連絡したけどシカトとか…ザ放置プレイ。やはり招かれざる客なんか俺は…)



頭の中で不安が巡り、なかなか扉に付けられている呼び鈴を押せないでいた。


「あの〜、辺境伯邸に何か御用ですか?」


箒で敷地内の掃き掃除をしていたメイド服の少女が、ためらいがちに門越しに聞いてきた。

栗色の髪に丸顔の可愛いらしい少女だった。


「今日付けで辺境伯家に世話になるカイトという者です。よろしくお願いします」

王家を追放された立場を知っているカイトは物腰低く、そう名乗ったのだった。


「お待ち申し上げておりました。カイト様。今日着くとは聞いておらず失礼いたしました」

栗色の髪のメイドは一礼して、優しくそう告げたのだった。


(王宮の高慢ちきな侍女達とは違うぜ)

カイトはほんわかした気分になった。


「玄関までご案内しますね」

メイドの少女はそう言うと、門を開け、カイトを敷地内に招き入れ、本館の方へ案内を始めたのだった。


* * *


敷地内にある噴水の向こうは開けた土地が広がっていた。


カイトがふと視線を巡らすと、端の方には畑があるらしく、幅広い日光避けの帽子を被った2人組の男女が農作業をしていた。


カイトを見かけ、農作業をしていた男女が仕事を中断し、ぶんぶん手を振りながら近寄ってきた。


「旦那様! 奥様! こちらはカイト様です」

メイドの少女は、来訪者を紹介した。


(旦那様、奥様…この人達が辺境伯夫婦?)

農作業をして貴族らしくない振る舞いに、カイトは面食らったのだった。


「はじめまして。カイト様」

辺境伯夫婦は一礼し、カイトを迎え入れたのだった。


辺境伯はくすんだ金髪に日焼けした肌が印象的な、引き締まった体型の中年男で、その夫人は茶髪の雰囲気が柔らかい女性であった。


(軍閥の要との評伝から、剣呑ゴリゴリの化け物が出てくるかとビビってたからホッとしたん)


敷地でいきなり新しい養父母に出くわしたカイトだったが、第一印象でそう思ったのだった。

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