ご
その日、エクリプス領へ到着した人物は、満面の笑みで迎えに出てきていた女伯と対面していた。
「初めましてエクリプス女伯爵! お会いできて光栄です! この度は我がカンバーランド公爵家の相談に乗ってくださり当主カンバーランド公爵を筆頭に我が家門一同深く感謝いたします」
そういって深々と礼を取る。
「いや、お気遣いなきよう。 精霊による影響は自然と同じで防ぎようがないもでのですから困ったときは助け合わねばならぬと国の法にも書かれておりますゆえ」
女伯は、そう言って頭をあげてもらう。
「あ、そうでした! 僕はカンバーランド公爵家が三男ウィリアムと申します、僕が契約者なのでこれからしばらくの間お世話になりますね」
「なるほど……契約者とは公爵子息の事でしたか、詳しいお話を伺いたいのでどうぞ屋敷の中へ」
そう言いながら女伯は出迎えた客人と共に屋敷へとはいっていった。
▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽
「して、公爵子息。 今回カンバーランド領で水馬が大繁殖してしまったとか?」
応接室にて、お茶を用意させた後に使用人を下がらせて一息ついた後で女伯は問いかけた。
「あぁ、どうか僕の事はウィリアムと呼んでください。嫡男でもありませんし、堅苦しい呼び方をされるのはニガテでして……それでですね、実は大繁殖した原因は僕にあるのです……」
「ほう……といいますと?」
「これは僕が生まれて間もなくの話なのですが、当時僕は乳母に世話をされつつベビーベッドに寝かされていたそうなんです、ある日乳母がほんの少し目を離した隙に僕のそばに水馬が出現していたそうなんです、このエクリプス領地では珍しくはない光景なのでしょうが、お伽噺にしか聞いたこともないような存在をいきなり目にして大変驚いた乳母は悲鳴を上げてしまったそうなんですよ」
そう言いながらウィリアムは、肩をすくめる。
「あぁ……確かに他の地では珍しいでしょう……うちではよくある事なんで感覚が麻痺してしまいがちなのですがな……そういえばこの前も、朝起きたら寝台の足元でユニコーンが寝ておりましてなぁ……『邪魔だから帰れ!』と追い出したのですが、何を気に入ったのかちょくちょく訪ねてくるようになりまして……仕事中も部屋でくつろぎ始めるので、うちの家宰が追い出そうとしてユニコーンとケンカを始めるものですからウルサ……執務に支障がでて少々困りましてなぁ」
いやはや……と腕を組んで女伯は目をつぶる。
その話を聞いてウィリアムは
「ユニコーン……あの伝説の? ……確か乙女の許へ駆けてくるというあの……」
そういいながらちょっと頬を染めるウィリアム。
「えぇ、それです。 まぁわたくしが乙女でなくなれば来なくなるでしょうし構わずともよいと言っておるのですが、うちの使用人たちは過保護なもので」
ふふ、と年相応の笑顔で嬉しそうに使用人自慢する女伯。
「あぁ失礼……つい話の腰を折ってしまった、続きをお聞かせ願いたい」
その言葉に、笑顔が可愛いな……などと思考が脱線していたウィリアムだったが
「あっ、はいそれでですね。 乳母の悲鳴を聞きつけた護衛が部屋へ飛び込んで来たものですから、水馬が驚いて僕ごと消えてしまったそうなんです」
「えっ? 水馬にさらわれたんですか!」
女伯は驚いて目を見開いた。
「そうなんです、水馬にとっては僕も危険にさらされると思っての行動だったようなんですが、当時我が家はそのせいで大変な騒ぎになってしまいまして……ですが、水馬の生態なんて素人には到底予測しようが無いため当時のエクリプス伯爵……つまり女伯のお父上に相談に乗っていただいたそうなんです」
「父上に……そうだったのですか、それで当時父上は領地を離れてカンバーランド領へ向かったというわけですか」
「はい、そのおかげで無事に僕を見つけてもらう事が出来たそうなんですが、少々問題が発生してまして……水馬は本来水中で生活をしているのですが、人間の赤子が水中にいたら呼吸も出来ませんし体温を奪われて死んでしまいますから保護するために『魂の契約』を結んだそうなんです」
「あぁ、それで『契約者』なのですか」
「はい、その契約というのが一種の『加護』を授かるようなものでして、おかげで今でも僕は水中で呼吸も出来ますし低体温になる心配もありませんので、生活しようと思ったら出来ます」
ちょっと自慢げに言うウィリアム。
「ほう! それはすごい、でも代償があったのでしょう? あぁいった存在との契約というものはそういうものですからな」
笑顔から一転して真剣な顔で聞いてくる女伯に
「確かに代償はありました。 ですが僕が赤子であったために複雑な契約が出来なかったのが幸いして、一定の魔力を水馬に提供するという契約になったそうなんです」
と真面目な表情で答えるウィリアム。
「ふむ、赤子を生かすための契約ならそこまで多くは取られないでしょうから良かった……のでしょうなぁ」
「是非はともかく、お陰でエクリプス伯爵が探し当ててくださるまで僕は生き延びました、水馬もエクリプス伯爵のことは何者か理解していたようで、伯爵の説得に応じて大人しく僕を引き渡してくれたそうなんです。 だからエクリプス伯爵は僕の恩人なんですよ」
そう言いながらウィリアムは微笑むのであった。
更新不安定で申し訳ありません! 次回水曜日予定でお願いします……。あと3,4話くらいで終わる予定なので今週中には完結できたらいいな……。




